第116話 魔神見参!
日が沈みゆく中、反乱軍の城内では正規軍が玉座を叩いていた。周りに人っ子一人もいないため、アクセサリーはすべて火力を出す仕様になっており、防御力や状態異常耐性を下げたとしても一刻もはやく勝利を収めようとしていた。誰もが自軍の勝利を疑わない中、それは突如やってきた。
「シャドーミラージュ!」
彼らの背後から突如として現れるアイリの分身。彼らの中では本物は倒れ、偽物は出払っている。それに、ここに誰もいなかったことは確認済みだ。つまり、この光景はありえないものであった。その一瞬の虚をまたしても突かれることになる【サンダーバード】のメンツ。しかも、ファランクスを使えるようなタンクは防衛に回らせたこともあり、ここにはいないのも不運ともいえる。
「にゃんで生き返っているにゃ!?」
「時間無いから一気に行くよ!カースインフェルノ!【連続魔法】でもう一度」
「アイリめええええええ!!」
ホークやクイーンたちの絶叫は黒い炎に飲み込まれ、城内に入り込んでいた攻略部隊を一掃していく。【神の奇跡】で強化され、防御力も軒並み低いアタッカー陣などひとたまりもない。とっさに無敵を張った強者もいたが、アイリの分身の波に飲み込まれて倒されていく。
『着く頃には残り時間3分もあればってところだな』
「それだけあれば十分」
『10分間の奇跡、見せてやろうぜ』
アイリが復活していることを知らない反乱軍はHP・MPが半減している苦しい中、何としてでもこの場を突破しようとあがき続けていた。だが、劣勢も劣勢。また一人、また一人とやられていく中、正規軍に囲まれ逃げ道を失ったユーリに銃口が向けられる。
「回避スキルはすべて使い切っただろう。これで終いだ!」
「まずい、避けられない!?」
エースがユーリを観戦にとらえたとき、暗い夜を切り裂いていく赤き彗星が死兆星がごとく舞い降りる遠方より飛来した無数のヒュドラダガーが彼の銃を弾き飛ばす。
「なっ……!?」
「スキあり!」
ユーリがエースに雷と炎の刃を切り付けて倒していく。足元に転がっているのはヒュドラダガーをみて、誰が来たのかは明確だった。そして、その方法も彼女が赤いオーラを身に纏っていることからもわかる。
「アイリ、やっちゃえええええ!」
「うん、わかっているよ!今、日が完全に沈んだけど、夜も私の時間だよ。ダークシャドー!」
複数のアイリが勝手に正規軍へと攻撃を始める。そして、本物のアイリもティアマトやヒュドラを出して、彼らと一緒に暴れまくる。
「戦略を覆す戦力など認めてたまるか!」
アイリが反乱軍の攻略部隊の掃討に予想よりも時間がかかったこともあり、アイリの活動時間はほんの2分程度しかない。もし、彼が制限時間のことを知っていれば、いや彼が普通の指揮官であれば、彼らがたどり着く頃にはアイリは活動限界を迎えて消滅していただろう。
だが、制限時間など知らないキングは万が一に備えて城内に待機させていた戦力とともに即座に外へと出ていく。それには1分もかからないほどの迅速すぎた対応であった。そして、彼らが外に出た時には黒い雨の中、暴れ狂うアイリの召喚獣たち。その1匹1匹が通常のプレイヤーならば切り札といえるモンスターだ。それを複数操る彼女は毒攻撃を除いても脅威でしかない。
「よみがえった魔王を叩きつぶし、勝利を得るぞ!」
「おー!!」
魔王に向かって攻撃を加えていく正規軍たち。だが、彼らは知らない。今の魔王は魔王であって魔王に在らず。聖女の血肉を食らい、無数の贄を捧げられて復活したそれは魔王を超えて魔神となった。
魔神が彼らの攻撃を受けても平然とし、焦る様子すら見せずにダークサンダーを放ってくる。
「ファランクス!」
「闇の雷がだめなら海の雷ならどう!ポセイドンサンダー!」
ポセイドンが使っていた海神の裁きよりもダウングレードしているものの、その威力は折り紙付きだ。無数の雷の矢はタンクのバフを受けたアタッカーを容赦なく焼いていく。そして、残り時間もあとわずかとなったアイリは指揮を執っているであろうキングに向かっていく。
