表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/69

十法将

 白い法衣を着た男は長身だった。不良勇者アークレイより頭の一つ高い。黒髪に面長の顔。


 両目は丸く見る者に愛嬌を感じさせる。年齢は二十代後半だろうか。唯一レファンヌの格好と異なるのは、男が真紅のマントを身に着けている所だった。


 男は周辺に散乱した騎士達の死骸を見回し、溜息をついていた。


「ロッドメン一族が誇る十法将様がこんな所で何をしているの?ノホット」


 レファンヌが腰に手を当て長身の男に話しかけた。十法将?あ、あの紅いマントの男が?


「······お前は?聖女候補レファンヌか?何故お前がここに?」


 ノホットと呼ばれた男は、驚いた様子でレファンヌ。そして俺達を見た。


「質問を質問で返さないでくれる?何故決戦前の一族主力がこんな場所にいるのよ?」


 レファンヌの不機嫌そうな再質問に、ノホットは愛嬌のある顔で苦笑する。


「俺は一族の跡目争いには興味が無い。この場所でハーガットの腹心が怪しげな研究を行っていると聞いてな。調査に来たんだ」


 以前レファンヌは言っていた。ハーガットの首を取った者はロッドメン一族の後継者になれると。


 このノホットは、どうやらその手柄争いには参加しないらしい。


「······その情報源。ひょっとしてカミング?」


「そうだ。カミングは今やハーガット軍に深く食い込んでいる。奴は殆ど二重密偵の状態だ」


 レファンヌの問いにノホットは即答した。以前、街がハーガット軍に攻められた時、カミングは兵力の数を調整させたと言っていた。


 あの優男がハーガット軍に潜り込み、ロッドメン一族に情報を流しているのか?


「その怪しげな研究って。武器開発の事かしら?」


「その様だな。小屋の中にはそれらしき設備が残されている。この死体の有様を見ると、腹心は去った様だな。そちらの被害状況は?」


 ノホットの質問に、レファンヌは俺の方を一瞬だけ振り返った。


「······心に傷を負った者が一名ってトコね」


 レファンヌの言葉は、俺の胸の痛みを再開させた。


 

 俺達はハーガットの居城である王都に向けて再び動き出した。その先頭をノホットが歩いている。


 十法将の一人であるノホットは、王都までの近道を教えると気さくに言ってくれた。


「キント。君は半分死霊なのか?しかも同じ様な知り合いがロイエンスに連れ去られた?」


 ノホットは俺の身の上話を真剣に聞いてくれた。俺の方も愛嬌のあるノホットには何故か警戒心を抱かず素直に話してしまう。


 俺はノホットの身に着けた真紅のマントに目が行った。レファンヌによると、このマントこそ、ロッドメン一族で最高実力者の十人の証らしい。


 俺達は森を抜け険しい山道に入った。ノホットは大柄を生かし、俺達の重い旅道具を運ぶ手伝いをしてくれる。


「で?決戦とやらはいつ始まるの?興味は無いけど一応聞いておくわ」


 薬草一つ持とうとしない聖女候補は、足場の悪い坂道を軽快に歩きながらノホットに質門する。


「いつ始まってもおかしくないな。一族達は主だった砦や城は全て落とした。ハーガットの王都は丸裸状態だ。だがな。問題が無い訳じゃないんだ」


 ノホットが表情を曇らせた。レファンヌは心当たりがあるとばかりに短く笑った。


「大方、優等生同士が非建設的な議論を交わしているんでしょ?」


「······その通りだ。グレソルとメルダが言い争っていてな」


 レファンヌの問いにノホットは苦笑いで答える。十法将の中でも抜きん出た実力者。そらがグレソルとメルダの二人らしい。


 今回戦いに参加しているロッドメン一族の殆どが、このグレソルとメルダの二つの派閥に分かれていがみ合っている。


 ハーガットの王都に攻め入る戦術を巡ってグレソルとメルダは対立しているらしい。これからハーガットと決戦って時に、内輪もめしている場合だろうか?


 俺は他人事ながら心配してしまう。だが、俺にはハーガットの王都に向かう理由が一つ増えた。


 ハーガット自身を倒す他に、アミルダの奪還だ。アミルダを救い出し、治癒魔法で人間に戻す。


 俺は誰に言う訳でも無く、心にそう誓っていた。


「全く。何時まで歩き続けるつもりだ?さっさと風の呪文で移動すればいいだろう」


 最後尾を歩くアークレイが不平を漏らす。不良勇者に言わせると、徒歩で目的地に向かうなど前時代的の極みらしい。


「ならば貴様一人で飛び立ち、ハーガットの王都に突入するがいい。誰も止めんぞアークレイ」


 アークレイへ敵意を微塵も隠そうとしないメルサルが、軽蔑したよう不良勇者を睨む。


「おいおいメルサル。俺一人で全て片付けてしまったら、ロッドメン一族の立つ瀬がないだろう?」


 アークレイは抜け抜けと言ってみせる。勇者と魔王の舌戦を聞く事が普通になってしまった俺達は、なんとか山の頂上に辿り着いた。


 頂上から下を見下ろすと。そこには長大な壁で囲まれた街が見えた。その街の中心に城が鎮座している。


「······あれがハーガットの王都か」


 俺の眼下には、倒すべき者と救うべき者が居合わせる場所が映っていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