第36話 vsゴルドランの悪魔
「勢いで分身しちゃったけど、今ケルベロスを召喚すると、分身と合わせてこの場を埋め尽くしちゃうから駄目だね。まずは毒と呪いで数を減らすよ」
「数が数やからな。防御力上げとくで、プロテクションシールド!」
リュウが敵の攻撃を惹きつけている間に、ポイズンショットとカースでゴールドゴーレムやゴールドリザードに攻撃していく。ボスから生まれたばかりで動きがのろく、ステータスはやや低めに設定されているので、倒すのは楽だ。
「アイリは雑魚担当」
「うん、任せて。呪いにも耐性あるから」
「私も分身出したけど、こっちは本体を叩くよ。エアースラッシュ!」
「ショックウェーブ!」
「まずは素早さ勝負や!ハチ太郎、ポイズンニードル!カブ太郎、ギガントホーン!」
3人の攻撃がそこらの金鉱石を貪り食っているゴールドデーモンにぶち当たる。だが、そんな彼女たちの攻撃をなにごともなかったかのようにうけ、攻撃を受けた背中をかいた後、食事へと戻っていく。そして、悪魔の身体から産み出される黄金色のモンスターたち。
「もしかしてなんだけど、ここのモンスターってあの悪魔の排せ……」
「それ以上、言ったらあかんで!!女の子的にNGや!!」
「相手の物理防御が高いなら、魔法が有効かもしれへん。アイリ、一発強力な魔法、ぶちかましたれ!」
「分かった。この場で強力な魔法ならダークサンダー!」
黒い雷がゴールドデーモンを襲う。だが、本来ならば肉体を焼き尽くすほどの電撃が体表の金によってアースのように地面に伝わってしまい、ノーダメージだ。
「だったら、ヒュドラブレス!カース!」
毒竜と呪いの弾がぶち当たり、ゴールドデーモンを襲うも、効き具合はイマイチと言ったところか。
「アイリの攻撃が効かないってことは魔法に対する魔法防御も高いってこと!?」
「う~ん、どっちかというと、金は銅に次いで導電性が良いし、腐食もされないから私との相性がいいだけかも」
「だったら、金の弱点を突けばええってなるけど、金の弱点ってなんや?」
「王水みたいな強い酸に溶けて、柔らかくて熱に弱い金属ってところかな」
「火とパワー重視に切り替えるで。ちびドラ、岩太郎!」
「ヒートスタンプ!」
「火遁の術!」
「シャドーミラージュをいちど解除。ケルベロス召喚!」
パーティーメンバーがもつ炎攻撃が一斉にゴールドデーモンを襲い、WEAKの文字が表示される。弱点攻撃を受けて、HPゲージが目に見えて減っていき、ついにゴールドデーモンが鉱石を食べるのをやめ、雑魚モンスターの出現が止まる。とはいえ、すでに出している雑魚モンスターは多く、そちらはアイリが引き受けることなった。
「行動パターン変化やな。念のため、もう一度挑発とプロテクションシールド張って……」
リュウがいつでも攻撃を受けられる準備を整えていくと、ゴールドデーモンの体表から鉱石が飛び出し、雨あられのように【桜花】のメンバー全員に降り注ぐ。
「全体攻撃か!」
「それならホーリーバリアで防ぎます」
「ワイも受けるダメージは増えるが、広範囲をカバーできるワイドシールドで!」
ゴールドデーモンからの猛攻を必死に耐え、リュウのHPが1/3以下になったところで攻撃が止む。リュウがワイドシールドでパーティー内のダメージを引き受けたとはいえ、他のメンバーもそのHPを削られていた。
「回復量は落ちますが、全体回復します。ワイドヒール!」
「リュウ、ワイドシールドのCTは?」
「かなり長い!次の攻撃に間に合わんかもしれへんから、ばらけたほうがええで」
「でも、ばらけられるとヒールが届かないかもしれないです」
「了解。機動力のある私が活路を見出すわ。攻撃範囲が前面にあるなら背後に回れば!スキル【加速】」
リュウがデーモンの通常攻撃を盾で耐えている間に、ユーリが背後に回りこむ。そして、スキル【壁走り】で洞窟の壁を登っていき、再度、背後からの攻撃を狙っていく。
「飛翔突!」
風の力を纏って、がら空きの背中に刃を突き立てる。切っ先だけとはいえ、ゴールドデーモンに刀が突き刺ささったのを見て、ユーリは素早く刀の柄に蹴りを入れて深く突き刺し、その場から離れる。
「体表は問題なくても内部はどうなっているのかしら!」
「これが最大のチャンスならスキル【ギャンブル】!ダークサンダー!」
アイコンタクトを受けたアイリが突き刺さった忍者刀に向けて黒い雷が走り、体内を焼いていく。すると、ゴールドのメッキがぼろぼろと剥がれ落ち、ただのデーモンへと成り下がる。
「まだまだHPは半分近く残っているけど、金が無いならあの全体範囲も無いやろ!」
「気を付けて、手からのビームは強力だよ」
「そんなもんにはやられないで!!リフレクトシールド!」
呪詛混じりのビームを跳ね返し、自身の片腕を失ったデーモンに跳ね返った攻撃による呪い状態が付与される。ビーム攻撃は危険だと思ったのかデーモンが残った腕をがむしゃらに振り回しながら、リュウに襲い掛かるが、それを受け流していく。
「カウンターシールドブーメラン!」
盾を投げつけ、デーモンの足元にぶつける。体勢を崩して尻餅をついたデーモンに【桜花】メンバーの総攻撃が叩き込まれ、そのHPを0にした。
ゴールドデーモン初撃破ボーナス
スキルポイント20ポイント手に入れました
(世界初撃破ボーナスはライチョウが率いるパーティーが入手済みです)
称号:金山の主(ゴルドラン鉱山の敵との遭遇率ダウン)を手に入れました
「あら、私たちよりも先に倒した人がいるのね」
「ライチョウさんって誰だろう?」
「クラン【サンダーバード】のクランリーダー。スキンヘッドで強面だけど、ゲーム最初期にお世話になったことがあるよ。基本的には僧侶のホークさんと魔法使いのイーグルさんの3人で手を組んでいたと思う。バトルスタイルはまあ……ある意味、アイリの逆」
「私の逆? どんな戦いするんだろう? いつか会ってみたいね」
「今度のイベントでばったり会ったりして」
来週から始まるバカンスイベントに楽しみにしつつ、【桜花】は帰る道中に鉱石をたっぷりと発掘してから、今日のゲームを終えるのであった。