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第51話 エルフの村へ

 魔法都市アレキサンド周辺の森の中を探索していくアイリたち。このあたりに出てくる敵キャラはレベル25程度、レベル45のアイリなら難なく倒せる敵だが、レベルがまだ20台のChrisにとっては強敵だ。そして、今、巨大昆虫たちの群れに襲われている。


「シャドーミラージュ!」


 いつものようにアイリは初手から無数の分身を作り出していき、敵の注意を引き付けるも、クールタイムが長くなったことで、数が減ってきたらもう一度というわけにはいかない。とはいえ、レベル差の暴力でアイリにヘイトが向いても、そうそうやられることは無い。


「虫タイプの弱点は火だから…火炎瓶!」


 Chrisが赤い薬品が入った瓶を投げつけると、敵にあたった瞬間瓶が割れて、巨大な火柱が虫たちを焼いていく。弱点攻撃ということもあり、ほぼ一撃だ。


「すごいね。でも、お金がかかったりしない?」


「大丈夫です。生産アイテムがあれば、戦闘中でも道具生成すると……火炎瓶ができます」


 何処からともなく現れた火炎瓶を投げつけ、敵を焼き払う。自分よりも魔法使いっぽいなと思いながら、アイリはこの場を切り抜けようと目の前の敵を倒していった。戦闘が終わり、辺りを警戒しながら森の深くまで進んでいく。


「それにしても、薬師って凄いね」


「道具を使えば色々とできますが、先の戦闘みたいに魔法瓶で攻撃に参加しても魔導士の劣化、ポーションで味方を回復してもヒーラーの劣化、そのくせ作るアイテムの大半はNPCに売られているから、商人プレイヤーがいれば役立たずなんて言われています」


「でも、私と違っていろんな属性攻撃できるし、ミミちゃんみたいな回復力が無くても攻撃に参加できるんでしょう」


「それはそうですけど……」


「私、そんな器用なこと出来ないもん」


「あの……私、動画見てましたけど、色々とやっていたと思います」


「そうかな?」


「そうです!」


 Chrisに強く言われてみると、召喚魔法を使いながら強力な魔法を使うとなるとイーグルしか思いつかない。リヴァイアサン戦で共闘したときは足場を作りながらの戦闘を行うなど、器用なことをしていた。つまり、自分はそんな彼と同等のことをしているのだと自覚する。


「私って思っている以上に手広くやっているタイプ?」


「そうです」


「そうなんだ。自分だとあまり気づかないなあ」


「そういうものなのでしょうか?」


「そういうものだよ。自分の悪いことはすぐ見つかるけど、良いところって自分で気づかないことあるよ」


「そうでしょうか……ところで、エルフの村はこのあたりなのでしょうか?」


「うん。マーキング場所はあっている。だけど、だいぶ昔の地図との照らし合わせだから、ずれているのかも」


「そういうことですか」


「う~ん、このあたりを手掛かりなしで探索するにも時間がかかりそう。Chrisちゃん、なにかいい方法ない?」


「このあたりって、プレイヤーの人って良く来るんですか?」


「どうだろう? 奥まで探索しようとする人はレベルも高い人が多いから、最近はあまりいないんじゃないのかな」


「なるほど。それなら、追跡粉を使って……」


 Chrisが粉を振りかけると、そこには青白く光る足跡が浮かんでくる。そのほとんどは獣や虫たちの足跡だが、その中に紛れて人の足跡も見え隠れしている。


「すごい!これどうなっているの?」


「説明文には24時間以内の魔力の跡が浮かぶ粉と書かれています。本来なら、逃げ足の速いレアモンスターを追うためのものなんですけど、うまくいきました」


「つまり、昨日から今日にかけてここを誰かが通ったってことだね」


「はい。足跡の数からして一人二人ということではなさそうです」


「まるで科学捜査官みたい。この足跡を追っていこう」


「ではマーキングして、色を緑に変化」


 緑色に変わった足跡を追い、森の中を突き進んでいくと急に足跡が途絶えている場所に出る。足跡の主は何処に行ったのだろうかと辺りを見渡すも、手がかりはなさそうだ。


「困った時のケルベロス召喚!」


『相談役でも警察犬でもないのだがな!』


「この足跡の匂いとか追える?」


『この先に結界がある。どうやらエルフ以外を拒絶するタイプのようだ。この中では我も戦うどころか侵入することもできん』


「なるほど、召喚系の魔法禁止ってことだね」


 ケルベロスを解除して、アイリはケルベロスが教えてくれたことをChrisに話して、足跡の先へと進んでいく。何かフィルムのような柔らかい感触を覚えた後、再度緑色の足跡が点々と続いていく。


