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第18話 シークレットクエスト

「シークレットクエスト?」


「隠しルートがあって、その条件を満たしたってところかな。当然、『はい』だよね」


「当たり前やろ」


「はい!」


「じゃあ、お爺さんに月光草のことを話しましょう」


 みんなで一緒に『はい』のボタンを押し、シークレットクエストが開始される。LIZがお爺さんに月光草の毒性を伝えていく。それを聞いたお爺さんは手に持った粘土をぽとりと落として、地面に手をつく。


「なっ……そんな……儂はそんなつもりで…………」


「そうじゃ、オマエがワタシヲコロシタ、コロシタコロシタコロシタコロシタコロシタ」


「ゆ、幽霊!?」


「婆さん、待ってくれ!儂は……」


「コノウラミ、ハラサデオクベキカ……!!」


 青白い婆さんの幽霊がそこらの建物よりも巨大な悪霊となり果て、その足元には巨大な霊力にでも引かれたのか数多くの幽霊やゾンビたちが現れる。その様子を周りにいたNPCもプレイヤーも足が止まり、何だあれはとざわめき始める。


「婆さん、儂は……!」


「お爺さん、危ない!」


 LIZがとっさに悪霊からの呪いの光線からお爺さんをかばう。変わり果てたお婆さんに話そうと近寄ろうとするお爺さんの手をLIZが止める。


「今のお婆さんにお爺さんの言葉は伝わらないわ!」


「じゃが、それでも……」


「言葉で伝わらないなら、他のやり方があるでしょう」


「他のやり方……?」


「そう。私たちの武器はハンマーでも斧でもない。作ることよ!」


「作る……そうじゃ!儂はもう一度婆さんの思い出を作る」


「人手が足りないなら、私も手伝うわ」


「なら、ワイらはそれまで耐えればいいんやな」


「それだけじゃないよ。街も守らないと!」


「この数をか!? 100はくだらないぞ。この後増援だってありうる」


「それでもがんばります」


「まずは1人頭20匹。どっかのアニメよりマシよ!」


「ええい、俺も付き合うしかねえか!」


 緊急レイド勃発、緊急レイド勃発、緊急レイド勃発!

 クラン【桜花】により緊急レイドが開始されました。

 勝利条件を満たすまで、襲い来る亡霊からロマニアを防衛してください。


 勝利条件:ヒュージゴーストの撃退

 敗北条件:ロマニアの陥落


 わけもわからずにレイド戦に巻き込まれた一般プレイヤーたちをよそに、桜花のメンバーたちは襲い掛かるアンデッドに向かっていく。


「一般人がいるからポイズンミストは使えない。でも、これだけ多くのエネミーが居れば!」


 前のイベント予選時と同じく多重の分身体を作り始め、カースやポイズンショットを打ち込んでいく。


「リュウ、タゲ取り任せた!」


「おうよ!注目!もう片方の盾でシールドブーメランや!」


「ソニックスラッシュ!」


「おらよ、ダークスラッシュ!」


「みなさんが倒せない幽霊さんは私が。ホーリーショット」


 ゾンビたちを倒していくも、単体攻撃ではその数が一向に減らない。それどころか増えているようにさえ見える。周りの亡霊たちが周りの店や建物を破壊していく様子に歯噛みしながら、桜花メンバーが焦っているとき、横から炎が飛んでゾンビを一掃する。


「Ah……あー、自動翻訳あるから母国語でも問題ないわよね。こちら【Noble Knights】所属Merlin。Arthurの命を受け、貴方たちの援護に来たわ」


「Merlinさん!」


「東にはLancelot、西にはGawain、南にはArthurのパーティーが向かっているわ。私たちはこの北地区の防衛OK?」


「OKや、OK。ここから巻き返すで!浪速の龍とはワイのことや!」


「Wow、ジャパニーズドラゴン。その実力見せてもらうわ」


「翻訳あってもちょくちょく片言になるのね……」


「でも、金髪のお姉さん。あっという間にゾンビを倒しています」


「こっちも負けられないわね!」


「LIZさんが戻ってくるまで頑張ろう!」


 そこらかしこで戦っている他のプレイヤーをみて、波状攻撃を仕掛けてくる亡霊たちを食い止めていく。そんな中、LIZたちはお爺さんの工房に行き、お爺さんがお茶碗の修繕箇所を魔法で乾燥させている間、LIZは基礎釉を調合し始める。少しでも早く、自分たちがあの場に帰るために。


