18 報告ですか?
ご無沙汰してます。すみません。
清水は、弓木探偵事務所があるビルの入り口で、インターホンを押せずにいた。
それは、入り口で清水を睨みつける、八重垣と健哉がいたからだ。
「こんな時間に、何か?」
八重垣の切れ長の目が細められ、清水をさらに睨みつける。
清水が弓木を訪れるのは、捜査に進展があったか、何か新たな事実が出てきたのだろうと頭ではわかっているのだが、それでも八重垣と健哉は、弓木を困らせる清水が嫌いなのだ。
八重垣の睨みで思わず後退りした清水は、刑事の自分が一般人に怖気づくわけないと、咳払いをしてから八重垣の目を正面から見た。
「上司から伝言を頼まれました。弓木探偵に取り次ぎをお願いしたい」
「…わかりました。どうぞ」
睨むのはやめたが眉間のシワはそのままで、健哉は入り口のオートロックを解除して、清水を中に通した。
八重垣も渋々、後に続いて事務所のある三階まで階段を上った。
探偵事務所には、煌々と明かりがついていたのに、室内には誰もいなかった。
「あの、弓木探偵がいないようですが?」
清水が室内を見回しながら言うと、健哉がパソコンを操作しながら言った。
「弓木さんは外出しています。しばらくしたら戻るので座って待ってください」
「そう、ですか。どちらへ?」
清水の言葉に答えたのは、給湯室から出てきた八重垣だった。
「プライベートなので、事件の調査とは関係ないです」
ニコリともしない八重垣は、しかし昔の習慣で来客用にお茶を準備して応接セットのテーブルに置いた。
「調査はどこまで…」
「先にそちらの話を聞きましょうか」
清水の言葉を遮ったのは、ちょうど事務所に戻ってきた弓木だった。
「おかえりなさい。弓木さん」
「うん。ただいま。留守をありがとう」
清水に向ける作り笑いとは雲泥の差、そんな爽やかな笑顔を八重垣と健哉に向ける。
遅くなりましたが、今年もよろしくお願いします。