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金髪の聖女は、死霊を三度踏みつける  作者: tosa


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ガレント国の戦没者

 次々と地中から這い出てくる死霊達は、時間を追うごとにその数を増やして行く。一体どれ位の数なのか検討もつかなかった。


 戦場で死亡した兵士が死霊に変わるのは分かるけど、あの地中から現れた死霊は一体何なんだ!?


「この草原の地下には、代々ガレント軍の戦没者が埋葬されているわ。それも遺体の腐敗が進まないように施されてね」


 レファンヌが腰に手を当て真相を語る。ガレント軍の戦没者?腐敗せずその残った遺体を死霊に変え、レファンヌは戦いに利用しようとしたのか!?


「数は正確では無いけど、ドルト将軍からは地下の戦没者は十万はいると聞いているわ。それに加えてガレント連合軍の甦った死者数万。ハーガット。これで数の上で連合軍がアンタの軍を凌駕したわ」


 レファンヌはハッキリとそう言った。戦場では、長い眠りから目を覚ましたガレント軍戦没者達がハーガット軍に襲いかかる。


 それを合図に、追い詰められていたガレント連合軍は決死の反撃に討って出た。今やハーガット軍は、ガレント国十万の死霊達と連合軍軍本体に挟み撃ちされる格好となった。


「······なる程な。配下に渡した死霊軍団を作る為のブレスレットを逆に利用されたか。確かに草原での戦いはそなた達の優勢に変わりそうだ。ふ。ふふふ」


 沈んだ声から一変し、ハーガットは不気味な笑い声を漏らした。


「素晴らしい!素晴らしいぞ金髪の聖女よ!余の描く筋書きをそなたは変えた!次は余に何を見せてくれる?あの戦場はどうだ?あそこも余の想像を超える結果になるのか!?」


 ハーガットが指差した方向を俺とレファンヌは見る。そこは、俺達仲間の戦場だった。


 メルダとビンセントがカミングを挟撃するように呪文を唱える。優男はそれを障壁で凌ぎ、防戦一方だ。


 四つ目の化物は、レファンヌの氷結の呪文によって凍りついた両足に眼から炎を出し溶かして行く。


 その間も、マコムは四つ目のアキレス腱に戦斧を何度も叩き込み、アークレイは光の剣で。メルサルは漆黒の鞭で四つ目の背中を集中的に攻撃する。


 四つ目の背中は、アークレイの古代呪文「天空の雷撃」で傷付いている。アークレイとメルサルは、阿吽の呼吸でその背中の傷口を広げようと連携攻撃を続けていた。


「良いぞ。そなた達の善戦は評価に値する。さあ。金髪の聖女よ。半身死霊の少年よ。我が四人の勇者達にどう抗し得る?」


 ハーガットはそう言うと指を鳴らした。その瞬間、四人の死霊勇者達が再び歩みを再開する。


「そうね。アンタの三忠臣に相手をして貰おうかしら?」


 冷笑するレファンヌの背後に、三人の人影が現れる。それは、元勇者ヒズケイト。戦士べロス。白衣の悪魔ロイエンスだった。


 それだけでは無い。ロコモ大尉。モツイット大尉もその後ろに立っている。五人共全員、虚ろな目の死霊と化していた。


 レ、レファンヌはヒズケイト達をも利用しようと考えていたのか!?レファンヌがシャウトから奪ったブレスレットは、死体を死霊に変える。


 だが、それは初期の死霊の姿だ。ハーガットが改良した死霊は陽の光を浴びても無事で済むが、初期の死霊はそうは行かない。


 だが、図らずも空は曇り空に変わっていた。それは、アークレイが「天空の雷撃」を使用する時に空の天気を変えてしまったからだった。


 レファンヌはそこまで計算していたのだろうか?俺はこの金髪の聖女に、改めて脱帽してしまった。


「さあ。過去の勇者達と元勇者達一行。どちらが強いか雌雄を決しなさい」


 レファンヌの言葉を合図に、ハーガットが甦らせた四人の勇者とヒズケイト達元勇者一行が戦いを開始する。


 俺とレファンヌはその間隙を縫ってハーガットに迫る。


「禁術を使い過ぎたわねハーガット。アンタの魔力はそう多く残って無い筈よ!」


 レファンヌが銀の杖から火炎の呪文を唱える。ハーガットはそれを障壁で防ぐ筈だった。


 物理障壁。魔法障壁。そしてハーガットが独自に生み出した物理と魔法の二重障壁。そのいずれかでも良かった。


 とにかくハーガットが呪文を唱えた瞬間、その隙に俺はラークシャサに脳の血肉を喰わせ最後の一撃を奴に叩き込む。


 それで全てが終わる筈だった。ハーガットの命も。俺の命も。


「見ているかミルドリアル!?さあ!!我が劇は数々の悲喜を生み出し、最後の輝きを放とうとしている!!」


 ハーガットが絶叫しながら魔法障壁を張りレファンヌの呪文を弾き飛ばす。俺は姿勢を低くし、奴に突入しようとした。


「ラークシャサ!!俺の脳の血肉を······」


 俺は叫びながら一瞬だけ後ろを振り返った。俺に新たな命を与えてくれたレファンヌを最後に見ておきたかったからだ。


 そのレファンヌの背後に誰かがいた。その人影はよく知っている顔だった。カミングは右手に持った短剣を、レファンヌの背中に突き刺そうとしていた。


 俺は何かを絶叫しながらレファンヌとカミングの間に割って入った。優男の短剣は、俺の眉間に吸い込まれる様に突き刺さった。


 

 


 

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