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劇場開幕

 木張りの床の一部が地下からせり上がり、そこに立つ十人の騎士達は円陣を組むようにハーガットを囲う。


 ······あの土色の顔。騎士達は間違いなく死霊だ。俺は死霊の騎士達が手にした武器を見て妙に思った。


 あの剣や槍は何処かで見た事があった。あの黒い装飾の武器は······


「······ロイエンス。あいつが持っていた武器か!!」


 騎士達は一斉に動き出し、十法将に斬りかかった。戦斧を両手で握った騎士がグレソルに迫る。


 グレソルは余裕を持って身体を浮遊させ後方に退く。そして杖を騎士に向け風の刃を放つ。


 風が唸りを上げて空気を切り裂く。、死霊の騎士が戦斧を掲げると、風の刃は見えない壁に当たり四散した。


「······魔法障壁?あの戦斧は魔法具か?」


 グレソルは眉をしかめ騎士の戦斧を観察していた。


「その通りだ十法将よ。黒き騎士達が持つ武器。それは我が三忠臣の一人、ロイエンスが造り上げた芸術品だ」


「あの顔色は死霊。何故太陽の下で動けるの?」


 メルダが同じく騎士から距離を取り、あり得ない死霊の動きに疑問を投げかける。そう言えば、以前日中に姿を現した死霊がいた。


 その時は動きも鈍く、ハーガット軍ロコモ大尉は実験中の死霊だと言っていた。この黒い騎士達もその実験体か?


 だが、それにしては騎士の動きは早い。ハーガットは太陽の下でも不自由無く動ける死霊を完成させたのか!?


 その時、広い円盤形の舞台に複数の人影が現れた。それは、十法将が各自雇った冒険者達だった。


 冒険者達は舞台を支える石造りの脚にかけられた階段を登り、雇い主である十法将を護衛する仕事を遂行する。


 十人の死霊の騎士達は、たちまち数倍の数冒険者達に包囲された。


「ゼロ距離では障壁は張れねぇだろう!!」


 先程ハーガットに叫んでいた赤髪短髪の十法将の若者が、冒険者と交戦中の死霊騎士の頭上に静止した。


「くらいやがれ!!」


 十法将の若者は、杖から巨大な雷撃を至近距離で死霊騎士に放った。騎士は無表情で手にした剣を盾にする。


 細い光の筋が乱れ飛ぶ。死霊の騎士は黒焦げになるかと思われた。


「······なんだと?」


 赤髪短髪の若者は、驚愕の声を漏らす。自らが唱えた雷撃の呪文が、死霊騎士の剣によって阻まれた。


 いや。正確には雷撃そのものが死霊騎士の剣に留まっている。どうなっているんだこれは!?


 死霊騎士は剣を振るった。すると、暴れ狂う光の塊が騎士の剣から離れ、目の前の赤髪短髪の若者を直撃する。


「ぐわああっ!!」


 自ら放った呪文をその身に受け、赤髪短髪の若者は全身に裂傷を浴び床の上に倒れた。


「ビンセント!!」


 メルダが倒れた若者の名を叫んだ。ビンセントと呼ばれた十法将を倒した死霊騎士は、何事も無く再び冒険者達との戦いを再開する。


「ハーガット。貴様一体、あの黒い武器に何を仕組んだ?」


 グレソルが押し殺した声色で狂気王を睨む。睨まれたハーガットは平然としている。


「黒き騎士達が持つ武器はそなたの言う通り魔法具だ。道具として使用すれば魔法障壁を貼り、盾として使えば相手の呪文をそのまま跳ね返す事が可能だ」


 感情の抜け落ちた乾いた声で狂気王は答えた。あのロイエンスと名乗った白衣の男は、とんでも無い武器を造り出した。


 それは正に、魔法使いを殺す為だけに作られた武器だった。


「ウィザードキラー。奇をてらわない良い名だろう?ロッドメン一族よ」


 ハーガットが細い顎を撫でながら笑った。その笑みは、俺の背筋を冷たくした。


「メルダ!!死霊の騎士は冒険者達に任せるぞ!ハーガット本人を倒せば全てが終わる!」


 グレソルは素早く状況判断を下し、最短で目的を達成する手段を選んだ。


「偉そうに命令しないでグレソル!ここに集まった十法将は、最初からそのつもリよ!」


 メルダが鋭い声で呼応し、マントをなびかせた八人のロッドメン一族が、狂気王の頭上に殺到する。


 八本の魔法の杖が狂気王へ向けられた。その瞬間、黒い騎士達が手にしていた武器が、突如としてグレソル達の背後に現れた。


 ······あれは。あの物質移動の呪文は!!


「後ろだ十法将!!避けろ!!」


 俺は声の限り叫んだ。グレソル達が振り返った瞬間、剣や槍は十法将達に向かって飛んで行く。


「何だこれは!?」


 グレソルが叫び、十法将達は肩や足に傷を負った。武器はそのままハーガットの前に移動し停止する。


 ロイエンス。あの白衣の悪魔がどこかに潜み、物質移動の呪文であの武器を操っているんだ!

 

「······これも貴様の禁術なの?狂気王」


 脇腹を傷つけられたメルダは、傷口を手で押さえながらハーガットを睨む。


「古代呪文「物質移動」だ。見るのは初めてか?ロッドメン一族よ。これは我が腹心の得意とする呪文だ」


 メルダはまるでハーガットに勉強不足を指摘されたかの様に頬を朱に染める。


「肝心の武器を騎士達から取り上げてもいいのかしら?あの有様を見るといいわ!!」


 メルダが感情的な声を出し戦場を指差す。武器を失い、丸腰になった黒い騎士達は冒険者達に頭部を貫かれ次々に倒されて行く。


「確かに。新たな増援が必要だな」


 ハーガットが静かに呟くと、気張りの床の一部がまた下り始めた。そしてその床は新たな死霊の騎士を乗せて再び上がって来た。


「まだ死霊の騎士がいたのか!?」


 俺はその光景を見て愕然とした。完全武装の死霊騎士が、百体近く床の下から現れた。三倍以上の死霊騎士達に襲われた冒険者達は、先程とは逆の立場になり劣勢に立たされた。


「さて。もう打つ手は皆無か?ロッドメン一族達よ」


 ハーガットの乾いた声の質問にメルダ達は歯ぎしりをしていた。ただ一人。グレソルだけは不敵な笑みを浮かべていた。

 


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