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随想

記憶が続かない君。正直ほっとした。普通の感覚が自分に残っていたのにほっとした。怖いと思える自分にほっとした。

君は優しかった。でもいつしか誰もが君を良い様に扱うようになっていって、僕はそれが許せなかった。許せる許せないなんて、その時の彼女と僕の距離感ではおかしなこと。でもどんな関係も、きっと他人事とは思えないから始まる。

初めてあった日、君は長い髪を低い位置で2つ結びにしていた。髪が風に靡いた。

僕は彼女と待ち合わせをしていた。友人が取り持ってくれた。その友人のことは個人情報を顧みてKとしておく。あぁ、ちなみにKは女子だ。同じクラスの女子。彼女もKも、初めて同じクラスになった。僕はそれまで彼女の顔すら見たことがなかった。今思えば不思議でならない。

冬の始まりの寒い日、想雷(そら)は駅前広場の木を囲むベンチの前で佇んでいた。マフラーが風に揺れて、暖かそうで寒そうだった。

僕はこの彼女をきっと忘れない。いや。忘れるものか。

だから彼女にもそうあって欲しいと思った。どんな手を使ってでもいいから穢い姿であってもいいから彼女の記憶に刻まれたかった。

狂気というのはきっとだんだん生まれるものだ。僕はそれを解っている。それをもってして、行使している。宙ぶらりんの僕を繋ぎ止めるのは狂気だけ。聴きたくない音から耳を塞ぐように、僕は背後からイヤホンを着けた彼女の肩を叩いた。彼女が見上げて微笑んだ。灰色の空はたぶんきっと、彼女のような眼差しで僕の醜態を薄目で見ていた。

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