プロローグ
20××年、数多くのヒット作を生み出してきたゲームメーカーZONYから【Endless Frontier Online】という初のVRMMOが発表された。これまで発売されたVRゲームよりも、よりリアルな質感、インターネットを通じて世界各地のプレイヤーとつながることができるシステム、無限ともいえるほどの膨大なスキル等、満を持して作られたそれは世界中のゲーマーから注目され、予約が殺到された。
そんなことも知らずに夜遅くまで宿題に取り掛かっていた女子高生の葛城愛理が目を覚ます。
「あつ!? レポートは!終わってる!ヨシ!これで3連休満喫できるぞ!!」
朝の気持ちい日差しに導かれるように家の窓から街を眺めていると人の行列ができていることに気づく。
「今日は何かあったけ? まあ、いいや。なんか面白そうだから行ってみよう」
身支度を整えた愛理がよくわからない行列に向かっていくと、Endless Frontier Onlineセット販売抽選会最後尾と書かれたプラカードを持ったお兄さんが立っていた。
「エンドレスフロンティア……確か悠里ちゃんが欲しがっていたゲームだったね。穴場に行くって言っていたけど、無事に手に入るかな」
もし、ゲーム好きな悠里が手に入らなかったら可哀そうだからと、自分も並んでみて手に入ったらあげようと思った。こういう時の運には自信があった。整理券には234と書かれており、開店2時間前ですでに200人超という人が並んでいることに驚く。
「167、199、234、309……」
そして当選した番号が店員に呼ばれる中、自分の整理券の番号ともう一度見比べる。間違いないことを確かめる。ゲームを買った愛理は自宅で悠里に電話をしてみる。
「悠里ちゃん、例のゲームって手に入った?」
「モチのロンよ!なに、愛理もゲームやりたいの? でも、このゲームってアカウント複製できないから貸し借りできないのよね」
「実は私も手にはいちゃって……」
「マジ!? 一緒にやろう!」
「うん。でも宿題わすれちゃあ駄目だよ。ただでさえテスト怪しいんだから」
「うげえ、嫌なこと思い出させないでよ。まあ、さすがに初日は混んでて誰が誰だか分からないだろうから、ゲームで会うのは明日ってことで」
「うん。それまでに悠里ちゃんをあっていわせるよう頑張るね」
「ほほう。ゲーム初心者の愛理が私に驚かせるとな。現実では愛理が優等生でも、ゲームの中では私の方が優等生ってことをお忘れなく」
「それじゃあ、明日10時にゲームで」
「了解。愛理がどんなふうに育ててくるか楽しみにしておく」
電話を切った後、さあやるぞと意気込み、ゴーグルをかぶってゲームを立ち上げていく。
白い空間にポツンと愛理がたっていると、小さな妖精が愛理に近づいてくる。
「私はこのゲームで皆様のサポートをしているナビと言います」
「それはどうも。私、葛城愛理と言います」
「それは本名でしょうか?」
「そうですけど?」
「申し訳ありませんが、プレイヤーネームに本名を使うことは禁じられています。プレイヤーネームを教えてください」
「つまり、ニックネームってことだね。アイリとかじゃあ駄目?」
「アイリですね。登録……認証OKです。次に種族を決めてください。種族は後から変更することはできません」
「種族は人間、エルフ、ドワーフ、魔族の4つで変更不可と」
人間……オールマイティな種族。すべての能力が平均的。
エルフ……人間よりも高い魔力を持つ反面、体力面で劣る
ドワーフ……人間よりも体力面で勝るが、魔力面で劣る
魔族……人間よりも体力・魔力面で勝るが、NPCから嫌われた状態になる
「私自身、体力ないし、運動音痴だし、デメリットは被ったほうが良いよね。エルフでお願いします」
「次に職業を選んでください。職業はレベル20以上になると転職や上位職へのランクアップが可能になります」
「職業……戦士、魔法使い、盗賊、商人、僧侶……色々とあるけど、エルフの特徴を生かせる魔法使いでお願いします」
「職業:魔法使い、確認しました。キャラクターメイキングに入ります。メイキングの姿がゲーム中の貴方の姿になります。なお、現実の姿から大きく外れたメイキングはできないのでご了承ください」
画面に映し出されたのは緑色の服を着た自分にそっくりな女の子。ただ、髪の色は現実とは異なり金色、耳がとんがっており、エルフらしい要素も見受けられる。
「ロングヘアーもあこがれているから、ゲームくらいは……ヨシ」
「下記の内容で間違いが無いか確認をお願いします」
アイリ Lv1
種族:エルフ
職業:魔法使い
所持金5000G
HP20/20
MP40/40
攻撃:3
防御:3
知力:9
敏捷:5
運:5
「次にスキルポイントを渡します。これらのポイントを使って初期スキルを早めに習得するもよし、ステータスを上げてもよし。貴方の自由に任せます」
(手に入ったポイントは100。スキル習得するには最低でも20ポイントが必要。そして、ステータスを1あげるのに1ポイント)
膨大な実装スキルの内、運営から厳選された初期スキル。そして自分の5しかないステータスの底上げ。さて、どうしようかと考えようとしたとき、一つの疑問点が湧いた。
「自由ってことはまだ使わなくてもいいよね」
「もちろんです。すべての判断はプレイヤー自身の手に委ねられます」
「よし、ポイント保留!最低ステータスでどこまでいけるか挑戦。ポイントの使い方はそこから決める」
「最後に初回限定版特典とスタートアップキャンペーンのアイテムをカバンにいれました。メニュー画面は念じることで出ます」
アイリが念じると空中にメニュー画面が表示され、セーブやステータスの確認、プレゼントの受け取りができるようだ。その中にはカバンと書かれたパネルがあり、タッチするとアイテムや装備品の欄が表示される。
「初めてのプレイヤーにランダムスキル書を1個贈呈します。アイテム欄から1個選択してください」
「ランダムスキル……発動」
「アイリ様にランダムにスキルがつきました。ステータスからスキルを確認してください」
「ステータスはこのボタンと……状態異常耐性(中)? 初期スキルが小だったから1ランク上ってことかな。ラッキー」
「プレイヤーアイリ様、良い旅路を」
真っ白な空間からアイリの姿が消えるのであった。
落ちこぼれが完結するまでは不定期で更新します