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第4話 ギルド

 はじまりの街に戻ってきたアイリたちは街の中央にあるギルド支部に向かう。この国の歴史を感じさせる威風堂々とした建物の中に入っていく。その中には職員が、掲示板に次から次へとクエストの張り紙を張っていき、それらを冒険者たちが眺めていく。

 オカシラは迷うことなく、ギルドの受付の女性に話しかけていく。


「ミューイ。久しぶりだな」


「アンタ、どの面下げて……その子は?」


「ああ、紹介するよ。マーサの弟子の」


「アイリです。宜しくお願いします」


「礼儀正しい子ね。気に入ったわ。ここに来たってことはギルドに入るつもりなんでしょう?」


「はい!」


「元気で良し。お姉さんが少しまけて登録料3000Gのところを2000Gにしてあげる」


「俺のときはそれくらいだっただろう。1500Gにしろ」


「しょうがない。幼馴染のよしみで1500Gにしてあげる」


「お、幼馴染だったんですか!」


 受付のミューイとオカシラを見比べる。ミューイがまだ20代と言っても通じそうな大人の女性に対し、オカシラは30代、いや40代くらいの貫禄はある。ミューイが若作りしているのか、オカシラが老け顔なのかは判断がつかない。


「腐れ縁ってやつだ」


「まあ、恋愛感情とかはないけどね。後ろがつっかえてくるから早くお金払ってね」


「はーい」


 急かされたアイリはお金を払うと、ミューイからギルドについての説明を受ける。


 各町には大なり小なりギルドの支部があり、首都にはギルドの本部がある。

 ギルドには依頼掲示板があり、そこに張り出されたクエストを冒険者が取り外して、受付で受諾処理を行うことでクエストを受け持つことができる。

 クエスト道中で達成が困難と判断した場合は、ギルドに戻ってキャンセルの手続きを行うことができる。なお、クエストをキャンセルしても消費したアイテムは戻ってこないため注意。

 クエストを達成すると、それに応じた報酬やスキルポイントがもらえる。


 また、ギルドにはテレポーターと呼ばれる装置があり、登録すると別のギルドに行くことができる。ただし、各支部で登録する必要があるため、一度、冒険者がそのギルドまでいかないといけない。


「最後にギルドランクの説明をさせてもらいます。アイリ様の最初のランクはFとなっていますが、貴方の功績やレベル、クエストの達成率などに応じて最大Aランクまで上昇することができます。そこの幼馴染は万年Eランクだったけど」


「うるせえ。俺のことは言わんでいい」


「というわけでこれがアイリちゃんのギルドカード。身分証明書にもなっているから紛失はだめよ」


「気を付けます」


 アイリがギルドカードに触ると瞬時に消え、慌ててカバンの中をチェックすると「たいせつなもの」の中にギルドカードが分類されていた。


「これ、無くすことないよね……」


 アイリの独り言は聞こえなかったらしく、オカシラに手を引っ張られて掲示板の前に連れていかれる。


「結構、依頼が残っているな。しかも森の依頼はごまんとある。どうせなら一気に受けておくか」


「えっ~と、良いの?」


「おうよ。ただ、一人最大4つまでって決まっている。報酬が良いキラービー、ゴブリン、フォレストウルフ、グリーンコングの討伐を受けておくか。お前も同じのを受けるか?」


「採取クエストもあるから、これも受けていいかな」


「マーサのところで植物については習ったから良いぞ。あとでみっきりと教えてやる。グリーンコングの代わりに、おしゃべり草の採取をうけとけ」


 2人が合計8つのクエストを受けて、再び森の中へと入っていく。



「ポイズンミスト!」


 毒の霧をまき散らし、キラービーを巣ごと駆除していく。倒れたキラービーにアイリの手が触れると、討伐した証としてキラービーの毒針が手に入る。まれにキラービーの羽が手に入るあたり、こちらはレアドロップらしい。


「巣の近くにはキラービーがいっぱいるからな。範囲攻撃さえあれば、狩り放題ってわけだ。次はゴブリンの駆除だ」


 山の中を歩いていくと、洞窟がみえる。中から何らかの物音が聞こえるあたり、ゴブリンかそれとも別の魔物の巣かもしれない。


「ポイズンミスト!」


 毒の霧が洞窟内に充満し、毒で弱ったゴブリンたちが慌てて飛び出してくる。だが、彼らの背後から現れたアイリの分身体に足を引っ張られ、遠くまで逃げ切ることができずに毒が回りきって死亡する。ゴブリンのドロップを回収し終えた後、アイリはポーションでMPを回復する。


「ウルフは徘徊するからであったら倒す。クエストには制限時間が無いから、明日でも大丈夫だ。おしゃべり草は少しじめっとしたところに生えてることがおおい。例えば……」


 陽が遮られるような森の深いところまで潜った二人は口のような形をした花を見つける。


「こいつがおしゃべり草。特徴的だろ」


「どちらかと言えばおしゃべり花って感じです」


「確かにな。それでここまで深く潜ると……」


 どすどすと大きな音を立てて近づいてくる緑色の毛のゴリラ。ゲーム初心者のアイリも見た目でこれがグリーンコングであると分かるレベルだ。


「ここいらの雑魚だとレベルは高いが……ダークスラッシュ!」


 たった1撃でグリーンコングを地面に伏せさせる。あっというまに倒す神業にアイリは思わず拍手を送る。


「別に拍手を送るもんじゃねえよ。俺の方がレベルが高いからな」


「いくつなんですか?」


「23だ」


「私がさっき10になったばかりだから、倍以上違いますね」


「当たり前だ。あまり深入りすると夜になる。夜はゴースト系が出るから、それなりの準備をしないと危険だ。さっさと帰るぞ」


 2人がはじまりの街に着いたころには日が暮れ始め、夜のとばりが降りようとしていた。

 ギルドに戻り、報酬を受け取ったアイリはギルドが用意してくれた宿屋で食事をとった後、ベッドで横になって眠った。




「寝ると現実世界にログアウトができるんだ。それにしても、ゲームで丸一日動いたのに現実だとまだ空が明るいなんて不思議」


 時計を見ると昼を過ぎたころ。加速する時間に対しての脳や精神の負担を考え、連続のログインはできないようにクールタイムが設けられている。次、ログインできるのは夕食を終えた頃くらいだ。


「現実の買い物に行きますか」


 財布を持って、愛理は元気よく外に出るのであった。

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