私の好きな人を奪い続け、とうとう婚約者まで奪った妹を許すのももうすべて疲れました。完全な他人になれるのならその道を選びますわ。送られた辺境修道院で私は聖女と呼ばれるようになったのですが
「イレーヌ・マクミリアン、お前は妹をいじめて階段から突き落としたそうだな!」
「……」
「その罪においてお前と婚約破棄をし…」
「はいわかりました」
「え?」
「わかりましたと申し上げました。妹を階段から突き落としたりはしませんが、婚約解消は受け入れます」
かわいくない女といわれる王太子の婚約者でした私は。
妹のほうが華があって愛らしいとよく言われたものです。
かわいげがないほうが姉、かわいいのが妹と…。
私はこれまでにも好きになった方や恋人を妹に奪われてきました。
かわいい彼女に誰もが夢中になりました。
私はこれまでそれを気にしないふりをしてきました。妹のほうがかわいいのだから仕方ないと。
私の母の形見を取り上げる行為も許してきました。
私たちは互いに母が違いました。私が正妻、妹は妾の娘でした。
でも私は妹はたった一人、可愛いと思った時もあったのです。
「辺境の修道院送りとする!」
「はいそれが望みなら受け入れます。でも私は妹をいじめてはおりませんわ」
殿下が言い訳をするなと私を怒鳴りつけました。
妹のマリナがにやにや笑ってこちらを見ています。
かわいそうなお姉さまと言ってクスクスといつものように笑うのです。
私はこれと縁が切れるのなら解消でもなんでもいいと思うほど疲れていました。
辺境送りの馬車の中で、侯爵の父なら私と縁を切るだろうと踏みました。
別に侯爵令嬢という肩書がなくても、食べてはいけるかなと思うのです。
辺境の修道院は廃屋に近く、数人修道女がいるだけでした。
「…あなた様のような方がこんな場所に」
罪をおかしたものが送られる場所だと聞きましたが、私は得意の魔法で汚れ切った部屋の中を掃除し、そして今まで隠してきた召喚魔法を使いました。
「おおこれはすごい!」
私も原理がよくわからないのですが…私は異世界からものを召喚する力があり、食べ物やそれに薬、それにある程度の大きさの品物なら出すことができたのです。
魔道コンロとよく似たものものなどもありました。
使い方がわからぬものもありましたが…。薬や食べ物は高く売れました。
それに掃除道具、洋服といった私たちでも用途がわかるものが出てくることもあり、それはかなり重宝しました。
「使い道がわからないものが困るのよね」
「いつかわかるかもしれませんわよ」
「しかしどうしてこの力を隠されていたのですか?」
「実際、無限になんでも出せるのなら出せだせって妹に絶対強制されてましたから」
私は完全に侯爵の家から縁を切られました。でもあの妹と暮らすより今はとても幸せでした。
炊き出しなども行うようになり、薬や食べ物を定期的に配る私はいつの間にか聖女と言われるようになり…。
「聖女様、お願いだ。戻ってきてくれ!」
なぜか…殿下が修道院にやってきて私に土下座をして頼んできたのです。
実は、陛下に内緒で婚約解消をおこない、外遊から帰ってきた陛下に叱責された殿下、しかも聖女といわれる私の評判を聞いて、陛下が私と再婚約できないのなら廃嫡をするといったそうなのです。
「あれとは別れた!」
「…お断りしますわ」
私は炊き出しの鍋の火加減を見ていたのですが、この方邪魔でしたわ。
私は聖女様を連れて行くなと皆が騒ぐのを見て、どこにも行きませんわとにっこりと笑って言います。
「…しかし」
「妹とお幸せに」
妹はどうも妹いじめをする姉に階段から突き落とされたという嘘がばれて令嬢の身分をはく奪され、牢屋に入れられまして、父は所領が没収されたそうです。
ええそこまでしたから許してくれということらしいですが許しません。
「どうぞ妹とお幸せに」
殿下が付きまとうので、迷惑だと陛下に手紙を送っておきましたわ。城に連れ戻され廃嫡されて、一生涯幽閉されるそうです。
だって勝手に婚約者と婚約破棄をしたら普通こうなりますわよねえ。
私はこの生活を気に入ってますの、だってこの力のことをばらす方が修道院の中の人にはいませんもの。
神の力の代行者などといわれていますが…。
妹と縁が完全に切れてよかったですわ。
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