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無名  作者: 天空瞳
12/21

 12 考察します?

よろしくお願いします。

大人しくなった清水を横目で見て、弓木は心のなかでため息を吐いた。


だけど大人しくなったのは、実は清水だけではなかったのを、弓木は気づかなかった。


八重垣と健哉も、弓木の怒りに当てられ、肝を冷やしていた。


弓木に気づかれないように八重垣と健哉は顔を見合わせ、頷いた。


決して弓木を怒らせてはならない、と。


「じゃあまず、死因についてだけど」


「はい。資料を見る限り複数箇所刺されての失血死となっていますが、気になるのは血中に睡眠薬の成分も、アルコールも検出できていない、ということでしょうか」


八重垣は手元の資料を見ながら、言った。


「うん。そうだね」


弓木と同じ意見だったのが誇らしくて、八重垣はニマリと笑みを浮かべそうな口元を、考えている振りをして手で隠す。


弓木は、清水から受け取った資料から、二枚写真を取り出してデスクに置いた。


「これは……」


「今回の事件で遺体となった、二人の写真だよ」


健哉と八重垣は、写真をじっくりと見つめる。


そこには、衣服を真っ赤に染め、床にうつ伏せに倒れている男性と、湯船で首から血を流している女性が写っていた。


写真から、男性は大柄で筋肉質。女性は華奢な身体だった。


「例え男性が油断していたとしても、こんな包丁で刺されたら抵抗するだろう?」


弓木はもう一枚写真を取り出し、デスクに置く。


「凶器、ですか」


「そう。どこにでもある、包丁だ」


刃渡り十八センチほどの包丁が、写真に写っていた。


「そうですね。だけどあの部屋には……」


健哉がパソコンを操作して、さっき撮ってきた写真をモニターに表示させる。


「どの部屋にも争った後がない」


「どういうことでしょうか?」


弓木は首を傾げた八重垣から、視線を応接セットのソファに座る清水へと移した。


「清水刑事」


「はいっ!――っごほん。なんですか?」


声をかけられると思っていなかったのか、清水は弓木の声に目に見えて驚いた。


それを誤魔化すように咳払いをして、平静を装う。


一瞬呆れたような顔をして清水を見たが、弓木は作り笑いで清水に聞いた。


「血中に薬剤成分なし、アルコール成分なし、部屋に争った後なしのこの報告を、捜査本部はどうみているのでしょうか?」


「あ、ああ、そのことですか。それは……。ん?これ一般人に言ってもいいのか?」


語尾で自問しだした清水に、弓木は冷ややかな笑みを浮かべる。


弓木の冷笑を見て、清水は青ざめ話し出す。


「捜査本部では、検出できない薬剤を使用したのではないか、と薬剤の洗い出しをしています!」


「……。そうですか。ありがとうございます」


死体検案書を見ながら、弓木は考える。


首を絞められた形跡もなし、注射痕もなし、スタンガンを押し当てられたような火傷もなし。


心臓発作を起こした訳でもなく、持病もなかった。


「一体、どうやって……」


大柄の男を華奢な女性が、抵抗もさせずに複数箇所刺して殺す。


弓木の思考は、答えを見いだせずにいた。

独学だと限界が……

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