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血の前哨戦

 俺達八人は風の呪文で高台から飛び立ち、ハーガットが用意した三階建ての円卓台の一階に降り立った。


「妙だな。誰も居ないとは」


 メルサルが周囲を見回し静かに呟く。俺達が立つこの石造りの台には、四隅に黒く装飾された円柱が鎮座しているだけだった。


 その時、この階段状の建造物の下から兵士達の声が聞こえて来た。


「······始まったな」


 ノホットが厳しい表情で眼下に広がる光景を見ながら呟く。総兵力十二万のハーガット軍が動き出した。


 数に任せてかハーガット軍は陣形らしき物は組まず、ただひたすら前進する。死霊軍団とガレント連合軍は、互いの前衛が正に鉾を交えようとしていた。


 その時、両軍の前衛で無数の白銀色の光が輝いた。それは、最前線に立つロッドメン一族七十名が治癒の呪文を唱えた光だった。


 光を浴びた死霊達は次々と蒸発して行く。傷を癒し治す呪文が、死霊にとっては文字通り死の呪文だった。


 先のハーガットとの戦いから生き残ったロッドメン一族七十名は、己の魔力が尽きるまで治癒の呪文を唱え続けた。


 やがて白銀色の光が止んだ時、ハーガット軍の前衛はほぼ全滅状態になった。ロッドメン一族達はその名に恥じぬ力をこの戦場で知らしめた。


 ハーガット軍は緒戦でその兵力を一割失った。七十名の一族達が後退するのと入れ替わるように、ガレント連合軍が突撃を開始した。


 草原に馬蹄の音と兵士達の怒号が響き渡る。連合軍の先鋒が数千の槍を死霊達に突き出す。


 当たるを幸いに死霊達は次々と串刺しにされて行く。倒れた死霊はたちまち馬に頭を踏み潰され絶命する。


 勢いに乗った連合軍は、ハーガット軍の中衛まで深く食い込んだ。俺の目から見ても、完全にガレント連合軍に勢いがあった。


 たが、やはり兵力差が大きかった。ガレント連合軍がハーガット軍の中衛に達しようとした時、連合軍の勢いは止まった。


 数に置いて圧倒的に有利な死霊達が反撃を開始したのだ。だが、それはドルト大将の予測の範囲内だった。


 気勢を制して死霊の大軍の中に攻め込んでも、いずれ進撃は停止する。ドルト大将はその時期を逃さず全軍に後退の命令を下す。


 ガレント連合軍は作戦通り後退を開始する。ハーガット軍の攻勢に対し、連合軍は守勢に徹し時間を稼ぐ。


 その間に俺達がハーガット本人を倒す。それが俺達の作戦だった。


「作戦通り上手く行きそうだな。だが何故この草原を戦場にしたんだ?この草原はガレント国の戦没者が葬られている場所なんだろう?」


 アークレイが両手を広げメルサルに質問する。ガレント国は死者の転生を信じ、死体の腐敗を防ぐ特殊な方法で死者を葬っているらしい。


 美貌の魔王は勇者を冷たく無視し、レファンヌに視線を移す。


「金髪の聖女よ。そなたがこの件について関わっているのだろう。理由あっての事か?」


 そうなのだ。レファンヌはドルト大将にこの草原を戦場にするように強く勧めた。その理由は一体何なのか。


 メルサルの問いかけに、レファンヌは不敵に笑みを浮かべる。


「共同墓地の上で死霊を葬れば、埋葬の手間が省けるって物よ」


 レファンヌの答えに、俺は何か腑に落ちない気分だった。この悪魔のような聖女が、死霊の埋葬の事など気にするのだろうか?


 その時、戦場から爆発音が聞こえて来た。


「あの爆発は何!?」


 メルダが粉塵が四散する光景を凝視しながら叫んだ。爆発は、後退しようとするガレント連合軍の前衛で発生していた。


 俺は目を凝らしてそれを確認しようとした。一体の死霊がガレント連合軍の兵士に近づく。


 すると、その死霊の身体が光り輝いた瞬間、死霊は爆発四散する。その爆発に巻き込まれた連合軍の兵士達も身体の一部が吹き飛んでいく。


「······死霊が自爆している!?」


 マコムが驚愕の表情で叫んだ。死霊の自爆行為は連鎖するように次々と起こって行く。死霊の自爆は連合軍の兵士だけでは無く、味方である同じ死霊も巻き沿いにしていた。


 だが、自我を失った死霊達はそんな事に微塵も動揺は無く、ひたすら自爆行為を続ける。


 ガレント連合軍は混乱し、それが恐慌に陥るまでにそう時間は必要としなかった。な、なんで死霊があんな真似を出来るんだ!?


「······ハーガットがまた死霊を改良したようね。一体の自爆で相手兵士を十人倒す。使い捨ての駒を効率良く使う手段を考えたって訳ね」


 レファンヌが戦場を見ながら、吐き捨てるように呟いた。ガレント連合軍は混乱し、戦線は崩壊寸前になる。


 その時、死霊軍の最前線に突如空から複数の人影が降り立った。その途端、巨大な氷の塊が出現した。その氷塊は死霊達の進軍を阻むように横に広がっていく。


「やれやれ。やっと来たかあいつ等」


 その光景を見ながらため息混じりに呟いたのは、不良勇者アークレイだった。


 

 


 



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