14 ある夜の出来事
書き直しました。
いつも、弓木と八重垣、健哉の三人で訪れる小料理屋。
そこは壮年の夫婦が営んでいる、付近でも人気の店だ。
夕方から開店して、深夜まで営業しているので、客層は若い人から年配の人までいろいろだ。
フロアを仕切る女性は、女将さんと呼ばれ親しまれ、ご主人と呼ばれる男性は寡黙だが、客から一目置かれている。
その店の一角。カウンターの端に横並びで座り、八重垣と健哉は料理と少しの酒を嗜んでいた。
そこへ、女将さんが声をかける。
「おや、今日は二人だけなのかい?」
「はい。弓木さんは考えたいことがあるらしいので」
「ああ。それでかい」
女将さんが面白そうに笑みを浮かべる。
「どうしたんですか?」
八重垣と健哉は、首を傾げて女将さんを見た。
「さっき五十嵐くんから、弁当を一つ探偵事務所に出前して欲しいって電話があったんだよ」
「それが、どうゆう?」
刑事課課長の五十嵐が、嫌がらせかと、健哉は眉間にシワを寄せる。
「旭土くんは、刑事の頃から考え事をすると飲食を忘れるからね」
驚いて、八重垣と健哉は目を見開く。
「そう、だったのですか」
「だからあんたたちも、旭土くんのこと、頼んだよ」
女将さんの笑顔に、二人は力強く頷いた。
「もちろん!」
二人の笑顔を見て女将さんは、嬉しそうに頷き、注文を叫ぶ客の所へと移動していった。