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美貌の魔王

 「勇者」の定義は俺には良く分からなかった。田舎の片隅で暮らす俺には無縁の言葉だからだ。


 後でレファンヌから聞いた話だが、勇者とは自分で名乗れる物じゃないらしい。常人とは一線を画した能力とあり得ない幸運を持つ者。


 数々の武勇伝を積み上げて行く内に、自然と周囲から勇者と呼ばれるらしい。そして人間の世界に勇者と呼ばれる者がいれば、魔族でも「魔王」と呼ばれる者がいた。


 魔王も勇者と似たような理由でそう呼ばれる様になるらしい。勇者アークレイが追い回している相手。


 美しい顔をした魔族。なんとメルサルがその魔王と呼ばれる人物らしい。それは、ハーガットの問いかけによって判明した。


「······その魔法石の杖。メルサルと呼ばれる者よ。そなたは魔王メルサルか?」


 ハーガットの血の通っていないような乾いた声の質問に、メルサルは非友好的な視線を狂気王に送る。


「······だったらなんだ?人間よ。この破廉恥勇者同様、私は今取り込み中だ。そちらは戦闘中らしいが、こちらを気にせず続きをするといい」


 メルサルの返答に、ハーガットは深いため息をついた。


「······勇者アークレイに魔王メルサル。これ程の役者が余の目の前に集うとは想像の外だった。何たる事だ。余の描く劇に早急な修正が必要になるな」


 ハーガットが小声でブツブツと呟いていたが、俺には意味が分からなかった。だが、俺は藁を掴むような思いで叫んだ。


「勇者アークレイ!この金髪の男は狂気王ハーガットだ!頼む!コイツを倒してくれ!」


 俺の叫び声は確実にアークレイの耳に届いていた筈だった。だが、勇者から返って来た言葉に俺は驚愕した。


「断る。俺は今休暇中だ。狂気王だろうと何だろうと知った事では無い」


 アークレイの表情はあっけらかんとしていた。俺は口を開いたまま固まった。何で?何でだよ!アンタ勇者なんだろ!?


「······見下げ果てた男だなアークレイ。何故こんな悪漢が、勇者などと崇められるのか理解に苦しむ」


 メルサルが呆れた口調で怠慢勇者を弾劾した。


「それは誤解だメルサル。俺は何も勇者と呼んでくれとは誰にも頼んでいない。周囲が勝手に。そして無責任にそうもてはやしているだけだ。まあ、俺のだだ漏れするしか無い才能と魅力を持ってすれば、致し方ないがな」


 アークレイは胸を反らし堂々と。そして偉そうに言い切った。


「······ならば今日こそ貴様を葬ってやるぞアークレイ。それが虚名に踊らされた人間達の為にもなるだろうよ」


 メルサルの右手に握られた魔法石の杖の先から黒く輝く鞭のような物が出現した。メルサルは杖を振るった。


 黒光の鞭はしなり、恐るべき速度でアークレイ喉元に迫った。勇者はそれを愛剣で弾き返す。


 ······何だ?今度はアークレイの剣が白銀色の光に包まれている。メルサルの黒い鞭と言い、何なんだこの二人の力は!?


「問答無用かメルサル。だが、力ずくは俺も嫌いでは無い。恥じらうお前を押し倒すのも悪くないな。ふふふ」


 アークレイが不気味な笑いを浮かべ、メルサルは嫌悪の表情に変わる。コ、コイツは本当に勇者なのか!?


「やれる物ならやってみろ!この破廉恥男めがっ!!」


 メルサルが凄まじい形相で黒い鞭を繰り出す。高速の鞭の連撃をアークレイは光の剣で全て叩き落とした。


 二人の鞭と剣がぶつかり合う度に雷のような光が走り、周囲に風と砂埃を撒き散らした。


「ぬん!!」


 アークレイが気合の声と共に弾いた鞭が軌道を変え、それがなんとハーガットに向かって来た。


 ハーガットは跳躍して黒光の鞭を避けた。いや、跳躍じゃない。コイツ、空に浮かんでいる!?


「キント。背中を貸しなさい」


 聞き慣れた声が俺の後ろから聞こえた。振り返ると、そこにレファンヌが仁王立ちしていた。


「レ、レファンヌ!?どうして?枝に拘束されていた筈じゃ」


「アンタとハーガットが呆けている間に、マコムが枝を切ってくれたのよ。それより背中を借りるわよ!」


 レファンヌは俺の返答を待たずに走り出した。そしてしゃがみ込む俺の背中を台にして飛び上がる。


 その先には、空に浮かぶハーガットがいた。




 









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