第12話 本戦2回戦
第4試合。リュウとユーリの戦いはユーリが連打を叩き込む、一方的な戦いとなっていた。リュウも時々反撃をするも、彼女からすれば雑すぎる攻撃を見てから回避することは容易であった。結局、一度も攻撃を当てられなかったリュウは時間切れまで粘るも判定負けをくらい、アイリの対戦相手はユーリとなった。
「ユーリちゃん、おめでとう。リュウくんもお疲れ様」
「良いようにやられたわ。スキルポイントを技かスキルに振るべきやな」
「私も致命打を与えられなかったからね。そこは反省。アイリ、いよいよだね」
「うん。私、負けないからね」
「こっちこそ。アイリ対策は万全よ」
2人は仲良く闘技場に呼ばれ、対峙する。そして試合開始のブザーが鳴ったと同時にユーリが仕掛ける!
「スキル【加速】!」
「はやっ!シャドーダイブ!」
「それは読んでいるよ!ソニックスラッシュ!」
くるりと身を翻したユーリは背後にいたアイリに切りかかる。だが、それを杖で防いだアイリは吹き飛ばされるもののダメージを抑えることができた。
「今度はこっちの番、スキル【急成長】」
「しまった。すでに足元に!?」
切りかかられた際に、袖口からこぼしておいた種が急成長し、ユーリを鳥かごのように閉じ込める。できたわずかな時間のうちに分身体をつくり始める。
「スピニングブレード!」
閉じ込められたユーリが回転切りで周りのツタを切っていく。籠から抜け出した彼女の目に映ったのは多数の分身体とポーションを飲み干したアイリの姿だった。
「ニチアサのヒーローから見た怪人ってこんなにも恐ろしいものなのね」
「私、怪人じゃないからね。ダークヒーロー系だから!カース、ポイズンショット!」
「毒と呪いをまき散らすヒーローがどこにいるのよ!」
ユーリが多数の毒と呪いの球を叩き落としながら、文句を垂れる。クリーンヒットはしなかったものの、さすがにこれだけの量を受ければ、耐毒のネックレスを身に着けていても毒・呪い状態になる。みるみるうちに減っていく自分のHPを見て、ユーリは速攻を仕掛ける。
「スキル【加速】、さらにスキル【根性】!」
【根性】:HPが30%以下の場合、継続ダメージを一定時間無効にする。1日に1回。
「これで毒も呪いも怖くない。そして、アイリに火力のある技は無い。一気に決めるよ、パワースラッシュ!」
スキルをつかって勢いを増し、ユーリが渾身の力を入れた斬撃がアイリに襲い掛かる。そんな彼女をアイリはその場から動かず、迎え撃とうとする。
「こっちには補填でもらったスキルポイントがあったんだよ。デッドリーブレス!」
ユーリを迎え撃ったのは毒の竜の顎。大きく口を開けたそれをユーリは驚愕の顔で見上げる。
「えっ、なにこれ……」
龍の口に飲み込まれたユーリはあっという間にHPが消失し、アイリが準々決勝に進出することが決まった。
控室に戻ったユーリは最後に使った魔法が何か問い尋ねる。次の対戦もあるアイリに気を使って、周りに気づかれないように個人チャットだが。
「あれはデッドリーブレス。スキルポイント40も消費したし、消費MP24って重いんだよね」
「効果は……?」
「毒状態の相手に特攻ダメージを与える魔法。相手が毒じゃないとほぼノーダメージ」
「毒まき散らして、毒になったら特攻ダメージ与えるって、どんだけ無駄のないスキルポイントの使い方をしているのよ」
「マーサさん直伝だよ」
「優秀すぎるわ、そのNPC。中身、運営のプレイヤーじゃないの?」
「NPCって表記出るから違うんじゃない?」
「それはそうだけど!次の対戦相手はこのゲームNo.1プレイヤーよ」
「うん、頑張る!」
個人チャットを終えたアイリはトッププレイヤーが待つ闘技場へと向かっていく。