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第1話 資金集め

アイリが目を開けるとどこかの街の噴水広場。歩いている人がNPCなのか、プレイヤーなのかまったく見分けがつかないほどに精巧で、ヨーロッパにでも旅行しているかのような街並みであった。


「すごい!でも、まずは何からしたらいいのかな。とりあえずアイテムを確認して……回復アイテムのポーションにさっきのランダムスキル書が2つもある。さっそく使おう。ランダムスキル書、発動」


スキル:【状態異常成功確率アップ(小)】を覚えました


スキル:【闇魔法Lv1】を覚えました


「確率アップはそのままだから良いとして、闇魔法ってのはレベルが上がると闇属性の魔法の威力や成功率が上昇。魔法使いらしいスキルだけど、肝心の魔法がまだなんだよね」


ここが残しておいたスキルポイントの使い時かと思ったが、まだ残しておこうとした。まだ来たところで、慌てて習得する必要もない。


「それにナビさんも『初期スキルを早めに習得』って言っていたから、遅くても手に入る方法はあるってことだもん。こういうときの聞き込みはどうしたらいいんだろう。悠里ちゃんなら……」


『何しているって? 街の住民、全員に話しかけているのよ。こういう作りこみができているとゲームって面白いの。さくっとやりたいときは酒場とか教会とか重要そうな施設を狙い撃ちするけどね』


「よし、酒場だ!すみません、酒場はどういけばいいですか」


「酒場? この道路のつき当たりを右に曲がればあるが、やめておけ。そこはごろつきが違法賭博している。お嬢ちゃんがいくところじゃない」


「わかりました。ありがとうございます」


酒場の場所を教えてくれた人と別れたアイリは酒場へと入っていった。そこはいかにも悪そうなモヒカンたちが酒の入ったグラスを片手にトランプやサイコロでかけ事をしていた。巨体の男性とパンク風の男性がアイリに近づいてくる。


「なんだ。迷子の子猫ちゃんか?」


「俺たちはやさしいからよ。間違って入ったんなら、1回は見逃してもいいぜ」


「賭博をやっているんですよね」


「そうだが……それとも子猫ちゃんもやってみたいのかなぁ」


「はい!」


「サイコーにいかれてやがるぜ。客1人追加だ!」


賭けをしているテーブルに着くアイリ。テーブルの上には物が散乱しており、瓶からこぼれた酒がテーブルの一部をぬらしている。強面な男性たちに囲まれながら、まずは巨体の男性が対戦席に着く。


「席に着いた以上、女子供だからって手加減はしねえぞ」


「ええ、お願いします」


「で、何で賭ける。ポーカーか、ブラックジャックか」


「そうですね。ここはシンプルにサイコロはどうでしょう。ルールは相手より高い目を出せば勝ち。シンプルでしょう」


「いいぜ」


「では、1000Gから」


「はした金だな。レイス10万G。言っとくが、足りねえ分は身体で払ってもらうぜ」


「わざわざ忠告ありがとうございます。では、ゲームスタート」


巨体の男性がテーブルにあった年季の入ったサイコロを転がしていく。


「俺が出したのは……6!残念だったな、俺の勝ちだ(このサイコロは6しか出ないように細工しているからな)」


「勝負は最後までわかりませんよ」


「ルール上負けはねえ!」


アイリがサイコロを転がしていくと、テーブル上にあった酒瓶にぶつかりかって転がり落ちてしまう。


「おっと触るなよ。どうせ出る目はろ……」


2人の目には床に落ちた衝撃で割れたサイコロの姿があった。その目は……


「サイコロが割れて7だとおおおおお!」


「私の勝ちですね」


「ノーカンに決まっているだろうが!」


「いいですけど、今度はイカサマは無しでお願いしますよ」


サイコロの中に入っていた金属片を巨体の男に見せつける。動かぬ証拠を見せつけられた男は少したじろぐ。


「まさか初めからお見通しだったのか」


「いえいえ、私が気づいたのはサイコロを触った時、少し重たいからイカサマしているんだろうなって思いました。よく見たら、サイコロの表面にひびも入っていたし、床に落としたら割れるんじゃないかなって」


