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五人の老兵

「赤毛の狂戦士に続きロッドメン一族の長老!!劇中で起こる不測の事態に予はかつてない興奮を覚えるぞ!メグラル長老!次は予にどんな未来を見せてくれる!?」


 ハーガットは間近に迫るメグラル長老を歓迎するように、両手を大きく広げた。


「何分現役を退いて長いからのお。魔力も体力も僅かな身じゃ。お主の期待に沿えるか甚だ疑問じゃて」


 メグラル長老は杖を狂気王に向ける。すると、ハーガットの周囲に白く輝く無数の木の葉が出現した。


「······これは。古代呪文「白葉の包葬」か?」


 ハーガットがその木の葉を観察する。数え切れない白く光る葉は、狂気王の身体に貼り付き始めた。


「ハーガット様!!」


 ロイエンスがハーガットにまとわりつく光の木の葉を振り払おうとする。


「手出しは無用だロイエンス。そなたは他の長老達の相手をせよ」


 既に下半身が木の葉で埋め尽くされたハーガットは、腹心に不気味な笑みを浮かべ命令する。


「······承知致しました」


 ロイエンスはグレソル達の所へ飛び立つ。その白衣の悪魔の周囲に、十本の武器が突然現れた。


 それは、冒険者の鎖によって封じられていた筈のウィザードキラーだった。鎖を操る冒険者が倒されて為、その戒めは解かれていたのだ。


 グレソル達の元にいたクーヘル長老は、頭髪の無い大きな顔に怒りの表情を露わにし、ロイエンスへ向かって行く。


「まさかロッドメン一族の長老達が総出で来るとはな。良い機会だ。私のこのウィザードキラーで老人達はに漏れなくこの世から退場して貰おう」


 ウィザードキラーをクーヘル長老に向けたロイエンスが不敵に笑う。


「······その武器は危険じゃのお。後の者の為に減らしておかんとな」


 クーヘルは杖を振るう。すると、ロイエンスの周囲に浮遊していた十本の武器が黒い光に包まれる。


「無駄だ長老!このウィザードキラーは、攻撃魔法を受けると魔法障壁が発動され······」


 ロイエンスが言い終える前に、一本のウィザードキラーが爆発四散した。それと同時に、クーヘル長老の人差し指も吹き飛んだ。


「······これは?私のウィザードキラーが破壊されただと!?長老!一体何をした!?」


 ロイエンスは驚愕の表情でクーヘル長老に叫ぶ。長老は血が溢れる指を白衣の悪魔に見せる。


「ハーガットの腹心よ。これは呪文では無い。この大陸より遥か東にある帝国で学んだ呪いの類じゃ。この呪いは生き物では無く物に対して有効な呪いじゃ。代償は術者の身体。この術の場合はワシの指じゃ」


 クーヘル長老の説明に、ロイエンスは絶句していた。それはまるで、魔法以外の存在を認めない者が、信じた真理を覆された表情だった。


「ワシ達が世界の全てと信じ込んでいるこの大陸。じゃが、世界は更に東に広がっておるのじゃ。おっと。ロッドメン一族は体面上は魔法以外はご法度じゃからな。あんまりこの術は公に出来んのじゃ。まあ、ハーガットの禁術に比べれば可愛いモンじゃかな」


 クーヘル長老は並びの悪い歯を覗かせ不気味に笑った。一方、ロイエンスは我に返り反撃しようとする。


「おのれ!我がウィザードキラーはまだ九本あるぞ!貴様にそれが防げるか!!」


 ロイエンスが白い髪を振り乱した瞬間、白衣の悪魔の周囲で九つの爆発が起きた。主君の為に心血を注いで制作した傑作品は、煙の中から塵として風に流れる。


「······この老いぼれがあぁっ!!」


 怒り心頭のロイエンスが破壊者に向かって突進する。十本の指全てを失ったクーヘル長老は、満足気に笑っていた。


 一方、城下町では空に浮遊する三人の長老が、ロッドメン一族達を包囲しようとする死霊達を巨大な炎の柱で焼き払っていた。


「······うむ。空の長老達が厄介だな。アミルダよ。あの三人を黙らすのだ」


 既に光の木の葉に喉元まで覆われたハーガットは、何事も無かった様に側にいたアミルダに命令する。


「······承知致しました。ハーガット様」


 そして俺は信じ難い光景を目にした。アミルダの背中から、黒い翼が生えてきたのだ。


「······アミルダに何故翼が?」


 その時俺の脳裏に、以前街に攻めてきた蛇目男、ロエロ少佐の変異した身体が過った。あの時ロコモ大尉は言った。


 ハーガットは人体改造にも力を注いでいると。ハーガットはアミルダの身体を実験体にして、あの黒い翼を取り付けたのか!?


