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第5話 装備品とソロプレイヤー

 夕食を終え、パジャマ姿の愛理は再びゲームの世界へとログインする。


「現実だと夜なのにゲームだと朝なんだね。そうしないと、働いている人が不利になっちゃうからかな」


 設定で現実世界とスタート時点の昼夜を合わせることもできるが、アイリは気づいていないようだ。ギルドでパンとスープだけの簡単な朝食を済ませた後、受付のミューイに話しかける。


「おはようございます。オカシラさんがどこにいるか知っていますか」


「さっき、クエストに行ったばかりよ。呼び出そうか?」


「手が空いたらって約束なので大丈夫です」


「遠慮しなくてもいいのに」


「1人でも受けれそうなクエストってありますか」


「アイリちゃんのレベルなら、平原のクエストならどれでも大丈夫だけど……」


「だけど?」


「まずは装備を整えてから。地図を渡すから、この赤い点で示している店に行ってみて。紹介状も渡しておくわ」


「ありがとうございます」


 ミューイから地図を受け取ったアイリはさっそく紹介された店へと繰り出していく。

 人が行き交う往来の中、紹介された店の前にたどり着く。そこには剣と盾の絵が描かれており、装備品が売られていることは一目瞭然だ。


「お邪魔します」


「いらっしゃい。ここは武器と防具の売買ができる店だよ」


 人当たりが良さそうな小太りなおじさんが客を出迎える。


「ギルドの紹介で来ました。装備品を買いたいんですけど」


「ふむふむ、紹介状によると魔法使いだね。だったら、これだ」


 初心の杖 500G

 初心の短剣 500G

 初心のロープ 500G

 初心の三角帽子 500G

 初心の靴 500G

 耐毒(小)のネックレス 3000G

 魔力(小)の指輪 5000G


「初心が500G、普通が1000G、旅人が2000G、アクセサリーはそれらよりも高いと」


「魔法使いは杖と護身用の短剣しか装備できない。サブ武器の補正値は半分になって、斧や盾を買っても装備できないから注意だ。あとギルドの紹介だから、耐毒のアクセサリーは少し値引きしておいたよ」


 値引きしなくても大丈夫なんだけどなあと思いながら、旅人シリーズとアクセサリーを1個ずつ購入し、装備していく。


 アイリ Lv10

 種族:エルフ

 職業:魔法使い

 HP25/25

 MP68/68(+10)

 攻撃:3(+4)

 防御:3(+15)

 知力:9(+15)

 敏捷:5(+10)

 運:5

 残りスキルポイント:14


 装備品

 メイン武器:旅人の杖(知力+10)

 サブ武器:旅人の短剣(攻撃+8)

 頭:旅人の三角帽子(防御+5、知力+5)

 服:旅人のロープ(防御+10)

 脚:旅人の靴(敏捷+10)

 首:耐毒のネックレス

 右手:魔力の指輪(最大MP+10)

 左手:


 所持スキル

【状態異常耐性(中)】【状態異常成功確率アップ(小)】【闇魔法Lv1】【外道】【ギャンブラー】【富豪】【精神攻撃Lv1】【時間耐性(小)】【精神耐性(中)】【影操作】【急成長Lv1】(【毒耐性(小)】)


 所持魔法

【シャドーミラージュLv1】消費MP16

【シャドーアタックLv1】消費MP2

【カースLv1】消費MP4

【ポイズンショットLv1】消費MP4

【ポイズンミスト】消費MP12

【メンタルブレイク】消費MP8


「魔力の指輪はMPアップなんだ。もう1つ買います」


「あいよ」


 1回の戦闘にかかる消費MPが激しいアイリにとってMPが増えるので必須アイテムだ。当然のごとく、左手にも同じ指輪をつける。


「ところで、ポーションって何処で売っていますか」


「雑貨店にあるよ。地図だとこの場所だ」


「ありがとうございます」


 武器屋の店主にお礼を行って雑貨店へと向かう。中に入ると、今度はけだるげなお姉さんが店主らしい。 


「ここはアイテムを売っている店だよ。ウチでは取り扱ってないけど、アクセサリーも販売している店もあるよ」


「なるほど。売っているアイテムはポーション50Gに、毒消し100G……怪しい種50G?」


「何の植物かわからない種さ。その分安いよ。買うかい?」


「急成長スキルもあるし、育った植物のことはオカシラさんかマーサさんに聞こう。買います、ポーションと種100個」


「金あるんだろうね…」


 お姉さんが怪しむも、一括で払ったアイリを見て驚きを隠せずに居た。


 スキル:【爆買い】を習得しました


「一括で大量購入した場合に割引される……お金はいくらあっても困らないし、安くなることは良いことだよね」


 雑貨店を後にしたアイリはギルドに戻ってクエストを受注。今日は西の平原でスライム、一角兎、ウルフの3頭の討伐依頼だ。早速向かってみると、森のときとは打って変わってそこら中にプレイヤーが魔物たちを取り囲んで倒している。


「人がいっぱいいるなぁ。あまり迷惑かけないように端っこで戦おうかな」


 てくてくと歩いていくと、ウルフの群れに襲われてぼろぼろになりながら戦っている青い肌の男の子がいた。頭から生えているツノを除けば、背丈からして自分と同年代くらいだろうか。


「はあ……はあ……ポーションないのに……」


「手伝いましょうか?」


「う、うん。助かる……そうだ、パーティー登録しとかんと!」


 リュウのパーティーに誘われました。参加しますか?