「割れなかったらどうするつもりだったんだ」


「そのときはその時で、ここで働いていたかな」


「馬鹿か!」


「現実だったらこんな馬鹿げたこと出来ないけど、ゲームなんだから楽しまないと」


「何を言っているかよくわからねえが。10万はお前のもんだ。これをもってさっさと出ろ。こんなのお頭にばれたら」


「誰にばれたらだ?」


「お、おかしら!?」


頬に大きな傷跡のある中年男性が巨体の男を蛇のように睨む。その威圧感に飲まれた巨体の男は小刻みに震えながら席をお頭と呼ばれた男に譲る。


「2回戦目といったところですか」


「そういうことだ。ルールは何でもいい。イカサマはしない証として新品のサイコロを使う」


アイリの目の前でサイコロの入った袋を開けて取り出し、アイリに渡す。たしかに不自然な重みは無く、表面状態もきれいだ。


「私が数字を宣言。貴方がサイコロを振り、それ以外の数字が出れば貴方の勝ち。宣言した数字が出れば私の勝ち」


「サイコロを使ったロシアンルーレットってわけか。オッズは?」


「確率通り6倍。1万Gからスタートし……」


「10万からスタートだ」


「わかりました。10万スタートします。私が宣言する数字は6、4、1」


「待て。宣言する数字は1つと聞いたが」


「ええ、ですから先に3回分宣言させてもらいました。全部当たれば216倍。2160万G貰います」


「イカレてやがる。まずは1回目だ」


サイコロを転がす……出た目は6。


「ぐ、偶然だ。あと2回残っている。どっちか外せば!」


もう一度、今度は勢いよくサイコロを転がす。出た目は4。


「お、お頭!このままじゃあ!俺たちの資金が!!」


「うろたえるんじゃねえ!まだあと1回残っている。こいつを振れば……」


お頭の心臓が大きく高ぶる。暑くもないのに汗がだらだらと流れ、今にも脱水症状で倒れてしまいそうだ。


「まだゲームを続けたいなら、次は2と宣言しますよ。これで一気に億万長者!」


「まだ続けるだとおおおおおおお!!!」


あまりの緊張感に気を失ったお頭の手からサイコロが零れ落ち、床に転がったサイコロは1を示していた。


「これで2160万。スタート直後なら十分すぎるかな」


スキル:【外道】を覚えました


スキル:【ギャンブラー】を覚えました


スキル:【富豪】を覚えました


スキル:【精神攻撃Lv1】を覚えました


スキル:【精神耐性(小)】を覚えました


称号:【闇の道を行く者】を手に入れました


「なんか色々と覚えたね。えっ~と、攻撃と耐性は分かるから、それ以外は……」


【外道】:闇討ち、不意打ち等の一部の攻撃力が上昇


【ギャンブラー】:一定時間、成功確率を50%にする代わりに攻撃力を大幅に上昇。1日1回のみ使用できる。


【富豪】:アイテムを売却した際に手に入るGが上昇


【闇の道を行く者】:この称号を手に入れた者の闇属性を強化。光属性を弱体化


「私を闇落ちさせたいのかな、このゲーム」


そんな風に呟いていると、お頭が目を覚まし、アイリの顔を見るや否や怯えるかのようにに後退さる。まるで化け物の顔を見てしまったようだ。


「もう一回やります?」


「や、やらねえ!!俺たちが悪かった。心を入れ替えてまじめに働く。なんでもするから許してくれ!」


「ん? 今、なんでもって言ったよね。だったら、闇魔法を教えてくれる人を教えてください」


「ああ、知っているのは知っているが……会いたくな――」


「サイコロ振りましょう。1億GETです」


「分かった連れていく!連れて行けばいいんだろう!!」


NPC:オカシラが一時的に仲間になりました


アイリはお頭の後を追って、街の裏門から外へと出ていくのであった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公にサイコロが渡された時に何かした…?
[気になる点] これ、どうやって出る目を固定してるんだろう 前の話から見て運のステに降ったわけでは無さそうだし… まさか、本当に1/216したわけじゃ無いんですよね 前の文で機転効きそうな子って印象だ…
2022/07/26 22:12 どうでも良いことが気になる人
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