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白衣の悪魔

 昨晩。たった一晩前だ。それまで、アミルダは部下達を完全に統率していた。騎士達もアミルダに心から従っている様子だった。


 だが、虚ろな表情の騎士達の中に、アミルダは紛れ込むように立っていた。騎士達に凛々しく命令する事も無く、死人と同様の顔色のその姿は、群衆の一つの影でしか無かった。


「······アミルダ?嘘だろう。そんな」


 俺の声とラークシャサを握る両手は震えていた。なんで。なんでアミルダが死霊になってしまった?


 騎士達も側にいた。何よりもアミルダは剣の達人と部下は言っていた。俺は白衣の男が視界に入った。


 ······あいつか?あいつがアミルダ達を死霊に変えたのか?この状況下に置いて、それ以外の答えなど無かった。


「······畜生ぉぉっ!!」


 俺は絶叫しながら駆け出した。死霊と化した騎士達の端をすり抜け、白衣の男に向かって行く。


「ラークシャサ!!」


 俺は神喰いの剣に絶叫した。その瞬間、柄に空いた三つの穴から三匹の蛇が姿を現す。蛇達は空腹を満たすが如く俺の腕に噛み付く。


 ラークシャサの刀身が紅く光り輝く。俺は勢いそのままに白衣の男に向かって剣を振り下ろす。


 白衣の男の前で大きな炸裂音と共に爆発が発生した。殺意に塗り固められた俺の意識は、白衣の男を確実に仕留めたと確信した。


 粉塵は拡散していたが、直に視界が開けた。俺は目の前の光景に絶句した。白衣の男は平然として立っていた。


 その代わり、白衣の男の周辺に身体が四散した騎士達が倒れていた。ただ一人。身体中に深い傷を負ったアミルダが白衣の男を守るように立っていた。


「······何で?アミルダが?」


 俺は眼前の状況が全く理解出来なかった。何故白衣の男が無事で、何故離れていたアミルダ達が白衣の男の前にいるんだ?


「古代呪文「物質移動」ね」


 レファンヌの低い声が俺の後ろから聞こえた。古代呪文?物質移動?


「その通りだ。私はその呪文も以って騎士達を私の目の前に移動させた。壁として使用する為にな。しかし驚いたな小僧。お前の一振りは死霊三十体を全滅させたぞ」


 三十体?俺は白衣の男のその言葉に神経が逆なでされた。騎士達は無理やり死霊にされ、もう人としては数えても貰えないのだ。


 その時、全身に重症を負ったアミルダが倒れそうににり、自ら握った剣を地に刺し身体を支える。


「いや。正確にはその数は、もう直ぐ三十一体目になるかな?」


 アミルダを一瞥した白衣の男は冷たく言い捨てた。その言葉が、俺の頭の中を殺意で埋め尽くす。


「ああああっ!!」


 俺は再びラークシャサを振り上げ、白衣の男に向かって行く。その瞬間、俺の目の前にレファンヌとマコムが現れた。


「······!!」


 俺は必死に両腕の勢いを止めようとしたが、間に合わないと悟った。その瞬間、レファンヌの長い足が俺の腹部に突き刺さった。


 俺は後方に飛ばされた。背中から倒れて、腹部の傷に悶え苦しむ。レファンヌのブーツの底は凶器だ。


 その凶器は俺の腹部をえぐり出血を強いた。だが、そのお陰でレファンヌとマコムを傷付けずに済んだ。


「······呪文の使い所を心得ているようね」


 レファンヌが怒気を含んだ声で白衣の男に振り返った。白衣の男はレファンヌとマコムを物質移動の呪文で自分の前に移動させ、俺への盾として利用したのだ。


「私を誰だと思っている?ロイエンス。この名はハーガット様の三忠臣に数えられる名だぞ」


 ロイエンスと名乗った男が指を鳴らすと、奴の目の前に黒く装飾された剣や槍が突然十本現れた。こ、これも物質移動か?


「あんたの名前なんて知ったこっちゃないわね。その武器類はあの小屋の中から移動させたようね。あの小屋に籠もるのがあんたの仕事って訳?」


 レファンヌは戦斧を構えるマコムを制しながら、ロイエンスに探るように質問する。


「その通り。私の仕事は武器製作だ。騒がしい場所は嫌いなのでな。静かな場所で仕事をしていたら、この騎士達が私の神聖な仕事を妨げた。こいつ等はその報いを受けただけだ。死体を死霊にしたが、余り役には立たなかったな」


 ロイエンスは肉塊と化した騎士達の死骸を汚い物を見るような目つきをした。その姿に、俺は再び怒りが込み上げて来る。


「ハーガット軍は今決戦に向けて忙しい筈よよ。こんな所でのんびりとしててもいいの?」


 レファンヌの言葉に、ロイエンスは改めて金髪の聖女候補を凝視する。


「······その白い法衣。お前はロッドメン一族の者か。お前の言うその決戦の為に、私は力を尽くしていたのだ」


 ロイエンスは足元に落ちている剣や槍を満足そうに眺める。


「この武器は私の技術を全て注ぎ込み仕上がった作品だ。数は十本。お前達ロッドメン一族が誇る十法将を葬るのに丁度良い数だろう?」


 ロイエンスは細い顎を指で撫でながら不敵に笑った。


「······なる程。古代呪文とその武器を使ってアミルダ達を殺したのね。一族も十法将もどうでもいいけど、寝覚めの悪い物を見せてくれた礼はしてあげるわ」


 話は終わったとばかりに、レファンヌは銀の杖を構えた。その時、よろけた身体を不安定に立たせたアミルダが俺を見た。


「······逃げて。キ······ント」


 俺は自分の聴覚を疑った。死霊は自我を失う。その死霊となった筈のアミルダが、その口を開き言葉を発した。


 




 


 

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