「基礎釉、釉薬の準備出来たわ!」


「よし、これで……」


「どうしたの。あとはこの月……あっ」


「……これを塗って良いのかのう。儂は……」


「大丈夫。心を籠めれば、きっとその愛はお婆さんに伝わるわ」


「分かったわい。あの時と同じ気持ちで、これを塗る!」


 真剣な眼差しで、月光草の釉薬を塗り始める。そして、再度焼きあがったお茶碗は割れた個所がくっきりと見えるも修繕はきちんとなされているようだ。出来上がったお茶碗を木箱に入れ、



「ゾンビたちもだいぶ減って、お婆さんに攻撃している人もいるけど……」


「レベルが99なせいか全然HP減ってないわね」


「それにシールドみたいなのでガードされているわ」


「とにかく今はLIZが戻ってくるまで我慢や!」


「おまたせ!」


「LIZお姉さん!」


「妙子、これは儂が店を開いたとき、一番最初に焼いた思い出の茶碗じゃ!」


「ソンナモノ、シラナイ!!」


 お婆さんから覇道のようなものが出て、周りの者を吹き飛ばしていく。お茶碗ごと吹き飛ばされそうになるお爺さんをLIZが抑える。


「恨みとか復讐心にとらわれている」


「どうすれば……」


 LIZとお爺さんの努力を無駄にしないためにもアイリは必死で考える。今、覚えている魔法・スキルで使えるもので……


「ねえ、死因ってトラウマにならない?」


「急に何言って……そうかメンタルブレイク!」


「お婆さんのトラウマ、お茶碗のことを無理やり思い出させるの」


「やってみよう。私たちはアイリに近づかせないように!」


「OK。ニンジャガール!」


 アイリがお婆さんの霊に向かってメンタルブレイクをひたすら撃っていく。1発でダメなら、もっとたくさん。分身体も合わせて無数のメンタルブレイクが飛来し、次から次へと当たっていく。かつての思い出を思いさせようと思いを込めながら。


「ウウウウウウウウウウウウ、ヲヲヲヲヲヲヲヲオオオオオオオオオオ!!」


「思い出してくれ、このお茶碗を渡した時のことを。儂と死ぬまで一緒に居てくれえええええええ!!」


「ううううううううううううう……」


 お爺さんの愛の告白を受け、巨大な悪霊がうめき声を上げながら小さくなり、元の婆さんの姿に戻る。


「ワタシは……」


「すまん!儂が気を付けていたら……」


「いいえ、わざとではないとわかっていましたよ……じゃが、誰かに唆されて……」


「妙子……」


 お婆さんが天に昇っていく。お爺さんの涙を残して……


 そして、泣き止んだお爺さんがLIZ、そして所属している【桜花】のメンバーに対して頭を下げる。


「ありがとう。お前さんらが居なかったら儂は何も知らないまま、悲しみに暮れていた。これは儂が若い頃に使っていたものじゃ。これをお主にやろう」


 LIZは夜空の帽子、夜空の彗星、夜空の服、夜空の星靴を手に入れた


「こんなにいっぱい……別に構わないのに」


「いやいや、これでも足りんくらいじゃよ。妙子に顔向けできるよう、頑張るわい」


 シークレットクエスト【真実の愛】をクリアしました

 攻略メインクラン【桜花】に所属しているメンバー全員にスキルポイント50ポイント付与。

 本レイドに参加したクラン並びにパーティー全員にスキルポイント10ポイント付与。


 世界初シークレットクエスト【真実の愛】クリアボーナス

 クラン【桜花】に所属しているメンバーに選択スクロール付与


 スキル:【逆境】を手に入れました


 称号:【愛の伝道師】を手に入れました


「私、初めての選択スクロール!中身は魔法・技:カースシールド、魔法:死霊召喚、技:カースブレード……どれも呪い系のものばかり。アイリじゃないんだから」


「えっ? それどういう意味?」


「ワイはカースシールドやな」


「私もカースシールドとるかで悩んだけど、死霊召喚かな」


「私もアイリお姉ちゃんとおなじです。幽霊さんにお手伝いしてもらいます」


「私は安全にショックウェーブ撃ちたいからカースシールド」


「う~ん、私は短剣にも対応しているカースブレードかな。【逆境】は相手の数が多いほど攻撃力がアップ。【愛の伝道師】はクランメンバーと対戦相手の善悪度を善よりにしていくみたい」


「逆境はええな。レイド戦で有能なスキルも貰えたし、長いことログインしっぱなしやったから、これでログアウトするわ」


「私たちもログアウトしようか」


「うん」


「きっと掲示板荒れるわよ~」


「ゆうめいじんですね」


「まあね。私もログアウトするけど、ミミちゃんもたまにはログアウトしなさいよ」


「は~い」


【桜花】のメンバーが次から次へと現実の世界へと帰っていく中、取り残されたミミはギルド内に残って他のクエストを探すのであった。

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