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聖女の宣戦布告

 一族の「聖女」は数百年に一度現れるらしい。類まれぬ美貌。輝く金髪の髪。そして巨大な魔力。


 それが「聖女」の条件だ。聖女が現れた代は、例外無くロッドメン一族は力を盛り返しているらしい。


「聖女の条件はもう一つあるぞ。それが何か分かるか坊主?」


 アークレイが薄ら笑いを浮かべて俺に質問してきた。わ、分かる筈がないだろ。ん?ひょっとして「清らかな心」とか?


「外れだ坊主。もう一つの条件は「純潔」だ。まあ聖女には当然の事だろう」


 言い終えたアークレイは豪快に笑った。く、くそ。何だか、からかわれた気分だな。


「この好色な男の個人的見解は捨て置くとして、あのレファンヌと言う娘はこの時代の聖女として選ばれたのだ」


 メルサルは綺麗な瞳を細め、アークレイを不愉快そうに睨んだ。


 二百年振りの聖女の誕生に、一族はレファンヌに期待と希望を見出した。だが、それは失望に変わった。


 レファンヌは聖女としては、余りに問題児だったのだ。一族の歴史と年長者に一片の敬意も払わず、暴言と破天荒な行動を繰り返した。


 それでも一族の長老達は粘り強くレファンヌを聖女に据えようとした。そして決定的な破局か訪れた。


 正式に聖女に任命する授与式で、レファンヌは暴れまくり、式をぶち壊した。怒り心頭の長老達はレファンヌの両腕に鎖を巻いた。


 それは、魔力を封じる鎖だった。その鎖を解く条件は一つ。死霊の涙を鎖に落とす事だった。


 かくしてレファンヌは追放同然で一族を追い出され、魔力を取り戻す為に死霊を狩る日々を送る事になったと言う。


「······これらは長老から聞いた話だ。あの金髪の娘の詳しい内情はこれ以上は分かりかねる」


 メルサルは目を閉じ、ため息をついた。長老から依頼されたレファンヌの護衛は、今しがた本人に断られた所だ。


 メルサルとアークレイが何か言葉を交わしていたが、俺の耳には入らなかった。俺は自分がこれからどうするべきか、疲れた頭で考えていた。


 

 翌朝、宿屋の入り口で俺とマコムは立っていた。程なくして白い法衣をまとったレファンヌが扉を開けて現れた。


「何よ二人共。私を見送りに来たの?」


 昨夜の疲れを微塵も見せず、レファンヌは張りのある声を発した。


「レファンヌ。俺とマコムも一緒に行くよ」


 俺はレファンヌの瞳を真っ直ぐに見つめた。レファンヌも俺を見返す。


「私一人で行くって言った筈よ。キント。マコム。これからの戦いに加われば、間違いなく死ぬわよ」


 レファンヌの形のいい唇から不吉な予言。否。断言が成された。だが、俺には迷いは無かった。


「聞いてくれレファンヌ。俺はハーガットの死霊の軍隊に一度殺された。俺の村も。他の街や城も。国さえも。数え切れない人達がハーガットによって犠牲になった」


 俺が何故死霊の身から正気を取り戻したのか。それは、無念にも理不尽に命を奪われた人達の仇を討つ為だと思うようになった。


「······ハーガットを倒す為なら死んでも構わない。そう言う事?キント」


「ああ。一度は死んだ身だ。それに、魔法使いのレファンヌには盾が必要だろう?」


 俺は、今自分が出来る精一杯の背伸びをした笑顔をレファンヌに見せた。


「上等よキント。その言葉に二言は無いわね」


 俺の言葉がレファンヌに届いたのか、彼女も笑みを俺に向けてくれた。


「レファンヌさん!私もやります!ハーガットを倒せば、この街も平和になりますから」


 マコムも元気良く叫び、俺達三人は行動を共にする事となった。


「ハーガットから世界を救う為かい?金髪のお嬢さん」


 俺達三人から少し離れた場所から、アークレイが壁に寄りかかりながら問いかけてきた。不良勇者から少し離れた場所に、気品に溢れた魔王も立っていた。


「世界の平和なんて知った事じゃないわ。あの血色の悪い男の鼻面に、私のブーツを沈めに行くのよ」


 レファンヌは不敵に笑った。それはロッドメン一族聖女の、狂気王ハーガットへの宣戦布告だった。

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