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毒毒影分身は最強です~状態異常特化の私はVRMMOを楽しむ~  作者: ゼクスユイ


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第114話 大型クラン連合の逆襲

 北ルート、湖ルートの激戦を終えた反乱軍は城内へと戻ると、南ルートから戻ってきたユーリたちが設置されたソファーなどで休んでいた。


「ユーリちゃん、早いね」


「こっちはシロウのテレポがあったからね」


「といっても、1日1回限りで転移先がスタート地点(通常時は最後に立ち寄ったギルド)しか選べないんだけどな」


「そのおかげでこっちの戦力は大きく削られずに撤退できたんだから問題なし」


「だったら、私……じゃなくて俺はもうこの格好解いていいよな!」


 金髪のカツラを着て、つばさちゃんの手によって軽くメイクした女装のクロウが顔を赤くしながら叫ぶ。彼にはアイリから聞いた黒魔導士の専用装備の入手方法を伝える代わりに協力しているのだが、不特定多数の前で戦うのはどうにも恥ずかしいらしい。


「あら、ダメよ。イベント中はその恰好っていう約束でしょ。男の娘なんだから、二言はないわよね」


「もちろんだ!」


「そうでなくちゃ。さてと、初戦は計画通りすすんだけど、こっちの手の内は大分とばれたわよ。次はこう上手くはいかないでしょうね」


「削ったとはいえ、こっちの戦力が足りてないのは事実だし、防衛戦で有利に立ちつつ迎撃したいところ」


「押し切られたりしない?」


「アイリちゃん、古来より砦や城の攻略戦には3倍の戦力が必要なの。数の差を広げる【にゃんにゃんクラブ】に大打撃を与えた上で2倍の戦力ならこちらが少し有利よ」


「といってもゲームだから、どこまでこの常識が通用するかは分からないけどね。アイリには自軍エリアであの魔法をばらまいてほしいかな」


「北ルートの帰り道に使っておいたから、今度は南ルートだね」


「護衛くらいつけておきなさい。一人でいるとこちらに潜入しているプレイヤーに狙われるかもしれない」


「威力偵察に扮したいから、同伴するのは足の速いプレイヤーだね。つばさちゃん、ここの指揮、まかせても大丈夫?」


「お安い御用よ。【リベリオン】のスカウト部隊は潜入捜査中だから同伴できない分、任せなさいな」


「OK。少し休憩したら、私とアイリ、Aoi、Chrisの4人で南ルートの様子を伺おう。今回は戦わずに即逃げ」


「「「おー!」」」


 元気よく手を突き上げて、次の作戦に備える。城内では設備を生産していたLIZの他、釣りや料理など非戦闘の趣味をしている人たちが広い台所でいくつかの手料理を作っており、激しい運動をした後のプレイヤーにおなかを満たしていた。


「ゲームだから腹減らないけど、やっぱ食いたくなるよな」


「そうそう、ウチのかーちゃんもこれくらい作ってくれたらなぁ」


「悪かったわね、タカシ!」


「げっ、かーちゃん!?」


 耳を引っ張られて、城の奥へと引きずられる母来襲イベント(イベントではない)が見られるなど、笑いながら過ごして英気を養っていくのであった。



 一方、そのころ、大敗を喫した大型クラン連合のプレイヤーの顔は暗い。戦力は倍、予備戦力を温存していたとしても、数は常にこちらが上回っている。勝てて同然の状態で、手痛いダメージを負ったのだから当然ともいえる。


「正規軍なら、楽に勝てるんじゃなかったのかよ」


「お前はダメージ受けまくってヒーラーに負担をかけただけだろう」


「なにを!そういうお前こそ、一人も倒していないくせに」


「タンクが倒せるわけねえだろうが!」


「この足引っ張りの糞タンク!」


「雑魚剣士」


「なにを!」


「やるのか!」


「やめな!」


 ホークがクイーンからムチを借りて、地面にバシッとたたきつけて2人の喧嘩を止める。何事かと近くにいたプレイヤーも遠巻きに観戦する。


「ここで争うくらいなら、敵陣に突っ込んでいって一人でも倒せばいい。そっちの方がチームのためってやつさ!」


「いや、それは……」


「この根性なしが!自分の死を悟ったライチョウは周りを逃がすために勇敢に戦ったって聞いたよ。あんた達にはそういった覚悟もない、そうだろう!」


「俺たちは弱いし……」


「弱いなら弱いなりの戦いをしな。フォアザチーム、バラバラに戦っていたら勝てるものも勝てなくなる」


「……ああ、わかったよ」


「そうだな」


 しぶしぶといった様子で二人のプレイヤーが部屋から出ていく。納得したのかは分からないが、この場を収めることができてよかったと思いながら、ホークはキングのところへと向かう。険しい表情をしながら、マップを見つめているあたり、思うところはあるようだ。


