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第43話 協力依頼

 王都にある酒場で【アルカナジョーカーズ】の面々がアイリが来るのを待っていた。NPCの客がひしめく中、カランコロンと鈴の音が店内に響き渡ると、エースがアイリが気づくように手を振る。


「よっ、元気にしていたか」


「エースさん、こんにちは」


「ずいぶんと鍛えているようじゃねえか。俺もうかうかしてられないな」


「それで、エースさんが苦戦するほどのクエストって?」


「俺はそのとき参加していねえ。仕事あったからな。受けたのはコイツらな」


 エースが話すには昨日、キングたちがクエストを発見。その内容は古代生物の復活を目論む悪い魔導士を倒すというもの。クエストを進めて、魔導士と復活させた古代生物を撃破することに成功した。


「そこまでは良かったんだが、魔導士の部屋にあった資料を読むと、未確認の古代生物が1匹残されていたことがわかって、シークレットクエストが発生した。参加人数は1PTのみ」


「レイドじゃないんだ」


「【サンダーバード】が発見したシークレットクエストも1PT限定だったから、レイドとは限らないみたいだ。話をつづけるぜ。こいつら3人と他のメンバーで挑んだが、あえなく敗退。そこで万全を期して俺とキング、クイーン、ジャック、そして、この不愛想な奴が……」


「不愛想で悪かったな、ジョーカーだ」


「アイリです。よろしくお願いします」


 マントで体形を隠し、フードで顔を隠しているが、声からして女性だろう。互いに挨拶を済ませ、本題へと入る。


「で、アイリを呼んだ理由を話す前に相手の情報を伝えたほうが良いな。かなり有名なモンスターだ。名前を聞いただけで分かる」


「なんだろう?」


「T-REX。ティラノサウルスって言ったほうがわかりが良いか」


「ティラノサウルスってあの……!?」


「そう、最強の肉食恐竜の前に我々は敗北した。敗因は2つ。一つは奴の火力が高すぎてタンクが瞬殺されたこと。もう一つはスピードも舐めてはいけないレベルで高く、タゲを取ってしまった瞬間にやられることが確定する」


「俺たちも回避スキルはあるが、CTが長いせいで焼け石に水ってところだな」


「アタイたちが求められるタンク役は俊敏性が高く、CTが比較的短い回避スキル持ちの回避壁ってわけさ」


「ケルベロスに乗ったアイリならスピードは十分。俺が見たところ、シャドーダイブは発動条件があるせいか他の回避スキルよりも連打性に優れていると来た」


「えっ~と、つまり、私が囮役ってこと?」


「そういうことだ。嫌なら受けなくてもいい。どうする?」


 ティラノサウルスがどれだけの強敵なのかは分からないが、ファフニールよりも強いってことは無いと考え、その提案をのむことにした。だが……




「結構はやっ!?」


『振り落とされるなよ!』


 自動車くらいの猛スピードでドシドシと追いかけてくるティラノサウルスに追いつかれまいとするケルベロス。徐々に差が縮まってくるところにエースの銃弾が命中し、ひるませる。すると、ティラノサウルスがエースを睨めつける。


「エースさんに意識が向いたから、今度はこっちが攻撃しないと!ヒュドラブレス!」


 ヘイトを取り直して、ケルベロスが逃げている間にポーションで回復する。

 エースだけでなくバックアタックを利用して、ティラノサウルスの背中に乗って斬りつけているジャック、植物の種をマシンガンのように撃ち続けているクイーンがいる以上、ハイグラビティによる行動妨害は使えない。一方で接近戦を主体とするキングと大鎌使いのジョーカーは遠方から、斬撃を飛ばしていた。

 じわじわとHPを削っていくと、ドシンドシンと複数の足音が聞こえてくる。


「なんだ、敵の増援か?」


「あれはステゴサウルスとプテラノドンだよ」


「各員気をつけろ、あいつらは――!」


 キングがいうよりも早くステゴサウルスの尾ひれがミサイルのように飛び出して、【アルカナジョーカーズ】の面々に襲い掛かる。さらにはプテラノドンから火球が吐かれ、クイーンの植物が焼かれていく。


