最終話 新たな世界へ!
イベント終了から1分、5分、10分と過ぎていく中、運営たちはスマホでミサイル攻撃のニュースが流れていないか確認する。そして、そういったニュースが流れてこないことを見て、ミサイル攻撃の危機が逃れたことを知る。
「やったああああああああああああ!!」
「メンテ終わったら、ポイントとかスキル書・上とかいっぱい送ってもかまわん。大盤振る舞いしろよ!」
「よ~し、パパがんばっちゃうぞ。ぽちー(報酬のお金の0を1個ふやす)」
「配布素材も倍だ!」
「やれ!やれ!!」
あまりの緊張感から解き放たれた運営たちは、GWやSWの時とは比べ物にならない報酬をプレイヤーに送ったことで、年明けからお偉いさんにこっぴどく怒られるのだが、それは別の話である。
その後、東京集団昏睡事件の被害者は医師の診断で体に異常はないことが分かった。また、警察はこの事件を集団テロとして捜査するも、犯人の足取りどころか手がかりもつかめず、事件は迷宮入りし、歴史に残る警察の最大の不祥事として語り継がれることなった。その裏に隠された各国の軍事基地ハッキングは公になっておらず、もみ消し自体は容易であり、一部の関係者が行方不明になったり更迭されるだけとなった。
一歩間違えれば第3次世界大戦の引き金になりかねなかった一連の騒動は、EFOのプレイヤーたちによって阻止されたことは一部の関係者しかわかっておらず、プレイヤーたちは英雄として語り継がれることはなかった。
そんな陰謀を知らないアイリたちはメンテ明けのEFOで忘年会をしていた。しかも、運営からの招待ということもあり、出される料理は無料。未成年者がいるためアルコールはないが、世界中の料理がいくらでも出てくるということもあり、アイリはいろんな料理を食べ比べしていた。
「年越しそばならぬ年越しパスタになっちゃったよ」
「同じ麺料理だからセーフ。それに現実で食べたしょ」
「そうだね。イタリアンの次はイギリス料理かな」
「魚の頭が出ているパイみたいな奴? マズイでしょ」
「スターゲイジーパイだったけ?」
「マズイとは心外だな。きちんとニシンの下処理をすれば――」
「しなかったら?」
「…………ノーコメントで」
本場に住むArthurも返答に困るほどのモノのようだ。ここは無難にフィッシュアンドチップスを選び、食べ始める。一口は物珍しさで食べれるが、2口3口と食べていくにつれて油っぽさが増していき、味付けのないポテトが食欲を阻害させる。
「塩コショウかソースがあればおいしいかも」
「下処理してないから、生臭いんだよね。Arthurさん、本場のフィッシュアンドチップスってこんな味?」
「おおむね、その通りだ。再現率が高いな、このゲーム」
「楽しんでもらってなによりだ」
「モルガンさん、体大丈夫ですか?」
「しばらくは戦えないが、魔法を教えるくらいはできる。それはそうとガウェインも目を覚ましたぞ。あとで見舞いに行くといい」
「もっとも、聖剣は剥奪されて地下牢に幽閉されているけどね」
「余計なことを言うな、マーリン」
「おっと、これは失礼。モルガン女王陛下」
「女王ってことは……」
「後進の育成がなっていなかったからな。しばらくの間は私が地上を統治することとなった。いつまで亡霊をはたらかせるつもりだ」
「君の罪が清算されるまでじゃないかな」
「だとすればまだまだ貸しはあるな。というわけで、今後ともよろしく頼むぞ、アイリ。そして、勇敢な異邦人たちよ」
「さてと、私はまた旅に出るとしよう。これだけの魔術的な大仕掛け、時間があったとはいえガウェイン卿一人で用意できたとは到底思えない。一体、誰がガウェイン卿を唆し、協力したのか、その黒幕を探さないといけないからね」
「まだまだゲームは続くっていうわけね」
「そうだとも。君たちの世界と僕たちの世界は切っても切れない関係にある。これから先、世界の危機は続くかもしれない。だけど、君たちのような良き心を持つものがいる限り、バッドエンドは訪れない。少なくとも私はそう思っているよ」
「はい、みんなで世界を守ります!」
「よ~し、これで安心して留守を任せられるというものだ」
花弁が舞うと同時にマーリンの姿が消える。そして、運営からの年末生放送が宙に浮いたディスプレイから放送される。各キャラの設定資料の公開、プレイヤーが来る前の世界を描いたエピソード0のコミカライズの決定など情報がある中、プレイヤーの気になる情報となれば、このゲームのアップデート情報の発表だった。
まずは今回のイベントで歩き回ったTOKYOをリメイクした新MAP【荒廃都市TOKYO】として日本時間1/1 AM0時に追加、さらに他サーバーとの交流機能の追加を2周年を目処に実装が発表された。また、復刻イベントの実施なども発表されるなど盛り上がりを見せる中、EFO忘年会は閉幕を迎えるのであった。
「東京実装まであと5・4・3・2・1!」
「行くよ!」
アイリたちはどうしてTOKYOが荒廃したのかその真相を探るため、そしてまだ見ぬ出会いを求め、新しい世界へと飛び込むのであった。
ゲームなのでいくつかの謎は残しつつもこれで終了です。
約1年間の応援ありがとうございました。
新作(https://ncode.syosetu.com/n2732hz/)も投稿していくので、これからも応援よろしくお願いします