「さっきのが結界なのかな」


「そうかもしれません」


 足跡を追っていくと、突如足元に矢が放たれる。このあたりに出てくるモンスターとは明らかに違う攻撃方法に辺りを警戒しだす2人。すると、目の前に狩人の恰好をしたエルフの女性が現れる。


「とまれ!貴様ら、何しにここにやってきた!」


「私たち、ここにエルフの村があるって聞いて……」


「敵か!問答無用!」


「人の話聞いてよ!?」


「退きましょう。どうやらなにかしらのイベントを立てないと通さないようです」


 多数の矢に追われながら、アイリたちは結界の外へと出て息を整える。どうやら結界の外までは追いかけてこないようだ。


「びっくりしたぁ」


「問題は何かしらのフラグ、イベントを忘れていたかですよね」


「う~ん、追跡粉をもう一回使って現場検証しようか」


「そうですね。今度は足跡別に色分けをしておきます」


 今度は赤、オレンジ、紫、茶色とカラフルな足跡が浮かび上がる。どうやらこの道はエルフの通り道になっているらしく、行き帰りの足跡が目立つ。


「あれ? この赤い足跡、行きの分しかないよ」


「そうですね。まだ帰ってきていないか別のところから出入りしたのか……」


「手がかりもないし、この赤い足跡を追ってみよう」


 子供くらいの足跡を追いかけていくと、木の幹に赤黒く変色したシミが見える。Chrisが薬品をかけると、青く変色する。


「血ですね。ここで何かに襲われたのかも」


「急ごう!」


 2人が足跡を追い、森の中を走っていくとそこには血を流して倒れているエルフの少年の姿があった。


「誰だ?」


「私のことより、先に治療しないと」


「ポーションならいくらでもあります」


 Chrisが少年にポーションを飲ませていくと、見る見るうちに傷が癒えていく。


「助かった。後は一人でも……いててえ」


「足のケガが治りきっていないのかも」


「さっきの女の人にこの子を預けよう。村の子かもしれないし」


「俺のことは良い。でないと奴らが戻ってくるぞ」


「「奴ら?」」


 アイリたちが聞き返すと、茂みの奥から機械の駆動音が聞こえてくる。そして、現れたのは数メートル程度の機械の巨人。レベルはこのあたりでは高いLv30のマシンゴーレムだ。


「言わんこっちゃない。俺を見捨てて、逃げろ!」


「逃げないよ!まだ夕方だから影はある。シャドーミラージュ!」


 分身体だけを動かし、当の本人であるアイリは動かず、ポイズンショットやカースを放っていく。すると、ゴーレムに攻撃が当たった瞬間、RESISTの文字が現れ、ダメージが半減する。


「闇に抵抗があるのかな」


「ちげえええよ!あいつ等のボディはミスリル製。状態異常は通りにくいし、魔法ダメージを半分にするんだ」


「ひいいい、エルフ縛りあるのに魔法が通りにくいの!?」


「ですが、アイテムなら……爆裂玉!」


 マシンゴーレムに爆弾を投げつけると、今度はRESISTの文字が無くきっちりとダメージが通る。ステ差のごり押しと物理攻撃が強力なケルベロスを召喚したアイリと、アイテムで着実にダメージを重ねていくマシンゴーレムは倒れていく。


「すげえな、アンタら。アンタらが時間を稼いでくれたおかげで、歩けるくらいまで回復したぜ。俺たちの村に来いよ、歓迎するぜ」


「ねえ、Chrisちゃん。これから受けるイベントって、ものすごく大変なんじゃあ……」


「私も思います……」


 前途多難な予感を感じながら、赤毛のエルフの少年の後を二人はついていくのであった。

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