「もちろん!リュウくん、後ろに下がって」


(後列の魔法使い職なのに前に出るの?)


 リュウがアイリの後ろに隠れながら疑問に思う。だが、傷ついた自分では前列に不安があると言う判断なのかもしれない。実際、HPは1/3近くまで減っており、タンクになるか怪しい。それなら、HP全快の魔法職の方が良いのかもしれないと思っていたが、それはすぐに間違いだと気づく。


「付近にプレイヤーもいないし、一気に行くよ。ポイズンミスト!」


 アイリから吐き出される毒の霧に包み込まれたウルフは苦しみ、その場で動きを止めてしまう。


「シャドーミラージュ!シャドーアタック!ポイズンショット!カース!」


 ウルフの後ろから音もなく現れた分身体から放たれた毒と呪いの球。目の前から撃たれたのであれば躱せていたかもしれない攻撃が、不意打ちかつ毒の周った身体では避けることができずにまともに被弾し、一瞬にしてその命を散らす。


「消費MPが激しいの難点だよね。MP半減みたいなスキルがあればいいんだけど」


「分身を使うエルフ……ひょっとしてクノイチエルフさんか!?」


「えっ~と、なにそれ? 別人じゃないかな」


「分身のスキル、クノイチエルフさんしか見つけていないんや。掲示板でもちょっとした話題やで」


 目をキラキラと輝かせてくる魔族の少年。それはまるであこがれのアイドルを見つけた時のような顔だ。アイリはそんな彼の純粋でまっすぐな気持ちを受け止めきれずに、話題を変えてそらそうとした。


「でも、リュウくん一人でやっていたの? それにポーションが無いなら買えばいいのに」


「ワイ、スキルガチャに失敗してNPCからシカトされるんや。おかげでクエストは1個ずつしか受注できへんし、ポーションの価格倍やし……心がおられる」


「じゃあ、一緒にクエストやりましょう。ポーションはたっぷりあるし、私、あとスライムと兎の討伐依頼が残っているんで」


「ワイが受注したのスライムやから、ちょうどええな。でもええんか? ワイみたいな初心者と一緒にパテ組んで」


「私も初心者なんで」


「……どこが?」


 少なくとも、この平原で一番強いウルフの群れを一瞬で葬った彼女が初心者に見えなかった。そして、平原を歩き回っているとスライムの群れとばったりと遭遇する。


「よし、ワイが敵を惹きつけるから、その隙に」


「わかりました。シャドーミラージュ!シャドーアタック!」


 スライムが殴りかかってくるリュウに体当たりしていると背後から思いっきり杖で殴られる。その衝撃でよろけたスライムを彼が見逃すわけがない。


「パワーナックル!」


 渾身の力を入れた拳で殴ると、スライムたちはドロップ品をのこして跡形もなく消える。そして、リュウのレベルが上がり、それをみた彼はうれし泣きする。


「ようやく1上がった……長かった。長かった。ワイ、何度このゲーム放り出そうかと……」


「そ、そんなに……」


「NPCと話さなくても大丈夫やろ。と思ったら、この仕打ち。一緒にやる友達もいなかったし、本当に詰んだかと思っていたんや。せや、フレンドになってくれへんやろうか」


 リュウとフレンドになりますか?


「もちろん。よろしくね、リュウくん」


 アイリが初フレンドを結んだ後、ぴょんぴょん跳ねる兎にもスライムと同じことをして依頼を達成した。リュウがその成果を報告したとき、ミューイの目の色が変わる。


「へえ~、アイリちゃんと一緒にクエストをこなしたのね。アイリちゃん、どうだった?」


「リュウくんが魔物を引きつけてくれたおかげでこっちに魔物が来なかったのですごく頼もしかったです」


「わかったわ。ごめんね、リュウくん。人魔大戦の影響で魔族を信用しても良いのかという問題があったのよ。でも、アイリちゃんがそういうなら、普通の冒険者と同じ待遇にします。この紹介状を見せれば、店主も信用できる人って分かるわ」


「な、なんや、この手平返し!手首がドリルでできとるんちゃうか!!」


「多分、私の称号の効果で善悪度がプラスになった影響かな」


「しょ、称号? そんな効果あるんか。なあ、このこと掲示板で書いてもええか。ワイ以外にもNPCに嫌われて困っとるやつはおると思うんよ。善悪度を上げたらマシになるっつのはそいつらにとって希望になるかもしれへん。アイリの名前は一切出さんし、PVPもあるさかい、バレている分身以外の戦術は漏らさん」


「別にいいですよ。もし、私のところに来られてもリュウくんみたいな人なら大歓迎です」


 何の臆面もなく言うアイリに対し、ちょっと恥ずかしそうに赤面するリュウ。そんなとき、スキル習得のアナウンスがリュウのもとに流れる。


「なになに、スキル:【信奉者】を手に入れました。効果は……信奉している人と同じクラン、パーティーに属しているとき、ステータス微アップ」


「信奉している人って私?」


「せやろな。クランってのはまだ実装されていないみたいやけど、そのときは一緒になってもええか」


「もちろんです」


 少し談笑したのち、二人は別れて各々が住む場所にログアウトするのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] この時のスキルが、まさかあんなに巨大なクラン設立に繋がるとは……この時はまだ、誰も知らなかった……
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