「ホークか。次の作戦内容のことを聞きたいのか」


「まあね」


「反乱軍が考える一手としては、こちらの動きを探りつつ少しでも有利になる防衛戦を挑みたいはずだ。本来ならば、こちらも穴熊をきめたいところだが、そろそろプレイヤーの不満もたまってくる頃合いだろう」


「ああ、さっきの失敗でいらだっているよ」


「耳が痛いな。本物かどうかは不明だが、先ほどアイリたちが出発し、南ルートに向かった。足の速いメンバーと数が少ないあたり、パトロールか威力偵察だろう」


「北ルートはがら空きかい? だったら、そこから攻めればいい」


「ああ、だからこそ、南ルートに行く」


「正気かい? 昼間は数の差を埋めるシャドーミラージュがあるんだ。攻めるなら夜かアイリのいない北に向かうのが筋だ」


「そう思わせるのが敵の策略かもしれない。それに、本物であれ偽物であれアイリを打ち倒す絶好の機会ともいえる」


「でも、護衛がいるんだろう? 策はあるのかい?」


「問題はない。多少の犠牲を払ってでも、ここで数の差を埋めてくるアイリを仕留める!」


 キングはホークに作戦内容を伝え、指示のあったメンバーでアイリたちのいる南ルートへと向かった。



 南ルートの自軍エリアを少し過ぎたあたりまできたアイリたちはケルベロスやフレキたちと共に敵を警戒しつつも、とある作業をしていた。


「ふぅ~、設置終わり」


「おつかれ。さてと、帰ろうか」


 一通りの作業を終え、帰路につこうとしたとき、一発の弾丸がアイリに直撃する。並みの魔導士よりも防御が高いため、さすがに1発で落ちるわけではないが、何発も喰らえば死は免れない。


「この攻撃はエースさん!」


「マサトさんの長距離狙撃を警戒していたけど、それよりも長い!逃げるよ!」


「うん!」


 ユーリが緊急用ののろしを上げ、アイリがケルベロスに乗ろうとしたとき、エースの放った弾丸がケルベロスを貫き倒れる。先の攻撃と言い、長距離狙撃によるアイリの暗殺が彼らの目的のようだ。ここまで正確に狙ってくるなら、背中を見せる方がリスクなのではと思うほどに。


「いくら長距離狙撃といっても、射程には限度があるはず。そこまで逃げ切れば勝ちよ!」


「それなら空を飛んで――」


「馬鹿、そんなことしたら狙い撃ちされるだけよ」


「殿は私がつとめます」


 盾に切り替えたAoiがアイリの背後を守りながら逃げ回っている中、エースはスコープを除いて次の攻撃対象を決めていた。


「直撃コースを防ぐ位置にいるか、こいつは逃げられるな。だが、足止めはさせてもらう」


 スナイパーがいるという圧力だけで彼女たちの飛行能力を奪ったエースが狙ったのは足元。時間を稼げば、足の速いプレイヤーなら、彼女たちに追いつける。直撃しなくても、それまでの時間を稼げばいいのだ。


「甘いところがあれば容赦なくぶちかますけどな」



 だんだんと狙いが甘くなっていくエースの狙撃を掻い潜りながらも、味方との合流を急いでいく。だが、潜伏していた忍者部隊に囲まれたこともあり、戦闘は不可避といったところだ。


「潜入している部隊はいるって聞いたけど、これだけの人数をさくってことは何としてでもアイリを倒したいみたいだね」


「やられるつもりはないよ。シャドーミラージュ!」


「確かに分身は脅威。だが、手の内さえわかっていれば!風遁・竜巻切り!」


 自身の体を竜巻のように回転させて、分身をかき消しながら突っ込んでくる正規軍の忍者。とるのは大将首。そういきこんでいる忍者だったが、足元に突如として魔法陣が浮かび上がる。


