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空から落ちて来た勇者

 俺は間を置かずハーガットに接近する。紅い光に包まれたラークシャサをハーガットに向けて振り上げた。


 だが、再び俺の剣は見えない壁に止められた。くそっ!またこの壁か!だが、俺の耳に亀裂が走る音が聞こえた。


 その刹那、俺の剣は見えない壁を突破した。ハーガットは後退してそれを避ける。


「余の「樹木の根」を払い、魔法障壁を破るとはな。面白い。そなたの持つその剣は、如何なる代物だ?」


 ハーガットは物珍しそうに俺の剣。否、俺の腕を貪る三匹の蛇を見ていた。


「マコム!レファンヌを頼む!」


「は、はい!」


 俺はレファンヌの介抱をマコムに託し、ハーガットに向き合う。


「ラークシャサ「神喰いの剣」と呼ばれた剣だ」


「······ほう。神を喰らうとは大仰な名だな。呪いの剣の類か。だが、血肉を喰われたそなたの身は只では済まぬ様に見えるが?」


 ハーガットの言う通り、三匹の蛇は俺の肉を喰い続けて行く。確かに常人ならこの剣を使う事など出来ない。


「生憎俺の身体は半分死霊だ。腕が半分残れば、時間はかかるが再生する」


「半分死霊だと?ではそなたは、元は余の死霊軍団の出か?」


「無理やりその軍団に入れられたんだよ!」


 俺は地を蹴りハーガットに向かって行く。この剣はどうやら使い手の血肉を代償に恐ろしい力を発揮するらしい。


 だが、それは半分不死の俺でも時間制限つきだった。早く剣の使用を止めないと、俺の腕が全て三匹の蛇に喰われてしまう。


 ラークシャサなら。この剣ならハーガットを倒せる!!一撃だ。一振りで決めてやる!


「······え?」


 突然俺の身体が軽くなった。身体の均衡も不安定になり足がもつれる。何だ?何が起こった?


 俺の目の前に、両手で握られたラークシャサが落ちた。一瞬の自失の後、強烈な痛が全身を駆け抜ける。


「ぐわああっ!?」


 地面に落ちた血塗れ両手首は俺の物だった。どうして俺の手首が?これは、以前レファンヌが使った風の刃の呪文か?


 考える暇も無く、俺の身体は地面に叩きつけられた。


「きゃあっ!?」


 後ろからマコムの悲鳴が聞こえた。俺達は無形の圧力で押し潰されそうなる。こ、これも呪文かよ!?


「地下重力の呪文だ。心配は無用だ。威力は全身の骨が砕ける程度に留めよう。そなたは面白い逸材だ。金髪の聖女と共に連れ帰るとしよう」


 ハーガットが地に這いつくばる俺を見下ろしていた。くそ。畜生!畜生!!俺は悔し涙を流しながら意識を失いそうになった。


 その時、空から何かが落ちてきた。地面に落ちたそれは大きな音を響かせた。それは二つの人影に見えた。


 二人はもつれ合い、お互いに離れ距離を取った。ハーガットもその光景を見たせいか、地下重力の呪文は止んでいた。


 一人は金色の鎧を纏い、剣と盾を持っている。大柄な体格だ。黒髪に精悍な顔。年齢は二十代後半だろうか。


 正に戦士と言った風貌だ。その戦士と睨み合っているのは小柄な魔族だ。茶色い長衣を着ている。


 波打つ長い黒髪を風になびかせたその顔は、とても美しかった。年は二十歳前後。右手には何かの石が埋め込まれた杖を持っていた。


「メルサル!俺から一体どこまで逃げるつもりだ?いい加減に素直になって俺の愛を受け入れろ」


 鎧の戦士が大声を上げた。メルサルと呼ばれた魔族は肩を震わし怒りの表情だ。


「いい加減にするのは貴様だアークレイ!!どこまで私に付きまとう気だこの変質者が!!」


 メルサルが絶叫する。アークレイと呼ばれた戦士はため息を漏らす。


「······やれやれ。困ったお嬢さんだ。私の情熱的なアプローチにいつも照れおって」


 アークレイの言葉に、メルサルは再び口を開く。


「誰が照れておるか!!それに何度言わせる!私は男だ!!」


 メルサルは波打つ髪を振り乱し叫んだ。お、男?あんなに綺麗な顔をして、あの魔族は男なのか?


「つまらぬ戯言は止めろメルサル。俺は男色では無い。つまり、俺が見初めたお前は女だと言う事だ······ん?」


 アークレイが胸を張って語る途中、俺達に気付いたらしくこちらを見た。


「······ここは街の中か。随分と小さい街だな。おい、お前等。私達が落下してきた際、怪我でもしたのか?三人も倒れているじゃないか。ん?その内の金髪の女はいい女だな」


 アークレイは好色そうな笑みをこぼし、レファンヌを見つめた。


「貴様の目は節穴かアークレイ!あの黒い鎧の兵士達が目に入らないのか!」


 メルサルが不快そうに叫ぶ。俺達の周囲には、マコムが蹴散らした兵士達が遠巻きにこちらを伺っていた。


「······その金色の鎧は「王神の鎧」か?盾は「戦鬼の盾」そして剣は······「天破の剣」か」


 ハーガットがアークレイの装備を見ながら口を開いた。その声は、どこか好奇心を含んでいるように聞こえた。


「なんだ顔色の悪いおっさん。物知りじゃないか。それとも俺のファンか?生憎だが今はプライベートの上に取り込み中だ。サインは遠慮してくれ」


 アークレイがふてぶてしくハーガットに答える。


「その武具を身につける者よ。そなたは勇者アークレイに相違ないな?」


 地に倒れる俺達に興味を失ったかのように、ハーガットはアークレイを興味深げに眺めていた。


 


 


 

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