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聖女は無限に湧いて出る

作者: nullpovendman

「お姉さま、実は私が真の聖女です!」


 久しぶりに会った妹は、大声で叫んだのだった。


 ただの町娘だった私が蝶のようにひらひらとした服を着せられ、聖女の歴史について学ぶ機会を得たのは、ひとえに私が聖女だと判明したからだった。

 聖女というのは、国の中でも神聖結界の才能に優れた女性に与えられる称号なのだ。

 神聖結界の才能は血筋に関係ないので、定期的に検査が行われ、一定以上の才能を持つものが王宮に招かれ、聖女としての教育を受ける。

 そして、神聖結界を張り続けて国を守る仕事をこなしていくのだ。


 聖女は、その役目の重要性から、王子や高位貴族と結婚することが多い。

 才能が血筋に関係はないと言っても、聖女の血を取り込んでおけば子孫に聖女が生まれるかもしれない。そうなれば、政治的な力を強められるかもしれないと考えているのだ。

 まあ、ゲン担ぎみたいなものだ。


 ゲン担ぎで結婚させられる側はたまったものではないと思うが、平民が見目のいい王子と結婚するというのは一種の夢物語みたいなものであったし、歴代の聖女は幸せだったと伝えられている。


 これまで、どういうわけか、ずば抜けた神聖結界の才能を持った女性は国で一人だけしか現れないので、聖女も毎回一人だけが選ばれたのであった。


 ただ、今回は、私と同程度の才能を持つ女性が見つかったということで、王宮がその女性を招いた。

 そして、顔合わせの場所である大広間に現れたのは私の妹、ジェシーだった。


 しかも、妹は自分を「真の聖女」と名乗っている。

 私はただの聖女ということだろうか。

 それとも偽物か?


 混乱する私を前に、妹はさらに言葉を続けた。


「お姉さまより、私の方が聖女に向いています!」


 妹は私よりも見目が良く、愛嬌がある。

 聖女として人前に出る機会に関して、ということであれば、妹の方が向いているかもしれない。


 妹は勝ち誇った顔をしていた。

 よっぽど姉が聖女に選ばれてくやしかったのだろう。

 自分も選ばれたとあれば、出し抜く気でいるに違いない。


 そんな妹の未来を打ち砕いたのは、意外にも私ではない。

 ジェシーの後ろから現れた、私の友人マリアンヌだった。


「ジェシーが真の聖女なら、私はさしずめ至高の聖女といったところかしら」


 ジェシーの後ろから現れたマリアンヌは強気な態度で発言した。

 マリアンヌは私の友人であるが、妹とはあまり仲が良くなかった。

 どちらも勝気なので、顔を合わせるたびに喧嘩をしているのだ。


 それにしても、今代の聖女は三人もいるのか。

 珍しいこともあったものだ。


 そう思っていた時期が私にもありました。


 マリアンヌの後ろから、さらに女性がやってきた。

 あれは妹の友人、リィンちゃんだ。


「あ、あの……私は究極の聖女だ……そう……です……」


 リィンちゃんはジェシーと仲がいいのだが、ジェシーとは対照的に内気な少女でかわいらしい子なのだ。

 まさかリィンちゃんも聖女になるなんて。

 ん? リィンちゃんの後ろからも続々人が来ているな……?


「ちょっと待ちなさい! 私を差し置いて聖女の話をしないでよ! 私が火の聖女よ」


 華美な服装だということからして、貴族なのだろうとは察しが付くが、火の聖女は知り合いではない。


 火の聖女の後ろからもどんどん人が来る。


「私は水の聖女」

「ワタシは土の聖女ダヨー」

「木の聖女。よろしく」


 属性とかあるんだ。

 あ、魔法の五属性か。次は金かな。


「うちは金の亡者や!」


 うん。当たった。

 金のせいじ……亡者?

 それからもどんどん聖女は現れる。


「風の聖女よ」

「光の聖女」

「闇の聖女ですわ」

「聖女の中の聖女と言えば、わたし」

 ……


 続々と聖女が現れる。

 犬の聖女や猫の聖女、男の娘聖女などが現れた。

 最後に現れたのは、全身黒ずくめの女性だった。


「私は魔を司る者。魔の聖女とお呼び」


 それは魔女では?


 こうして大広間が聖女でいっぱいになったころ、執事のセバスチャンさんが口を開いた。

 セバスチャンさんは物腰がやわらかく、みんなのお父さんみたいな人だ。

 王宮の人々もみんなが慕っている。


「これだけの女性が全員聖女になれるのでしたら、私も長年の夢をかなえても許されるでしょう」


 なんだろう。聖女と結婚したいとかかな?


「ずっと黙っていましたが私も聖女の才能があるのです。お父さん聖女とお呼びください」


 ……。お父さん(セバスチャン)も聖女だった……?


 聖女がこれだけ現れて、王宮はどうするのだろうか。

 セバスチャンさんの爆弾発言のあと、しん、としたところに、第二王子のベイン殿下が姿を見せた。

 聖女たちは、結婚相手筆頭候補である、ベイン殿下の発言を待つ。


「これだけ聖女がいるのだが、魔道具による判定では才能は全員同じ値を示していた。ついては、それぞれに聖女について学ぶ機会を与え、無事に試験を突破したものを聖女としよう。褒賞としては、そうだな、聖女と認められたものは、結婚相手を指名できることとする」


 こうして集まった、三百人の聖女とセバスチャンさんは、なんと全員試験を合格し、二百九十八人がベイン殿下との結婚を望んだ。

 ベイン殿下は国で一番の美丈夫なので、さもありなん。


 私は町娘だった頃に思いを寄せていた幼馴染と結婚した。

 マリアンヌは、なんとセバスチャンさんと結婚した。


 聖女の仕事は皆で分担しているから、負担も少ないし、なんなら神聖結界は歴代最強の硬さを誇っている。

 毎日楽しい!



 なお、ベイン殿下は結婚相手が多すぎて破産した。


 終


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― 新着の感想 ―
[一言] 男の娘聖女kwsk! …と思っていた時期もありました。 聖女の無限増殖とかなろうならばまぁまぁ異常事態かもしれませんがあり得る事ですしプリキュア大集合の映画版みたいなものだと納得していたので…
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