「うわっ!? 恐竜ってそんな攻撃しないよね!? 噛みつくくらいじゃないの!? とにかくこっちに意識を向けさせないと!シャドーミラージュからのダークサンダー!」


 昼間であるため攻撃力上昇補正はないが、空中まで届く魔法は数が少ないため、使わざるを得ない。地上から放たれた雷が空中にいるプテラノドンを焼いていくが、さすがに一撃とはいかない。攻撃を受けたプテラノドンの攻撃目標がアイリに移り、ケルベロスは後ろから襲い掛かるティラノサウルスと空中からの攻撃に身をさらけ出すこととなった。


「しゃ、シャドーダイブ!!」


『だが、このままではいつかやられるぞ』


「頭数を減らすにしても……」


「キング、ステゴサウルスは任せた。オレは上空を叩く!スキル【飛翔】」


 ジョーカーが空高く飛び纏っていたマントを翼のように広げる。手にした鎌も相まって、その姿はまるで死神のようであった。


「喰らいやがれ、デスサイズ!」


 大鎌を振るい、プテラノドンの首を狩る。その勢いのまま、大鎌を投げつけて遠くにいるプテラノドンを切っていき、ブーメランのように戻ってくる。あっという間にプテラノドンの数を減らしていくジョーカーに負けじと、キングもステゴサウルスの銃弾爆撃を掻い潜りながら、厚い皮膚をバターのように斬り裂いていく。


「私たちも負けられないね。新スキル発動できるかな。カース!」


 アイリが何発かカースを放っていくと、ティラノサウルスに防御力ダウンの状態付与が付く。これはマーサのところで新たに習得した【呪詛】の効果だ。


「呪い状態になった時に低確率で相手のステータスをランダムに1つ下げる効果だけど、発動してよかった。あとはアクアプレッシャー!」


 ティラノサウルスに毒状態が付与され、HPゲージの減りが早くなっていく。そして、凶暴化したことで、ティラノサウルスが火炎をまき散らしながら、襲い掛かる。


『我に火炎勝負を挑むつもりか、面白い!』


「火には水だよ。アクアプレッシャー!」


 迫ってくる火を打ち消しながら、逃げていくアイリに対して恐竜たちの増援もやってくる。それを見たジョーカーとキングがすぐさま、加速系のスキルを使ってすぐさま反転し、タゲをアイリから自分に移し替える。


「さすがにティラノサウルスは無理でもねえ、雑魚は効くんだよ!」


 クイーンがステゴサウルスをいばらの鞭で首元を締め上げて絶命させる。彼女の援護攻撃も入ることでティラノサウルスのヘイトを取っているアイリに近づけさせないようにする【アルカナジョーカーズ】たち。


「スキル【流血】を使ってスリップダメージを与えているんだ。いい加減に落ちろ!」


 ジャックがナイフを突き刺していくと、そこから血が止まることなく流れ落ちていく。そして、毒・呪い・流血の3種のスリップダメージが決め手となり、ティラノサウルスは遂に倒れるのであった。



 シークレットクエスト【暴走する古代生物】をクリアしました

 パーティー全員にスキルポイント40ポイント付与

(世界初撃破ボーナスはにゃんぞうが率いるパーティーが入手済みです)


 称号:【食物連鎖の頂点】(獣属性のモンスターに与えるダメージアップ)


「くそっ!先を越されていたか!!」


「にゃんぞうって誰?」


「テイマー、サモナー専門のクラン、【にゃんにゃんクラブ】のクランリーダーだよ」


「そのほとんどが自分のペットを磨き上げるかを競い合っていて、こういった最前線のクエストにはあまり出ないはずなのだが……まあ、強いメンバーもいるからかき集めたら、クリアができたのかもしれん」


「テイマー、サモナー専門……そんなクランもあるんだね」


「ああ、何かを専門としているという意味であれば我々のPKクランもその一つだ。他にも商人だけで固めて誰が金持ちになるか競い合う商人クランとかな。不当に高い商売する輩もいるから、嫌われてはいるが」


「そんな人もいるんだ」


「他のクランの悪口はあまり言わねえほうが良いさ。今日は助かったぜ、アイリ。また、面白そうなクエストがあったら教えるぜ」


「はい!今日はありがとうございます」


 ぺこりと頭を下げて、パーティーから離脱したアイリはあたりが暗くなり、現実世界ではちょうどお昼時ということもあり、ゲームからログアウトする。


「う~ん、今日はなんだか疲れた気分」


 愛理は少しばかりの疲労感を感じながら、今日は何を食べようかなと外へと繰り出すのであった。

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