不良勇者の仲間達
「······仲間!?あの空から降りて来た人達がアークレイの仲間なのか!?」
俺はアークレイを振り返り不良勇者に質問する。ではあの氷塊を作り出したのもアークレイの仲間がやったのか!?
「ああそうだ。あそこに着地した連中は俺の仲間だ。百三人全員遅刻して来やがったがな」
俺はアークレイの返答を聞き再び戦場を見る。
突然出現した巨大な氷の壁に、死霊軍団はその勢いを止められた。だが、よく見ると氷塊には所々隙間があった。
それは、死霊が一体ようやく通れる隙間だった。死霊達はその間を一体ずつ通って行く。やっと通り抜けた死霊を待っていたのは、左右からの斬撃だった。
隙間の出口に待ち構えていたアークレイの仲間は、隙間から出て来た死霊の頭を確実に両断する。
不良勇者の仲間達は、着ている服装、甲冑、武器も統一性が無くバラバラだった。遠目から見ても、彼等は品行方正とは対極に位置していそうな顔つきだった。
「何が仲間だ。アークレイ。お前の仲間などそこら辺のゴロツキと何ら変わりはしないだろう」
アークレイの仲間達を知っているのか、メルサルが苦々しい表情で声を荒げる。
「個性があると言って欲しいなメルサル。まあ、確かにあいつ等は行儀は悪いが腕は確かだ。百三人で三千分は働くだろうさ」
アークレイは白い歯を見せて笑った。美貌の魔王は「過大評価」だと言い捨てた。その時、大きな爆発音が響く。
死霊達は氷塊に取り付き、次々と自爆して行く。氷の壁を破壊して道を作るつもりか!ガラスの破片が飛び散る様に氷塊は砕け、死霊軍団の前に大きな道が開けた。
死霊達がその道に殺到しようとした時、突然そこに大きな火柱が空に向かって伸びて行く。その火柱は竜巻の様に移動し、死霊達を燃やしていく。
その間に、砕かれた氷塊の隙間は再び氷で閉じられた。す、凄い。アークレイの仲間達は、魔法の威力も使い方も普通じゃない。
不良勇者の仲間達が死霊軍団の進軍を鈍化させている間に、ドルト大将は乱れた連合軍の軍列を必死に戻そうとする。
「そろそろ始めさせて貰ってもいいかな?」
ガレント連合軍とハーガット軍の戦いを注視していた俺達の後方から、誰かの声が聞こえた。
この円卓状の舞台に一人の騎士が立っていた。それは、先の戦いでマコムに矢を放ったロコモ中尉だった。
「君達との前回の戦いの功績で大尉に昇進したよ。まあそれは置いておいて、このハーガット様の開かれる劇の進行役を仰せつかった。早速始めさせて貰ってもいいかな?」
大尉に昇進したロコモは、俺達の返答を待たずに右手を振る。すると、石造りの舞台の床が一部地下に沈んで行く。
そして暫くすると、沈んだ床が浮き上がって来た。これは、前回とハーガットがした事と同じか!
浮き上がって来た床には、人影が二つあった。それは、黒い甲冑を纏った大柄な二人の騎士だった。
······その内の一人には見覚えがあった。あの馬鹿でかい身体。あの潰れた鼻は。あ、あいつはシャウトじゃないか!!
「ふはははっ!!久方ぶりだな金髪の女!少年!赤毛の少女よ!えーと?あとは知らん顔だな。まあいいか。我こそは偉大なるハーガット軍二等兵!!将来将官に栄達する予定のシャウト様だあっ!!」
相も変わらずシャウトは鼓膜を刺激する大声を出して来た。ん?あいつ今、自分の事二等兵って言ってなかったか?
「やれやれ。会う度に降格する奴と思っていたけど。ついに二等兵まで落ちたのね。この舞台に現れたって事は、アンタとうとうハーガットに戦死しろと言われたのかしら?」
レファンヌが失笑混じりに辛辣な言葉を吐き捨てた。言われたシャウトは頭を傾け、数秒間考えているように見えた。
「多分今のは私に対する暴言だな!!ハーガット様は私に手柄を立てさせる為にこの舞台を用意して下さったのだ!!何せ直々にハーガット様は私に言われた!「撤退、後退、降伏は許さん」となあ!これって「お前頑張って来いよ」的な激励だろう!?つまりぃ、私はハーガット様に期待されているのだあ!ふはははっ!私が栄達してサインが欲しくても、お前達にはやらんぞ!ざまぁ見ろ!!」
こいつはレファンヌに鼻を潰され頭までおかしくなったのか。いや、元々頭のネジが外れているのだろう。
シャウトがつばを飛ばし叫んでいると、隣に立つ全身甲冑の男が腰の大剣を抜く。
「それ位にして置けシャウト。私は早くこいつ等に借りを返したいのだ。無駄口を叩くな」
兜の中から発せられた声は、俺はどこかで聞き覚えがあった。そうだ。あの声は、レファンヌにやられたモツイット中佐か!
「モツイット中佐は貴様等に倒され、大尉に二階級降格されたのだ!しかも!金髪の女に股間を燃やされ!その一物は使用不能になったのだぞ!どうしてくれるのだこの責任!!」
「うるさいぞシャウト!!余計な事を言わんでいい!!」
シャウト二等兵の不必要な情報公開に、二階級降格したモツイット大尉は激昂してシャウトの頭を殴った。ロコモ大尉はその様子をため息をつきながら見ていた。
「······とまあ。こんな形で我々の刺客と戦って貰う。勝負は同人数で行う。シャウト二等兵とモツイット大尉と戦う二人を決めてくれるかな?」
ロコモ大尉がハーガットの意図を説明して行く。俺達はハーガットが用意した刺客を倒して行く事で、階段を登り次の円卓状の石台に上がれるらしい。
そのルールを無視し、ハーガットが待つ三階に直接向かおうとすると、床の下から死霊が登場し自爆すると言う。
俺達が立つ一階のこの石造りの舞台の下には、数百体の死霊が待機しているらしい。それは、二階と三階も同様らしい。
「上等だ。俺が相手になってやるぜ!」
「わ、私も戦います!」
ビンセントとマコムが志願し、シャウトとモツイットの前に進み出た。
「······どうするレファンヌ?時間をかけるとドルト大将達が持たない。奴等の申し出を無視して、風の呪文で三階に飛んだ方がいいんじゃないか?」
俺は小声でレファンヌに話しかける。三階に待つハーガットさえ倒せば、全てが終わるんだ。
「事はハーガットだけ倒せば終わりじゃないわキント。まだ十万は残っているハーガット軍の事も頭に入れておきなさい」
レファンヌは片手を腰に当て冷静な口調で返答する。た、確かにそうだけど。ハーガット本人を倒すのが最優先じゃないのか?
「······時間がかかるのは好都合よ。まだ足りない。死体がね」
レファンヌは静かにそう言った。
ビンセントが杖を構え、マコムも背中の戦斧を両手で握る。俺はこの時、レファンヌのその言葉の真意を分かっていなかった。




