表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/69

ガレント国の将軍

 ノホットがガレント国に使者として赴いてから三日後、ノホットはロッドメン一族の本拠地である城に戻って来た。


 だが、ノホットは一人では無かった。交渉先のガレント国の将軍と一緒だったのだ。将軍は亡きメグラル長老の執務室に通された。


 俺とレファンヌ。アークレイとメルサル。そして目覚ましい回復を見せるマコムも同席した。


 十法将の生き残りであるメルダとビンセントも当然呼ばれていた。


「皆に紹介しよう。ガレント国大将、ドルト殿だ」


 ノホットが緑色の軍服を着たガレント国の将軍を皆に紹介する。ドルト大将は四十代半ばに見えた。肩までの黒髪を後ろで結び、鼻の下には長い髭を蓄えている。


 歴戦の指揮官らしく、両眼は鋭く精悍な顔つきだった。


「ロッドメン一族の皆さん。お初にお目にかかる。先ずは狂気王ハーガットに単独で挑まれた貴方達の勇気に敬意を表します」


 ドルト大将は穏やかや口調で挨拶をした。そして、ハーガットとの共闘をこちらかも是非お願いしたいと申し出た。


 ドルト大将は終始腰が低く、高圧的な態度は一切取らなかった。ガレント国に共闘を持ちかけると、ロッドメン一族が軽視されると危惧したメルダの心配は杞憂になりそうだった。


「ハーガットは既に我が国の国境に近づいている。猶予が無いので早速戦術を皆さんと論じ合いたい」


 ドルト大将は自軍の戦力を説明し始めた。ガレント国の総兵力は三万。周辺同盟国の援軍が一万五千。


 だが、報告によるとハーガットの死霊軍団は十万を超えているらしい。更に人間の兵力も二万近くあるらしい。


 数の上では戦いにならない。ドルト大将はそう嘆息した。


「メルサル。魔族の国々の動きはどうなんだ?」


 椅子に座り長い足を組みながら紅茶を飲むアークレイが、美貌の魔王に問いかける。


「ハーガットは攻める国々を人間の国に限定している。現状下では魔族の国々は静観の一手だ。我が国単独で出せる兵力は一万が限度だな」


 意図的にアークレイから離れた椅子に座ったメルサルはそう返答した。メルサルの軍はいつでも出兵が可能な状況らしい。


 メルサルは魔王と呼ばれているが、それは最強の戦士に与えられる称号のような物であり、他国に命令が出来る訳では無かった。


「メルサルの軍を合わせても、ハーガット軍の半分にも届かないか。これでは勝負にならんな」


 アークレイが手立てが無いとばかりに天井を見上げた。確かに。これでは戦いにならない。その時、一番端の椅子に座っていたレファンヌが口を開いた。


「暗殺。それしかないわね」


 レファンヌの言葉に、席に座った者達は全員金髪の聖女を見る。


「ハーガット軍を引きつけ、本陣を手薄にさせる。そこに少数精鋭を送り込み奴の首を取る。それしかないわ」


 レファンヌは力強い口調で言い切った。レファンヌの提示した作戦に、執務室に集まった者達は各々考え込む。


「金髪の聖女よ。ハーガットには三忠臣と呼ばれる強者がいる。彼等に守られた狂気王は簡単には倒せんぞ」


 メルサルが冷静にハーガットの戦力を分析し問題点を指摘する。


「心配は無用よ。ハーガットはその三忠臣とらやらを故意に分散させるわ。そして私達にそれを突破してみろと言わんばかりの状況を作るでしょうね」


 レファンヌの言葉にメルダが過敏に反応する。


「何故そう言い切れるの?それではまるで、ハーガットが自ら不利な戦局を作ると言っているような物じゃない」


 確かにメルダの言う通りだ。ハーガットがそんな真似をするだろうか?


「ハーガットはこちらの残された戦術を百も承知よ。その上でアイツは少数で奇襲する私達を歓迎するでしょうね。ハーガットはそれを劇仕立てにして楽しむつもりよ」


 レファンヌの説明に、ノホットが訝しげな表情で口を開く。


「何故ハーガットはそこまで劇にこだわるんだ?自分の命を危険に晒してまで」


「過去の劇作家を甦らせ、自分と競わせようとしている奴よ。最初から頭がイカれた男なのよ」


 レファンヌは不快気に言い捨てた。戦場でハーガットと二度会ったが、確かに奴は狂気地味ている所がある。


「その話通りなら、私達ガレント軍がやる事は決まった。死霊の大軍を引きつけ、貴方達がハーガットを倒すのを援護する。情けないようだが、我々に出来るのはその位だ」


 戦いを知り抜いている将軍が、言葉を取り繕わず正直に考えを口にした。死霊の大軍を引きつける役目だって命懸けの難役だ。


 俺は将軍の誠実な人柄を目の当たりにして、この人は信用出来ると感じた。


「七冊目の禁術書の保管場所は?」


 レファンヌは紅茶を飲みながらドルト将軍に質問をした。


「城の地下深くに保管してある。我らの王都が陥落した際は、城ごと燃やす手筈だ」


 ドルト将軍はさらりと質問に答えた。ガレント国はハーガットに屈せず不退転の決意を既に決めている。


 将軍の言葉の内容から、容易にそれが想像出来た。


「決まりね。今度こそあの青白い男の顔面に、私のブーツを埋めてやるわ」


 レファンヌは殺気がこもった声を発した。狂気王を討ち取る。それは、この執務室に集まった全員が考えている事だった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