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第15話 模様替え

「へえ~、これが私たちの家なんだ」


「見た目は西洋風、ファンタジーに出てきそうな家よね」


 煙突のある立派な2階建ての一軒家、その横には畑があり、その反対側には大きな竈がある。手元にあるステータス表には最大20人までは入れるらしいが、それだけの人数が入ったらぎゅうぎゅう詰めになりそうだ。


 リュウがクラン【桜花】に入りました


 ミミがクラン【桜花】に入りました


 LIZがクラン【桜花】に入りました


「ほ~、これが噂のクランホームちゅうやつか。ようお金集めていたもんや」


「可愛らしいお家ですね」


「そうね。でも問題は内装よ。もしかすると1から集めないといけないかもしれないもの」


「私、手伝います」


 ミミが元気いっぱいにぴょんぴょんと飛び跳ねる。そして、アイリが玄関をゆっくりとあけると、そこには外から判断できないほどのびのびとした広い空間が広がっていた。


「すごい。外と内側で広さがこんなにも違うんだ」


「ゲームならではの表現よね」


「これならクランメンバーが埋まっていても利用できそうやな」


「でも、中にあるのテーブルとイスだけってのはさみしくない? 食器とか箪笥とかカーテンとかちゃんと家具を買っておきましょう」


「私、うさぎさんの食器が良いです」


「それなら、街に行ってそういうのあるか見てみましょう」


「せやな。あてもなく町中うろつくよりかは目的持った方がええわ」


「じゃあ、【桜花】の最初の活動はみんなでホームの模様替えだ――!」




 街へ戻ったアイリたちは2手に分かれて露店や雑貨店をめぐっていく。プレイヤーにはカバン機能があるため、荷物持ちが要らないのは楽でよかった。


「うさぎさんとねこさん」


「可愛いわね、そのマグカップ」


「ファンシーなものもええけど、今後、男性メンバーも入ることも考えて無地なものもいると思うで」


「男の子向けはリュウくんが選んだら? 女の子向けは私たちが選ぶから。ねー」


「ねー」


「仲ええな、あんたら。まるで親子や」


「こんなかわいい子が娘になるなら大歓迎。それに、この子、私が夜遅くにログインしてもいるのよ」


「まだ小学生やろ。そんな遅くにゲームして親御さんから怒られへんのか?」


「パパもママもたま~にしか会わないもん」


「たまに? 共働きか何かか? それにしても、ずいぶんとつめた……すまん、これは言い過ぎや。ここにいる間はお兄ちゃん代わりになってやるで」


「ふふふ、私と同じようなこと言っている」


「LIZお姉さんもリュウお兄ちゃんもだ~いすきです」


 ミミの満面の笑みを見た2人は、会計を済ませてまた別の露店をめぐっていく。


「この髑髏型の花瓶、なんか呪われそうやな……」


「あれ? あそこのお茶碗、割れてるよ」


「ほんまや。店主はん、これ使い物にならへんで」


「ああ、すまん。これは売りものじゃないんだ……なくなった妻が使ってくれたものでね。こうおいておくと妻がそばに居てくれるそんな気がするんだ」


「でも、割れてて可哀そう」


「亡くなった日に落としてしまってのう……」


「あら? 『クエストを受けますか?』って出たわ」


「でてないよ――」


「ワイも出てないから、生産職限定のクエストやな」


「ふふん、つまり、このお茶碗を直せばいいとかそういう感じね。任せなさいな」


 クエストを受注すると、露店売りのお爺さんが頭を下げてくる。


「おお、ありがとう。だが、このお茶碗に使っている釉薬はもう売られてないんだ。月光草のエキスを使うらしいが、詳しいことは知らん」


「聞いたことないわね」


「アイリちゃんなら知っとるんちゃうか。前のイベントで植物使っていたで」


「そうね、聞いてみましょう」


 クエストを受注したLIZはこのお爺さんの怪しげな陶磁器を買った後、ホームへと戻る。ホームには古びたソファーを新品のモノと入れ替えたり、カーテンをつけたりしているアイリとユーリの姿があった。


「あら、大分様になっているわね。大変だったでしょう?」


「大丈夫。タッチパネルで家具の移動ができたから」


 アイリがタンスをドラッグすると、スッーと誰も触れていないタンスが横滑りする。


「こんなん現実にあったら引っ越し業界、大赤字やな」


「私たちも色々と買ってきたから倉庫に移しておいたわ。で、相談なんだけど……」


 LIZは露店で出会ったお爺さんのクエスト、月光草のことを話していく。この街で初めて受けるクエストということもあり、ユーリは興味深げに聞いていた。


「月光草……マーサさんのところにあった本に書いてあった気がする。確か、夜にしか咲かない花で、月の光が当たる高いところにしか生息しないはず」


「この辺で高いところってなると、ゴルドランに向かう山道ちゃうか」


「掲示板の情報だと、ゴルドランにはまだ入れないらしいけど街の前までは行けるらしいから、多分当たりかな」


「今晩、そこに行ってみましょう」


「それは良いけど、ゴーストエネミーってかなり厄介なのよね」


「そんなに?」


「ユーリちゃんと一緒に行った闇の洞窟の帰りが夜だったんだけど……」


「物理攻撃は当たっても全部1ダメ。魔法も闇耐性が高すぎて、メンタルブレイクで動き留めている間に逃げるか、聖水をまいて無理やり突破するの2択」


「聖水、1個200G……こんなのよほど経験値がうまくないと金が飛ぶだけやん」


「そのあと、アンデッド・ゴースト系のモンスターについて調べたんだけど、光魔法、ヒールでもかなりのダメージが入るってわかった。つまり、夜に出かけるならミミちゃんを連れて行ったほうが良いとは思う」


「大丈夫、ミミちゃん? おばけ」


「はい。お姉ちゃんたちのためなら、頑張ります」


「じゃあ、お願いしようかしら。月光草のことを知っているアイリちゃんもパーティーに誘って……ユーリちゃんとリュウくんはどうする?」


「う~ん、まだ来たところだし、夜間限定イベントとかもあるかもしれないから今回はパス」


「ワイはお兄ちゃんやから行くで。ところで、このクランは外部募集とかするんか?」


「外部募集?」


「わかりやすく言うと、私たち以外のメンバーを世界中に向けて募集するってこと。前のイベントであれだけ目立ったから知名度もあるし、応募してくる人は沢山いると思う。規模が大きくなればクラン対抗戦があっても有利に立ち回れる」


「ただ、中には変な奴もおる。喧嘩の火種になってクランが崩壊したなんてようある話や」


「う~ん、それはちょっと困るから、この人は信用できるって思った人だけ入れよう」


「分かったわ。もし、入れるとしても、このメンバーに相談してからやな」


「さてと、休憩終わり。夜までに模様替え終わらせるわよ!」


 LIZの号令と共に、家の模様替えが再開される。1階のキッチンにはLIZたちが買ってきた食器や料理器具が並べられ、リビングには絨毯が敷かれていく。なんやかんやといじっていくと、すっかり日が暮れていく。


「さてと、模様替えも終わったし、クエストに行くわよ!」


「じゃあ、私は有益な情報無いか探してくる。面白そうなクエストがあれば個チャするね」


 各々のパーティーはそれぞれの目的のため、ホームの外へと繰り出していくのであった。

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