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過去との対面

 ロッドメン一族の生者と死者の同族対決は、生者であるメルダとノホットが勝利した。深手を負ったノホットにビンセントが直ぐ様治癒の呪文を唱える。


 治癒の呪文は万能では無いとレファンヌが教えてくれた。ノホットの傷口は塞がったが、身体が負ったダメージの回復には時間がかかるらしい。


「この戦いも君達の勝利だ。約束通り二階に上がって貰おうか」


 ロコモ大尉がそう言うと、俺達を先導するように階段を登って行く。ノホットにはビンセントが方を貸し歩き始め、俺達も続いて二階の闘技場に上がって行った。


 六十段程の階段を登り切ると、二階の闘技場が見えた。その中央に二つの人影があった。


 ······一人は細身の白髪の男だ。レファンヌ達と同じ白い法衣を着ている。そしてもう一人は、短く切りそろえた金髪の髪の少女。


「アミルダ······!」


「······ミデット」


 感情を揺さぶられた俺の声と、心が乱れた様子の無い静かなレファンヌの声が重なった。


「この二階の闘技場でも君達には二度戦って貰うよ。それに勝利すれば、ハーガット様が待つ最上階に案内する」


 俺とレファンヌは、ロコモ大尉の説明を聞いていなかった。誰が戦うと言う大尉の問いも待たずに、俺とレファンヌは闘技場の中央に歩み寄る。


 一歩一歩近づく度に、アミルダとミデットの表情が見えてくる。そして俺は愕然とした。


 アミルダとミデットは、死霊特有の土色の顔をしていなかった。先程俺達の行く手を阻んだマリガルとグレソルと同じだ。


「キント。私は私の過去とケリを着ける。アンタは相手を助けるなり、楽にさせてやるなり自分で決めなさい」


 俺は冷静な声色のレファンヌを一瞬見た。前回とは違い、ミデットを前にしてもレファンヌは落ち着いている様に見えた。


「······ああ。どうするかは決めている。俺は必ずアミルダを助ける!」


 俺が決意を述べた時、俺達はアミルダとミデットの前に立った。


「······レファンヌ。僕だよ。ミデットだ。僕はハーガットの手によってこの世に再び生まれる事が出来たんだ。死霊では無いんだ。心を持った人間としてね」


 俺は自分の目を疑った。レファンヌに語りかけるミデットの両目は虚ろな死霊のそれでは無かった。


 生気を宿した人間の目だった。そ、そんな馬鹿な。ハーガットは完全に死者を甦らせる事を可能にしたのか!?


「久しぶりねミデット。生まれ変わった気分はどう?この世界で貴方がしたい事は何?」


 レファンヌは微笑しながらかつての想い人に問いかける。


「······僕はもう病弱な身体じゃない。そうだね。レファンヌ。君と世界中を旅したいんだ。そして君に知って欲しい。僕が君をどう想っていたかと言う事を······」


 ミデットの言葉はそこで途切れた。レファンヌが右手に持った銀の杖をミデットに向けたからだ。


 一瞬で光が炸裂し、轟音と共に大爆発が起きた。俺とアミルダは爆風に飛ばされた。


「······残念ねミデット。貴方からその言葉の続きは聞けないわ。何故ならミデット。貴方はもう死んだ人間だからよ」


 長い金髪を爆風に揺らしながら、レファンヌは淡々とそう言った。そして、ミデットが立っていた場所には床の黒焦げだけが残った。


「過去の想い人を一撃で屠るか。金髪のお嬢さんは覚悟を決めていたって事か」


 快活さが欠けた声でアークレイが呟く。それはレファンヌへの称賛だったのか。自身にその覚悟が備わっているかと言う逡巡だったのか。


「さあキント。次はアンタの番よ」


 乱れた長髪を掻き上げ、レファンヌは俺を見つめる。俺は黙って頷き、腰からラークシャサを抜いた。


「キント。私はハーガット様のお陰で生まれ変わったの。もう地方領主なんて足枷は無くなったわ。自由。そう。私は自由になれたの。それって、とても素敵だと思わない?」


 黒い甲冑を身に着けたアミルダが、俺に微笑みかけながら口を開いた。その一語一語が俺の胸の中に痛みを植え付ける。


 先の戦いでのアミルダは、虚ろな死霊そのものだった。それがハーガットに改良され、見た目も声色も人間そのものだ。


 一度死んだ死霊を持て遊び、その死霊を想う相手を更に苦しめる。全ての元凶であるハーガットに対して、俺は深く黒い殺意しか無かった。


「······アミルダ。君は俺が助けるよ。必ず」


 俺はそう言うと、ラークシャサを構えアミルダに向かって駆け出した。


 

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