「これはトラップ!?」


「これが私の新しい魔法、ゴルゴーントラップ」


 足元から石化が始まり、首から下が完全に動かなくなってしまう。アイリといえば毒・呪い・やけどの3点が頻繁に使うものであり、彼らもまたそれらを対策していた。その点に関しては間違っていなかったといえよう。だが、石化については使用プレイヤーが居なかったこともあり、対策をしていなかった。


「このような魔法があったとは、くっ……無念」


「ここで倒れてね……と」


 石化が解けないうちに忍者部隊を倒したアイリたちだったが、忍者部隊の足止め自体は成功し、正規軍の先発隊が反乱軍のエリアに侵入してアイリたちと会敵する。


「援軍が来るまであとわずか、頑張って耐えるよ!」


「ここ気合の入れどころ!」


「ライチョウの仇を取るよ!」


 正規軍には仲間のテイムモンスターに乗せてもらったホークが指揮をし始める。先陣を切ったのはジョーカーの仇に燃えるナイフ使いのジャックだ。


「ここは通しません」


「ふん。片手間のタンクなど通用せんぞ。カゲロウステップ」


 ジャックがAoiのわきを通り抜け、アイリに肉薄する。他の正規軍の対処をして反応が遅れた彼女に差し迫った刃は手傷を負わせることに成功する。


「シャドーダイブ!」


「その技は通用せんといったはずだ!クイーン!」


「あいよ!ソーンズロック!」


 影から飛び出したアイリに茨が幾重にも巻き付いて、その動きを封じる。だが、すぐさま茨の影を利用してダークウェポンによる一斉攻撃で茨がズタズタに引き裂かれる。


「逃さんぞ!」


「それはこっちの台詞。1vs2で戦わせる義理はないからね」


「ユーリ、貴様の相手は後にさせてもらう!【バックアタック】」


「アイリ!」


「死霊王召喚!」


 アイリの周りに死霊の王と配下のゴーストがひしめく中、アイリの背後をとったジャック。だが、彼女の従順なしもべである王がそれを許さず、主を押しのけて守る。


「なにっ!?」


「王様、ありがとう。行くよ、【急成長】!」


 お返しと言わんばかりにクイーンの茨を利用して、ジャックの身動きを封じる。そこに叩き込まれる死霊たちの大量の呪詛。とらえられたジャックにそれを躱すすべはなく、リタイアに追い込まれるのであった。


「ホーク、石化トラップは?」


「問題ない。踏んだプレイヤーは全員解除したよ。おかげで倒しきれてないけどね。そっちは?」


「ジャックがやられた。そろそろ潮時かね」


 ジャックがやられ、反乱軍側の援軍も合流し始めたことで、クイーンとホークは目を合わせて撤退をし始める。反乱軍の被害は0に対し、向こうは偵察隊を失ったのだから大損害。間違いなく大勝利だと言える。ここまでは。




 反乱軍が連勝したことで、少し気が緩んでいたころ。彼女たちが気づかれないように上空を飛来していたマサトはキングの作戦を思い出していた。


(最初の狙撃でスナイパー役は俺ではなくエースだと意識を植え付ける。そして、乱戦に持ち込み、俺のことを意識の外から外す。そして囮というには本気に近い部隊で本物かどうかの識別をしつつ、偽物ならばそのまま勝てばそれでよし。本物でたとえ負けても気のゆるみを引き出せる。本当にこんなのが敵の司令官でなくてよかった)


 絶対に外すことができない一射は反乱軍の誰かが警戒をする前に放たれなければならない。そして、それは避けようのない、防ぎようのない一撃でなければならない。となれば、マサトがとる攻撃は一つだ。


「精霊魔法、月女神の一射!」


 マサトから放たれた最大の一撃は何も知らないアイリへと突き刺さり、周りにいたAoiやChrisたちもそのHPを0にした。だが、この作戦においてマサトを守るプレイヤーは誰もいないという弱点がある。ワイバーンに乗ってきたユーリが目を血走らせながら、彼に迫ってくる。


「マサトぉぉぉぉぉ!」


「ユーリは回避スキルが多いですからね、当たらないのは当然。アイリを道連れにできただけでも大金星でしょう」


 反撃の矢を撃つよりも早く、切りにかかったユーリを止める手段もなく、マサトのHPは0となった。

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