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第23話 vsプレイヤーキラー(後編)

 アイリにこてんぱんにやっつけられた【アルカナジョーカーズ】の3人が、昨日の戦闘の反省とアイリについて話し合っていた。


「対策を考えてみたが、あの犬を出された時点で終わりじゃねえか?」


「忌々しい犬っころだよ。あれが無ければ、アタイらは!」


「そこまでだ二人とも。このことはエースに話してある。じきに……」


「おうおう、俺が居ない間になんかおもしれえことになっているって?」


 深く帽子をかぶったガンマン風の男性が3人の前に現れる。そして、情報を共有した4人はアイリにメッセージを送るのであった。




「ええ~、プレイヤーキラーに襲われた!?」


 昨日のことを【桜花】のメンバーに話すと、全員が驚いたような顔をしている。いくらクランで独占するためとはいえ、メリットの少ないPK行為をするとは思わなかったからだ。


「報復でクランメンバーを狙ってくる可能性もある。これは私もパーティーで動いたほうが良いわね。私のフレンドにもPK行為しているプレイヤーがいるって注意しておく」


「わたしもパパとママに話しておきます」


「ワイも連絡しとくで。ユーリちゃんもワイのパテに入るとして、問題はアイリちゃんやな」


「そうね、明らかにその【アルカナジョーカーズ】はアイリちゃんを狙っているもの」


「返り討ちにしたから、もう襲ってこないと思うけど……あれ? メッセージが来た」


 メッセージの送り主はキング……【アルカナジョーカーズ】のクランリーダーからだった。それをあけると、そこには今日も襲う旨とこれでも負けるようなら襲わないと書いてあった。


「よし、頑張るぞ!」


「ソロで大丈夫? 私たちも手伝うよ」


「うん。大丈夫。昨日みたいにケルベロスを呼ぶから」


「まあ、そのせいで掲示板でまたまた大騒ぎしとるしな」


『【悲報】エルフ、ボスモンスターを口寄せ』

『おかしい、プレイヤー名が書かれていないのにはっきりと誰か分かるぞ』

『奇遇だな。俺もだ』

『顔までわかる俺はエスパーだわ』

『俺が、俺たちが、新人類だ!』

『いつか、エルフの文字抜けても誰がやったのか分かるんじゃねwww』


「もう名前エルフに変えちゃえば。120円課金する必要あるけど」


「いやだよ!」


「ソロでプレイヤーキラー? ってのと戦わないといけないなら、装備を整えておかないとね!アイリちゃんがカタツムリ狩りのついでに手に入れたアイテムでバンバンアイテムを作るわよ!」


「ありがとうございます、LIZさん!」


「じゃあ、私もナイトゴーレムからレアドロップ手に入れたからクランの倉庫に移しておくね」


「一人で狩ったんか?」


「違う、違う。新しくスティールを覚えたから、カタツムリ退治の片手間にスティール→加速付きの逃走のコンボして稼いだだけ」


「ダガーや靴も強化、お願いします」


「この装備って戦闘力だけでなく鍛冶の速度とかレアアイテムの入手率が上がったりする副次効果もあるのよ。期待して待ってね」


 LIZの言葉に期待を膨らませながら、時間を潰していると1時間も経たぬうちにLIZが数々のアイテムをかごに入れて持ってくる。


「これだけのアイテム出来るんか!前の倍くらいあるんちゃうか」


「これが私の実力ってもんよ。帽子分の素材はちょっと足りなかったけど、受け取って頂戴」


 ポイズンダガー(攻撃+8→+14、ごく低確率で毒状態付与)

 ポイズンロッド(知力+10→+16、ごく低確率で毒状態付与)

 ポイズンシューズ(敏捷+16、ごく低確率で毒状態付与)

 魔力のネックレス(最大MP+20)


「ありがとうございます。LIZさん!今回は対プレイヤーだから耐呪のネックレスを外して……よし!」


「アイリお姉ちゃん頑張ってください。応援してます、おー!」


 装備を一新し、ミミの応援を受けたアイリは友達がPKに巻き込まれない単身で再び森の中を探索し始める。



「分身は近くに待機させているから、いつ襲われても大丈夫」


「じゃあ、お言葉に甘えて襲わせてもらうぜ!」


 銃声が鳴り響き、アイリの分身が次から次へと撃ち落される。敵襲にアイリは身構えると、昨日の3人の他に見知らない男性が1人増えていた。


「貴方は?」


「これは自己紹介が遅れた、レディー。俺はエース。裏のリーダーってところかな。昨日は仲間がお世話になったってことでお礼をね」


「だったらひいてくれると嬉しいかな」


「君が勝てたら、二度と襲うつもりは無いと伝えたはずだ。だが、俺たちのプライドにかけて、ここでおとなしく死んでもらう!」


「分身がさっきの攻撃で無くなったけど……ケルベロス召喚!」


 強敵であることがわかっている以上、初手からケルベロスを召喚するアイリ。それをみて、エースがにやりと笑い、後ろの3人にアイコンタクトをとると、ジャックが突っ込んで行く。


『昨日と同じ目に合わせてやろう』


「おっと、今日はその攻撃は受けないぜ。虎の子のスキルだ、【バックアタック】!」


 ジャックの姿が一瞬にして消え、ケルベロスの背後へと回る。すなわち、アイリのすぐそばに!


