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無名  作者: 天空瞳
15/21

 15 知らなかったですか?

捜査員は捜査本部に詰めており、刑事課に人は清水しかいなかった。


清水は、刑事課の自分のデスクで頬杖をついて、捜査資料を穴が開くほど見つめる。


「そんなに見ても何も浮かばないぞ」


驚いて振り向くと、缶コーヒーを片手で持った五十嵐刑事課長がいた。


「ほい」


そう言って投げ渡された缶コーヒーを、慌ててキャッチして、清水は五十嵐に視線を向ける。


「帰ったんじゃなかったですか?」


「あー。ちょっと野暮用」


言葉を濁した五十嵐は、清水の横の椅子に座り、清水が見ていた捜査資料に手を伸ばした。


「弓木のことだが」


「はい」


「…清水から見て、どう思う?」


「どう、と言われますと…」


「この事件、解決できそうか?」


ページをめくる音が、二人の間で響く。


「俺は、あの人たちに頼らなくても、犯人を挙げてみせます!」


「おまえがぁ?」


清水は憮然とした顔で、五十嵐を見る。


「はい!」


「そうだな。じゃあ俺も、覚悟決めるか」


「はい?」


五十嵐の言葉に、清水は首を傾げる。


「いや、こっちの話だ。よし、本部戻るぞ。何か進展あったかもしれんからな」


「はい!」


深夜の捜査会議のあと、清水は一人で検死を担当した医師のところに来ていた。


「先生、夜分にすみません」


「いいえ、私もご報告したいことがありましたので」


五十歳半ばの男性医師は、診察室の椅子を清水に勧める。


「報告、ですか?」


「ええ。今回のご遺体のことなんですが、男性の血中酸素が低かったことが判明しました。報告書にしてお渡ししますが、いち早くと思いまして」


「なるほど。ありがとうございます。他に気になったことなどありませんか?」


「他、ですか?んー。もう報告させてもらったこと以外は。あ、お腹の子供のD N Aはまだなのでもう少し待ってくださいと、五十嵐課長さんに伝言お願いします」


「お腹の、子供?」


清水は愕然として、男性医師の顔を凝視した。


「はい。それは最初に報告したはずですが?妊娠三ヶ月だった、と」


困惑した顔の男性医師は、嘘を言っているようには見えなかった。


「そ、うですか。わかりました。伝えておきます……」


お辞儀をして、清水は急いでその場を後にした。


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