 アミルダは恐ろしい速度で空に飛び立った。上空から地上を支援していた三人の長老達は、魔力が尽きたのかアミルダに次々と斬られて行く。


 更に俺の耳に剣が重なる音が聞こえた。マコムを救出しようとしたアークレイに、ヒズケイトが斬りかかった。


「間違っていたら済まんが、お前はもしや元勇者のヒズケイトか?」


 ヒズケイトの二本の剣をアークレイは愛剣で弾き返す。アークレイが聞き流せない言葉を呟いた。ヒ、ヒズケイトが元勇者だって!?


「間違いでは無いぞ。現役勇者アークレイ。お前とは何度かやり合っているが、未だに私の名と顔を覚えられんのか?」


 ヒズケイトが両刀に光の剣を発動させた。アークレイも同様に刀身に白い光をまとわせる。


「まだ狂気王の元で働いているのか。それ程ここの職場は魅力的なのか?」


 アークレイの鋭い斬撃は、ヒズケイトの両刀によって防がれる。両者の光の剣が重なると、周囲に眩い光の閃光が散る。


「目下の所、超過勤務中だ。早く退散してくれると助かるのだがな」


 ヒズケイトは言葉とは裏腹に、両刀による高速の連撃でアークレイに逃げる隙など与えなかった。


「おい元勇者。剣筋が鈍いぞ。その両手の傷のせいか?」


 アークレイはそう言うと、光の剣を振り抜いた。ヒズケイトはその衝撃に耐えきれなかったのか、右手に握っていた剣を後方に弾かれた。ラークシャサの一撃で受けた傷が深いのか!?


「あのフードの少年にやられた傷だ。恐ろしい力を使う。時に現役勇者よ。君と対等の条件で戦う為に、私の両腕を治癒する時間を貰えるかな?」


 ヒズケイトは両腕の傷が痛むのか、苦しそうにアークレイに微笑する。


「心配は無用だ元勇者。俺は圧倒的有利な条件だ戦う事に何の躊躇いも無いぞ」


 正々堂々とは無縁な不良勇者が、止めを差すべくヒズケイトに襲いかかる。だが、それはべロスの乱入によって阻止された。


「ヒズケイト!お主は退がっておれ!勇者アークレイは俺が相手をする!ああ。後で俺に厚い礼を忘れるなよ!!」


 べロスは大剣を振り下ろし、アークレイは盾でそ火花散らしながらそれを防ぐ。その時、俺の目にクーヘル長老の姿が映った。


 クーヘル長老の身体には、無数の剣が突き刺さっていた。ロイエンスが物質移動の呪文で長老の身体を串刺しにしたのか!!


「······クーヘル。モンド。へラップ。キシート。皆逝ったか。直ぐにワシも後を追うぞ」


 メグラル長老が悲痛な表情で仲間達を眺めていた。クーヘル長老を始め、空にいた三人の長老達もアミルダに斬られ、地上に落下して行く。


「メグラル長老。劇も幕が下ろされようとしている。予の心は哀愁で満たされているぞ」


 ハーガットの片目と口以外は光る木の葉で覆われていた。この呪文は拘束を目的とした物か?狂気王は身動き一つ出来ないと思われた。


「······あの少女の黒い翼。禁術に禁術を重ね。死霊にするだけでは飽き足らず。尚も命を弄ぶかハーガット」


 メグラル長老はアミルダを一瞥し、ハーガットを憐れむように見る。


「おお。あれは禁術を用いて魔物の身体の一部を死霊に移植したのだ。ただ移植しただけでは無いぞメグラル長老。より能力を発揮出来るように改良も施している」


 メグラル長老の視線に、狂気王は喜々として自分のおぞましい悪行を説明する。


「ハーガット。その白葉に身体が全て覆われた時、お前は永遠の眠りにつく。そこで己の罪深さを永劫の中で悔いるがいい」


 メグラル長老がハーガットに宣言した。正にそれは、最後に露出していたハーガットの片目を光の葉が塞ごうとしていた時だった。


「ぐうっ!?」


 その時、メグラル長老がうめき声を発した。俺は目に飛び込んで来た光景に固まった。長老の足元の床を突き破った何かが、長老の腹部を貫いていた。

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