「ここでキングさんを倒します。ヒュドラブレス!」
「させるか!旋風!」
最近は戦闘よりも指揮を執ることが多くなったキングだが、強化されたヒュドラブレスを楽々とはじき返すあたりその実力はまだ上位クラス。楽に勝てる相手ではない。刻々と迫るタイムリミット。無視して他のプレイヤーを狙うという選択肢もありかもしれないが、キングの鋭い眼光はそれを許さない。
「これまでのお前のデータはすべて把握している。これ以上の被害を防ぐため、ここで倒す!」
「それはこっちのセリフ。一発逆転の大技、ウェポンドミネーション!」
戦場には激しい戦闘の末、持ち主を失った数多くの矢や剣が転がっている。それらすべてが宙に浮き、キングに向かって襲い掛かる。その攻撃をただ指をくわえてみているわけではない。正規軍のタンクがキングを取り囲むように割り込み、飛来してくる武器を防いでいく。だが、キングからすればタンクに守られるほんの僅かな時間、アイリが視界から外れるほうが恐ろしかった。
「アイリは!」
時間にして数秒、攻撃が終わった時には彼らの目には誰もいない。通常ならば隠れた、逃げたという判断もあったかもしれないが、この状況下においてその選択肢は除外される。
「となれば、上か!」
「マルチプルロンゴミニアド!!」
上空より飛来する無数の魔槍。しかもマップ上に点在していたゴルゴーントラップを吸い取り、火力を増していく。そう、彼女は足止めするためだけにトラップをまいたのではない。自身が持つ最大の切り札の底上げをするためでもあったのだ。だが、キングもここでずけずけと負けるわけにはいかなかった。
「【防御陣形】……自身以外の防御力を飛躍的に高める。これでお前たちの生存率を高める。あとは任せたぞ」
「ユーリちゃん、後は任せたよ」
魔槍が次々に突き刺さって消えていくキング。そして、役目を終えたといわんばかりにアイリも姿を消していく。残されたのは大多数の正規軍とユーリたちが率いる反乱軍たち。
「任せたじゃないわよ。さあ、みんな!あとひと踏ん張りよ!」
「そうね、ここで負けたら男がすたるわ」
「さあ、僕たちを止めてごらん!」
上位プレイヤーの中でも上澄みともいえるユーリ、つばさちゃん、Arthurの3人は未だに健在。それに対し、正規軍はまだ数で押しているものの全体的な指揮を執るプレイヤーはおらず、しかも上位プレイヤーはほとんど残っていない。
「こ、こんなの勝てるわけがねえ」
「ひるむな!数は押しているんだ。それにMPが尽きれば、俺たちにも勝ちの目はある」
「そうはさせないよ。マジックリカバリー!」
シロウが周りにいる上位プレイヤーに対してMPの回復を行っていく。そのことに気づかない正規軍ではない。優先してシロウを倒そうとしたとき、リュウがその間を割り込む。
「ナイス、タンク!」
「そう簡単に倒されてたまるかって話や!」
「そういうこと!」
リュウが時間を稼いでいる間に追いついたユーリが迎撃へと向かう。前衛はArthurが主体に、それより少し後方でつばさちゃんが見える範囲での指揮を執りつつ迎撃、ユーリが全体の指揮とりつつ遊撃とそれぞれの役割分担がなされている。烏合の衆となった正規軍が統制の取れた反乱軍にかなうわけもなく、イベントは反乱軍の勝利となった。
イベント参加者全員にスキルポイント100ポイント、スキル書1個付与しました
勝利した反乱軍にスキルポイント50ポイント、スキル書・上1個付与しました
称号:【反乱軍を導いた者】(天界にいる一部のNPCからの心証がよくなる)
反乱軍が勝利したことで特定エリアにいるモンスターのレベルが低下します
そのほか、多数のアイテムやお金が入って喜んでいるとショートムービーが流れる。どうやらストーリーに進展があったようだ。興味のないものはスキップするが、アイリたちは飛ばさずじっくりと見始める。
「どうやら、プレイヤーたちの力を侮っていたようだ」
「これで分かったであろう。我が失敗を重ねた理由も」
「だが、聖杯の力があれば……」
「それはお前が仕える神の復活で使うべきだろう」
