追想
雷の閃光が夜の街に跳ねる。空が罪を重ねた。
空が罪を重ねたら、水は蒸発することを拒むだろうか。
あり得ない。虚空に消えていくことを厭わない、そんな君を僕は知っている。
貧しい家だった気がする。妹は幼くて、僕の名前を呼べなかった。僕は妹の声を聴けなくて、妹は沼に沈んだ。
それからだ、僕がなにかを満たさなければならなくなったのは。
義務が僕を潰す。
義務は願いと同一なのだ。
果てるまで、僕の遊びは続く。
深く随行する、と書いて深随。僕の名前。僕にはもう一つ名前があって、累という。累ねて行く。僕は、累と深随の間にある。
名字は分からない、教えない。どうでもいい。僕には昏い過去がいらない。
「貴方、こんなに罪を背負っていたのね。重くなかった?」
鈴が跳ねるような音で彼女は言った。
惑わされているのだ。彼女に。
彼女を悪徳な人間だと思おうとした。ダメだった。
想雷ちゃんのほほえみには抗えなかった。
「僕にそんな誰かを紹介してくれる人なんていないです」
「ソラさんは違うでしょ。あの子はたぶん、命を3つ持ってる。」
「命三つって?」
「昨日はあなたといても、今日は誰かといるの。ソラちゃん、記憶が続かないのよ。」