エディへと
年はちょいちょい変わるかも…
町中を歩いている間に、私は多くの事をキベから学んだ。
1番驚いたのは、今が”壁”が出来てから15年後の、対魔暦15年だということ。
時間の感覚が無くなる水中で、思っていたよりはるかにスキル習得に費やしていたみたいだ。
そして現在エディに通っている学生には、なんと対魔暦になってから生まれた人もいるらしい。
(まるで浦島太郎になった気分ね)
そんな事を思いつつ到着したのは【エディ】の校舎。
「ようこそ、エディ日本校舎へ、ミリさん」
満面の笑みを浮かべてキベが両腕を広げる。
だけど、そんな芝居がかった動作も分かってしまうぐらい、ソレは凄かった。
まず目に入ってくるのは巨大な正門。豪華な造りながらもしっかりと実用も兼ね備え、多くの歩哨が警備をしている。
正門の奥を見やると、本校舎が見えてくる。
全面灰色で造られたその建物は、まるで要塞のようにそびえ立ち、周囲を圧迫しているかのようだ。
(あの壁といいこの学校といい、凄いわねぇ。あんまり人間を甘く見ちゃいけないのかも知れないわね)
私は今まで低く見積もっていた人間勢力を少し上乗せする。
「この校舎は壁と同じで、魔力付与された最強で最高の材料で造られてるから、いざとなったらここを拠点にして、幾らでも籠城出来るんだぜ! しかもあそこにある魔導砲は最新技術のーー」
聞いてもいないのにペラペラと自慢し始めたマエルの話を聞き流しながら、私たちは正門にいる門番たちに歩み寄る。
「やあ、キベ。随分と早い帰投の理由はその人が理由かな?」
「ああ、そうだ。悪いが校長と話したいから補佐のハサさんに取り次いでくれ」
「分かった。ちょっと待っててくれ」
ーーしばらく待つと、校舎から1人の女が歩いて来るのが見えた。
(いかにも補佐官って女ね)
「こんにちは、皆さん。校長先生に用事があるとのことですが、何でしょうか?」
「この人について俺じゃあ判断出来ない案件だから、校長に取り次いで欲しいんだ」
「……ふむ。取り次ぐのは構いませんが、先に私に事情を話して下さい。話はその後です」
「それもそうだな。実はかくかくしかじかでな……」
キベがハサに、私のでっち上げストーリーを話す。
「ーーそうでしたか。それは大変でしたね」
そう言って私の方へ体を向けるハサ。
そんな事言ってる割には、全く私への視線が緩まない。
(これは流石に怪しかったかな? ここまで来たらバレたく無いんだけどなぁ)
私の不安をよそに、ハサは言葉を続ける。
「まぁ、いいでしょう。校長先生に相談するために、貴方の入校を一時的に認めます。それから貴方達も参考人としてついてきて下さい」
キベ達の方を向いてそう言い放ったハサに、明らかに嫌そうな顔をするマエル。
そんな様子を無視して、彼女はスタスタと歩き始めた。
ーー物々しい外見とは違って、中に入ると小綺麗でサッパリとした、機能性の高そうなものになっていた。
全面タイル張りの床に、高い天井。白い壁には多くの教室が連なっているのが見える。
「へぇ、結構凄いのね」
思わず私が呟くと、我が意を得たり、とばかりにドヤ顔をしてくるのが見えて後悔する。
そのまま校内を歩くこと数分、私たちは立派な彫刻の施された両開きの扉の前に立っていた。
「こちらで少し待っていてください」
ーーコンコン
「失礼します。ハサです」
そう言い残して部屋の中へ入っていった彼女を待つこと暫し、
「どうぞお入り下さい」
という声に従って、ゾロゾロと部屋に入る。
入って直ぐに目に入ってきたのは、大量の本と、奥に座る1人の女だ。
「やあ、よく来たね。私はエディ日本校舎の校長、テヨイよ。ハサ君から君の事情は聞いたわ、今まで大変でしたね。それから、君たちもよく彼女を見つけてくれました。ありがとう」
この学校の校長、テヨイはそう言って私たちを招き入れた。
(ふぅん、この女中々の魔力を持ってるわね。やっぱり校長ともなればそこそこ強いみたいね)
私は少しだけ警戒を強めることにする。
ちなみに、私自身は魔力量がバレないように偽装してるから怪しまれることはない。
ーー私の警戒をよそに、テヨイは私に色々と説明を始めた。
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