「では、サタン様を復活させるときは――」
「我ら二人で時間を稼ぐ必要があるということだ」
怪しげな男とバエルの会話が流れ、9月中旬???討伐レイドイベント開幕決定の文字が映し出されるのであった。
アイリ Lv50(イベント終了時)
種族:ハイエルフ
職業:黒魔導士
HP404/190(+214)
MP970/440(+530)
攻撃:304/106(+198)
防御:397/56(+341)
知力:460/162(+298)
敏捷:449/108(+341)
運:156/58(+98)
残りスキルポイント:700
装備品
メイン武器:邪龍の杖(最大MP+200、知力+200、召喚獣の攻撃力アップ)
サブ武器:ヒュドラダガー(最大MP+100、攻撃+100、魔法扱いで毒攻撃)
頭:黒魔導士の帽子(最大MP+20、HPを最大MPの1/5の数値分アップ)
服:黒魔導士のローブ(最大MP+20、防御を最大MPの1/4の数値分アップ)
脚:黒魔導士の靴(最大MP+20、敏捷を最大MPの1/4の数値分アップ)
首:冥界の首飾り(HP、MP含む全ステータス+20、夜・闇状態だと上昇値が倍になる)
右手:魔王の指輪R(最大MP+100、防御・敏捷・運を魔法の数×2の数値分アップ)
左手:魔王の指輪L(最大MP+100、攻撃・知力を魔法の数×2の数値分アップ)
所持スキル
【状態異常耐性(中)】【状態異常成功確率アップ(小)】【闇魔法Lv3】【外道】【ギャンブラー】【富豪】【精神攻撃Lv1】【時間耐性(小)】【精神耐性(中)】【影操作】【急成長Lv2】【ジャイアントキリング】【呪毒】【毒耐性(小)】【夜目】【逆境】【黒魔導】【ヒュドラ毒】【PKK】【植物操作】【闇の力】【遠視】【透視】【暗黒の知識】【固定砲台】【非道】【話術】【戦術眼】【乳海】【魔力放出】【地魔法Lv1】【頭脳明晰】【精密射撃】【精霊の加護(闇)】【精霊魔法】【花の祝福】【黄泉がえり】【反撃の心得】【上級魔法知識】【射出】【高速分身】【呪い耐性(小)】【火魔法Lv2】【ティアマトの権能】【水魔法Lv1】【光魔法Lv1】【ヒュドラの主】【ヒュドラの知識】【ヒュドラの権能】【隠密行動(小)】【連続魔法】【ポセイドンの権能】
所持魔法・技
【シャドーミラージュLv2】消費MP32
【シャドーアタックLv2】消費MP2
【カースLv2】消費MP4
【ポイズンショットLv2】消費MP4
【ポイズンミスト】消費MP12
【メンタルブレイク】消費MP8
【シャドーダイブ】消費MP48
【デッドリーブレスLv1】消費MP24
【コンフュージョン】消費MP16
【エナジードレイン】消費MP16
【死霊王召喚】消費MP80
【ケルベロス召喚】消費MP60
【シャドーロック】消費MP40
【ヒュドラブレスLv2】消費MP52-10
【プラントクリンチLv1】消費MP12
【ダークエンチャント】消費MP30
【ダークサンダーLv1】消費MP64
【ファフニール召喚】消費MP300
【ダークストームLv1】消費MP68
【アクアプレッシャーLv1】消費MP32
【ハイグラビティ】消費MP100
【ミニマム】消費MP8
【カースインフェルノ】消費MP88
【カースバリア】消費MP64
【ダークウェポン】消費MP20
【パワードレイン】消費MP60
【マジックドレイン】消費MP60
【ブラッディミラージュ】消費MP0、HP25%消費
【ヴェノムブレスLv1】消費MP44
【ティアマト召喚】消費MP200
【ワイバーン召喚】消費MP80
【フレアストーム】消費MP68
【ヒュドラバイトLv1】消費MP40-10
【ヒュドラズアイ】消費MP60-10
【ダークブリザードLv1】消費MP64
【ダークシャドー】消費MP64
【ダークインビジブル】消費MP100
【ウェポンドミネーション】消費MP60
【アビスレイン】消費MP90
【ポセイドンサンダー】消費MP92
【ゴルゴーントラップ】消費MP40