「まだ背を向けているなら、シャドーミラージュ!」


「おっと、分身はさせないよ。ローズウィップ!」


 地面から生えてきた薔薇の鞭でたたきつけられる分身たち。あっという間に消されてしまい、シャドーミラージュが封じられてしまう。ジャックが手に持ったナイフでアイリを斬り裂いていき、じわじわとそのHPを減らしていく。


『まずはその男からだ!』


「ジャックを狙ってきたか。だが、させるか!スキル【一斉開放】」


「お前さんの敵は俺たちだ。パラライズショット!」


 ケルベロスがジャックに向かって走っていくのをキングとエースの攻撃で足止めしていく。しかも、ごく低確率で入る麻痺がケルベロスに入り、一定時間身動きが取れなくなってしまう。


『ぐっ……』


「別にワンコ君を倒すのが目的じゃない。俺たちで足止めすれば、ジャックが仕留めるはずさ」


「なら、シャドーロックで!」


「動きが!? クイーン!」


「動かせばいいんでしょう。ローズウィップ!」


 アイリに目掛けて薔薇の鞭がしなり、吹き飛ばしていく。アイリがその場を離れたことで、ジャックに対するロックも外れ、攻撃が続行される。


「もうHPは1/4を切った。今度こそ私たちの勝ちよ」


(このままじゃあ、負ける……とにかく、4人の連携に隙を与えないと。隙?)


 アイリは自分の脳裏にあるステータス画面を思い出し、ある魔法を使おうとする。


「これで終わりだ!ネックハンター!!」


「コンフュージョン!」


「ぐっ、なんだこれは……」


 至近距離で炸裂した閃光を避けることができなかったジャックが辺りを見渡していくと、そこら中にアイリがいた。一体、どれが本物のアイリなのか分からぬまま、じっと構えていると、クイーンが後ろにいるよと耳元にささやいてくる。それに従い、ジャックは背後にいた敵に切りかかる。それがキングたちだと分からぬまま。


「何をしているジャック!」


「うおおおおおおおお!!」


「どうやらさっきの光は洗脳光線みたいね」


「やむを得ない。おとなしく死んでくれや」


 錯乱したジャックに凶弾が放たれ、リスポーン地点へと飛ばされる。ジャックの混乱で一呼吸入れることができたアイリは残った3人にお返しと言わんばかりの大技を放つことに決めた。


「あいつ、まだ切り札を……!?」


「私の切り札はいつだって毒だよ!ヒュドラブレス!!」


 アイリの前には9つの首を持つ巨大な毒竜が現れ、3人に襲い掛かっていく。


「こっちは一斉開放を既に使っているんだぞ……そのMPは何処から!」


「こんなの対処しきれるわけ……!?」


「ちっ、2つの首は落せたが!!迎撃が間に合わん!」


 ヒュドラの首から放たれる猛毒によってキングとクイーンが倒され、ダメージを減らしたエースだけが残っていた。だが、毒のスタックが表示されており、HPの減少量から、そう長いことは持たない。持って数秒といったところか。


「まだだ。そっちのHPは風前の灯火。毒が回りきる前にそれを削り切れば!クリティカルショット!!」


「デッドリーブレス!!」


 エースが決死の思いで撃った弾丸は毒竜に飲み込まれ、消えていった。


「俺たちの完敗か……」


 最後に負けを認めたエースもリスポーン地点へと戻っていく。MPを完全に使い果たしたアイリはポーションを一気飲みする。


「ぷはー。疲れた時のポーションは身体にしみわたるね~」


 いい気分になったところで、メッセージが送られていた。送り主は先ほど戦ったキングだ。短いながらも冒頭に謝罪があり、その後は……


『【アルカナジョーカーズ】は【桜花】及びその関係者に一切の危害を加えないことを誓う。本来ならば、慰謝料としてレアアイテムや金銭を受け渡しすべきだろうが、本ゲームでは余計なトラブルを避けるため、トレード機能が実装されていない。そのため、今後のイベントでクラン同士の連携を取るようなイベントがあった際、我々は貴公らの傘下に入り、協力することでその責任を果たそうと考えている。この同盟案に賛同していただけるか、ご思案していただきたい』


「これはあとでみんなで考えようと。もう襲ってこないみたいだし、今はカタツムリ~」


 アイリは気分を切り替えてカタツムリイベントを堪能することにするのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こうゆうPKは好感持てるんよな…
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