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ロッドメン一族

 カミングは両肘をテーブルにつき、口元で両手の指を交差させていた。今更俺に初めて気が付いた様に、俺にも笑みを向けてくる。


「やあ。お初にお目にかかるね。僕はカミング。レファンヌの友人なんだ。君はレファンヌのお供かな?」


 いや。お供と言うか。人間に戻る為に仕方なく使役されている身と言った方が正解か。俺はかいつまんで自分の素性をカミングに話した。


 すると、カミングも自分達一族の事を俺に話し始めた。ロッドメン一族。それは、この世界で魔法と言う物を創造した伝説の一族らしい。


 レファンヌとカミングも、この一族に名を連ねると言う。ロッドメン一族は、純粋に魔法の探求と発展を生涯追い求め続ける一族だ。


 故にロッドメン一族は、狂気王ハーガットのような禁術を使い続ける異端な者とは、絶対に相容れないらしい。


 だが、ハーガットの異能な能力を惜しみ、ロッドメン一族は狂気王との和解の道を探っていた。


 そこで事件が起きた。後に「血の茶会」と呼ばれる惨劇だ。狂気王ハーガットは、ロッドメン一族の交渉代表を招き、茶会を開いた。


 そこでハーガットは交渉代表達を騙し討ちし、皆殺しにした。この事件はロッドメン一族の権威を失墜させるに充分だった。


 激怒したロッドメン一族の長老達は、ハーガットに宣戦布告をした。そして一族内にも通達した。


 ハーガットの首を取った者には、一族の後継者の座を渡すと。


「一族内は大変な騒ぎさ。己の鍛錬の成果を存分に発揮出来るし、上手く行けば一族の長になれる。皆血眼に、いや殺気立ってるよ」


 カミングは微笑んだままテーブルの料理を摘んだ。そして俺の顔を真っ直ぐに見る。


「でも僕達魔法使いは、悲しいかな接近戦に弱くてね。皆、高名な冒険者と組もうと躍起になっている。レファンヌはキント君をパートナーに決めたのかな?」


 カミングの質問に、レファンヌは失笑した。


「冗談言わないでカミング。コイツはただの盾よ。半分不死だから丁度良かっただけよ」


 くっ!酒を飲みがら悪口を言われると余計に腹立つな!


 レファンヌの言葉を聞くと、カミングは彼女の右腕を掴んだ。


「······片方とは言え、本当に鎖が解けたんだね。僕は鎖に巻かれたレファンヌの腕が好きだったな」


 そのカミングの両目は、それは本当に残念そうな色をしていた。


「アンタの趣味なんぞ知るか!離しなさい!」


 レファンヌは鬱陶しそうにカミングの手を払った。こ、このカミングって男も変な奴だな。


 カミングは用が済んだとばかり、突然席を立った。


「僕の監視役もお役御免だ。レファンヌ。キント君。死なない様に頑張ってね」


 カミングの言葉に、レファンヌは右手に持っていたグラスをテーブルに叩きつけた。


「カミング。はっきりと言っておくわ。私は一族の馬鹿騒ぎに参加するつもりは毛頭ないから。ハーガット?知ったこっちゃないわね」


 レファンヌの断言にカミングは肩をすくめて去って行った。レファンヌとカミング。二人は随分前からの顔見知りなのか?


「カミングとは魔法学校の同級生。それだけよ」


 魔法学校?ロッドメン一族とやらが運営している学校か?よく分からないが、この金髪の悪魔が生徒なら、さぞかし教師達は手を焼いただろう。


 俺はふとテーブルに目をやると、メモ書きの様な紙が置かれていた。レファンヌがそれに目を通すと、顔を歪め紙を握り潰した。


「あのタヌキ!私をどうしても騒ぎに巻き込むつもりね!」


 カミングが残して行った置き手紙にはこう書かれていた。俺がいた死霊の群れは、本来はこの街を攻める部隊だったらしい。


 それが全滅した以上、ハーガットの新たな部隊がこの街に送られる。レファンヌと俺に健闘を祈ると最後に書かれていた。


 この街に死霊達が攻めてくる!?


「レ、レファンヌ!街の皆に伝えないと!」


「はあ?何で私がそんな面倒な事をしないといけないのよ」


 レファンヌはあっさりと断り、葡萄酒のお替りを店員に注文する。だ、駄目だ。この女に常識を説いても時間の無駄だ。


 俺は席を立ち、この街の町長に会う為に店を出た。だが俺が目にしたのは、街の門を破壊する死霊達の姿だった。


 

 



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