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第66話 金か暴力か

 モンスターを薙ぎ払いながら、魔王が守護する城下町へとたどり着いた【桜花】一行。全体的に黒や灰色といった暗い色合いで塗られた建物たちは、見た目が地上とほぼ同じでもどこか冷たく恐ろし気にみえてくる。


「ここが魔王城下町……思ったより近かったね」


「モンスターとの戦闘を抜いたら、歩いて30分ってところちゃうか」


「戦闘もあるから1時間くらいはかかったけどね」


「毎回、1時間かけて街に行くのも面倒だから先にテレポーター登録しましょう」


 テレポーターのあるギルドへと向かっていき、受付にいるサキュバスのお姉さんに話しかけると両手を大きく広げるしぐさをする。


「こちら、テレポーターの登録に10万Gの支払いが必要になります」


「じゅ、10万!?」


 今まで無料だった登録に10万Gの請求がくるとは思わなかった一行。今の所持金を見ると、決して払えない額ではないが、おいそれとは渡すことができない額だ。


「払わなかったら?」


「当然使用することはできません。ですが、私を屈服させるような力を持つのであれば、登録を認めても構いません。おすすめはしませんが」


 →10万G支払う

 押し通す


 そして【桜花】メンバー全員に選択肢が表示される。そこにはの2択が表示されていた。周りにいるプレイヤーをよく観察すると、この選択をどうするか話し合っていたようだ。お金を払うプレイヤーもいるようだが、大半は新MAPに高揚感からか戦うことを選び、一時的にその場から消えている。


「私たちはどうする? 今の善悪度から考えたら、ここで払わないを選んでも大丈夫だと思うけど」


「お金はまた稼げばいいから、ここは払おうよ」


「せやな。わざわざ『おすすめしない』と言っとるから、戦うことが罠かもしれん。慣れないMAPなら下手撃つよりも安全策が一番や」


「ぼうりょくはダメです」


「う~ん……戦いたかったけど、みんながお金を払うなら私も払うよ」


 ユーリは渋々といった様子だが、【桜花】のメンバー全員が10万Gを支払い、テレポーターの登録をしていく。すると、受付のサキュバスが他のプレイヤーに聞こえないような小声でこっそりと話しかける。


「ここは金と暴力で支配されていた世界よ。金があれば信用されるけど、力をふるいすぎるとやり返される。そうならないように気を付けてね」


(つまり、金策が重要ってことかな?)


 そう思いながら、今度は掲示板のクエストを見ようと思うとここでも1万Gの支払いが必要になってくる。なんでもかんでもお金が必要になるのであれば、戦闘して代金を踏み倒そうとするプレイヤーが増えていくのも当然の帰結だ。


「せっかくだから、1個受けてからマーサさんのところに行こうかな」


「じゃあ、簡単そうなのが良いね」


「武器屋の店主さんからの依頼、巨人の棍棒集めはどうでしょう? 必要個数は多いですが、ここに来るまでに戦った相手ですし、私たちなら苦戦することはないはずです」


「ついでに近くにいたモンスターの討伐クエストも受注ね」


「よ~し、みんなで出発!」


 ギルドから出たアイリたちは再びスタート地点付近へと戻り、巨人を探しに行く。


 あの巨体を見過ごすはずもなく、簡単に見つけることができたアイリたちのパーティーは盾職のリュウがいないため、まず回避に自信があるユーリが先に仕掛けてヘイトを取る作戦だ。


「その前にユーリお姉ちゃんに祝詞を使います。これで能力値がアップします」


「ありがとう。さっそく分身の術からの……風遁・乱舞の太刀!」


 2人に増えたユーリが空高く跳躍し、目にも止まらない速さで巨人を切りつけて流血状態を付与させていく。敏捷特化故の攻撃力の低さをどうするかを考えた結果、アイリと同じく状態異常で補うことにしたのだ。

 その速さに追いつけない巨人はぶんぶんと棍棒を振り回すも、当たる気配は全くない。


「こっちはエアーダッシュやエアージャンプでいくらでも方向転換が可能。そして、それらがCT中でも飛翔突!」


 真っすぐ突く技を攻撃を回避するのに使いながら、巨人へのダメージを重ねていく。足元ではLIZが懸命にたたき、アイリがヘイトを奪わないように弱い攻撃であるポイズンショットやカースで状態異常攻撃を仕掛けている。やがてそれらのスタックがたまっていき、タフなはずの巨人はあっという間に倒されるのであった。


「この調子で倒していくよ」


「うん。【遠視】で近くにいないか探してみるね」


「私も天啓で探してみます。戦闘で大変なユーリお姉ちゃんは休んでください」


「鷹の目で探そうと思ったけど……」


「なんでもかんでも一人で背負わない。社会に出たら痛感することになるわよ」


「わかりました。探索は二人に任せるね」


 ユーリは次の戦いに向けて休息をとり、万全の状態で挑もうとする。そして、予想よりも早く集まった棍棒を見て、依頼書に書かれているようにギルドではなく依頼人のところへと向かった。


「おお、助かるよ。次の新作にはこいつが必要なんだ」


 そういって、報酬も払うことなく店の中へと入ろうとした店主をユーリが呼び止める。


「あの報酬は?」


「ん? なんで人間に支払わなければならないんだ?」


 →見逃す

 制裁する


 そして再び出てくる選択肢。ユーリの心情的には制裁を選びたいところだ。


「これはギルティーでしょ!」


「なにか事情があるかもしれないし……」


「そんなのクエスト内容に書いてないじゃん!」


「まずはギルドの人に伝えたらどうかしら?」


「そうです。おまわりさんに相談です」


「うんうん」


「まあ、みんながそういうなら……」


 納得いかないながらも、ここは見逃してギルドに未払い報酬について話していく。すると、サキュバスのお姉さんが部屋の奥に行き、屈強な悪魔を店主のもとへと向かわせる。それからしばらくして、屈強な悪魔から報酬が支払わされ、無事にクエストが終了する。


 このヘンテコなクエストについてユーリたちが掲示板で何か書かれていないかと検索してみると、様々な書き込みが書かれていた。


「まとめると、魔界でのクエストは暴力を振るわないでクリアするとノーマルな報酬。暴力をふるってクエストをクリアすると報酬がアップする代わりに善悪度が大幅に低下。地上だと何も売ってくれなくなったプレイヤーもいるみたい」


「ワイらはアイリの称号効果で善悪度が上がりやすいけど、0から上げる羽目になったらつらいで」


「となると、ウチらみたいに欲を出さない方がええってわけやな」


「暴力反対。覚えました」


「私はクラン抜けてくるから、これで失礼します」


「うん。今度は一緒のパーティーで遊ぼう」


 Aoiがクランホームに戻ったこともあり、一度解散する流れとなった。そして、アイリははじまりの街に戻り、マーサの家に行くと多くのプレイヤーが死屍累々と言った様子で倒れていたのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] おや、おマヌケさん達が居ますねぇ(フリーザ様ボイス)
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