念願の…
書くのって難しい!⊂((・⊥・))⊃
私の手には包丁が収まっている。間違いなく私の胸を刺して、ストーカー男の首をかき切った包丁だ。
(私が最後まで手放さずに持っていた事が原因かしら。服も一緒にここにあるって事はこれが服の一部として見なされたから?まぁいいや。今はまず見つけないと)
包丁は身体が動かせる様になった瞬間に、映画でやっているのを真似て背中に隠した。
私が紛れ込んだグループは、比較的穏やかなグループだったみたいで、みんな静かに様子を見ている。教室の隅の方では早くも怒鳴り声や、殴り合いの喧嘩が起きているのが見える。
「皆さん、あんなアホ供とは違って私たちは冷静に話し会える方々の様ですね。それでは少しでも情報の共有と協力体制の話しをしましょうか」
ーーピッタリとしたスーツに四角い眼鏡。髪をワックスでキッチリと固めた、いかにも”秘書”という風な男が、集団の中心に立って話し始めた。
みんながそっちに注目した隙に私はまず男を捜す事にする。タイムリミットは残り4分。急がないといけないし、タイミングも大切だ。
(ちがう、こいつじゃない、ちがう、……見つけた!)
ーー場所は私がいる丁度反対側。このグループとは違って、数人でコソコソと何か話しているのが人の隙間から一瞬見だけ見えた。
あとは近づくだけなんだけど、残り時間は3分。見つけるのに手間取ったせいで時間が無い。
違和感を抱かれない様に、焦る気持ちを押し殺してゆっくりと移動する。
「ふむ、そこの美しいお嬢さんはどう思いますか?」
突然私に話しかけてきた秘書に私はポーカーフェイスで答える。
「うーん、無難だけど、いいんじゃない?」
もちろん何が無難なのかなんてサッパリだ。こいつの話なんて微塵も聞いてないし、そもそもここに呼ばれる様なやつに、ロクなのが居ないのは分かり切ってる。
だけど、運の良い事に私の答えは正解だったみたい。
「あはは、確かにそうですね」
私への興味を失ったのか、そう言って他の人に話し始める秘書。
私は直ぐに移動し始めた。残り時間は2分。変なちょっかいが入ったせいで時間が少ない!
ーー残り時間は30秒。やっとグループから離れないで一番アイツに近づける場所に到着した。
(時間ギリギリになってから飛び掛かろうかな? でもそうするとヤれるのが1人だけだからなぁ……悩みどころね)
「よしっ!」
小さく声を出して気合を入れた私は、最終段階に向けて動き出す。
ーー残り15秒
私は素早くグループから離れて、ターゲットに近づく。少しだけ視線を感じるけど、この際もうバレてもいいでしょう。
ーー10秒
コソコソと話す事に夢中で、私にまるで気付いてない男の背後に音もなく近づく。
ゆっくりと包丁を取り出して振りかぶる! と同時に、ナニカ感じたのか男が振り返る
ーー5秒
「シッ!!!」
プシュッ
ーー4秒
男の首から鮮血が吹き出す。それを確認する間もなく、私は呆然としている別の男の首をかき切る!
ーー3秒
「おい!テメェなにっ……」
流石に気付かれましたが、素人丸出しのテレフォンパンチの下をかい潜っての人にもゲームオーバーしもらいます。
ーー2秒
「おいっ!アイツを止めろ!」
「なんだっ?!」
「それをそこせぇっ!」
(騒ぎが大きくなり過ぎて、もう不意打ちはできませんね)
押し寄せてくる人間たちを回避します。
ーー1秒
ーー0
そしてカウントがゼロになる。
と同時に周囲の光景が消える。私が最後に見たのは、迫ってくる人垣と、相変わらず不気味に笑っている黒い輪郭だった……
☆
私が転移したのは水の中。辺りには一筋の光も見えず、何の音もしない。ただただ不気味で吸い込まれそうな暗闇で覆われている。
それもそのハズ、私が初期地点として指定したのは世界一深い場所として有名なマリアナ海溝の最深部、チャレンジャー海淵だ。
どうやらあの黒い輪郭(めんどくさいから【ヤミー】とでも呼ぶ事にする)に植え付けられた知識は本当みたいだ。
今ならモンスターを産み出すやり方も分かるし、自分の【スキル】なんて物も分かる。
現状把握が終わった私は心機一転、明るい気持ちになって動き出します。
「さて、始めましょうか!」