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検証

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話はできているのに…

口惜しいデース…

 広く開いた窓辺は、手早く足を踏み外せそうな意匠を凝らせていた。


 喩えるならばそれは『窓』と呼ぶよりは『通路』と見る方が正しく、覗き込めば遥かな階下に街並みが伺える。

 実質、この【塔】から脱け出すには飛び降りた方が早いと聞く。

 出来ることならば執りたい手段では決して無いが、緊急時に逃れたとしても生き残ることは出来るのだと、他でもない、『これ』に挑もうとしていて先を譲ってもらった『先輩方』にそう教わったのだ。


 『これ()』の正式名称は【全階層未明・神秘存在放逐型・一人用探索証明所】。

 簡単に言ってしまえば、【従神】となる以前の神秘存在(フォークロア)徘徊する(うろつく)ダンジョンだ。


 所謂、極々超現実的なVR空間、であるのだと云う。

 それを語る先輩方の眼差しは、決してモノを詳しく知らない新入生を騙して貶めてやろうとか、そういう不当な思惑を抱いている様子では無かった。



 ニッカにそれほどの『人を見る目』が備わっているという自負は無いが、根本的に学習機関の名を冠している以上、『人死に』に意気込んで繋がるほど生徒の思考が世紀末(モヒカン)的ではない、と思いたい。


 希望的観測に近しいが、その辺りは呑んで『信じ』てみないとどうしようも乗り越えられない問題だ。

 社会の信用は、ある程度の許容と許諾が付随するものなのである。


 さて。

 回顧したところで、ニッカのこの場に居る理屈を語らねばならない。


 そのためには多少飛び石の如くに話を飛ばした、『間章』のような対処にも付き合わせなければならない話だ。

 その一助となる、とある台詞をニッカは思い起こす。



『また召喚に来てくださいね! 絶対! 絶対ですよ!?』



 真に迫る勢いで、マドカに懇願されてしまった記憶だが。


 なんでも、元来『従神の召喚』は相応の宝石を幾つか消費することで執り行える選択であったらしく、学園で過ごして居ればそれらを得る機会にも恵まれているのだという。

 そうして育成と競合、召喚と簒奪を繰り返して、召喚士共々従神を鍛えて往くのが、この学園の基本方針であるらしい。


 『簡易召喚』と呼ばれるモノは刻印を通じても執り行えるらしいのだが、先ほどのような高位神格を呼び出すには神格を受け止めるだけの規模が得られない。

 よって、より強力な従神を得るためには、この施設は必須な場所であると力説されたのである。


 つまり、アレに遭遇したくないのならばこの場には二度と来なければよい。

 ニッカはそう受け止めた。

 聞き入れてやれよ、言い分を。



 それはそれとして、彼には早々に把握しておかなければならないことがあった。

 それは自身が選んだ相棒、【最初の従神】が『どれだけのことをできるのか』という『現状』である。


 だからこそ、それを実践的に学習できる施設は無いモノか、とニッカはこの場所を突き止めた、突き止めてしまったわけである。

 汐 丹柄、ゲームは説明書を読まずに、感覚で学ぶタイプであった。



「ちょっとあなた、聴いてるの?」



 だからこそ、(バチ)が当たったのだろう。

 高圧的に己を苛む『現実の声』に、ニッカは嘆息を吐いた。


 先にも言った通り、此処は学園の施設であるから、命の保証もきっちりとある。

 万が一、死ぬようなメに遭ったとしても、彼らは入口へ戻されるだけで済んで、喪うモノはそうそう無いと聞く。

 この場所は所謂『お試しダンジョン』みたいな、ソシャゲで見れる体力か行動力かを喪失せずに回して均せる空間なのだと、ニッカは当たりを付けていた。


 その連想は概ね正解で、だからこそこの場所は『一人用』とわざわざ銘まで打たれていたのである。

 では、『彼女』は『いったいなんなのか』。


 透き通るような金糸のストレートロングを振り撒いて、

 細過ぎず太過ぎない、女性らしい魅力的なラインで背筋を伸ばした彫刻のように真白い肌を顕わにし、

 その身を網目のようなシースルーを細部に繕われた深紅のドレスで包み、

 不敵な笑みを浮かべた黒紅(こっこう)に揺れる宝玉のような瞳に見下ろされ、

 豪奢に拵えられた黄金の金冠を片手にする美女は、


 ――果たして、いったいなんなのか。



「それで? 私じゃなくて、そのスライムを、『選んだ』、理屈を、しっかりと伝わるように、説明してほしいわね?」



 足元には、震えている桃色の粘体が居る。

 その震えている理由は恐怖ではないと思われるが、そうだとしても納得できるくらい、『彼女』はその気配を濃厚に滲ませていた。


 周囲が蜃気楼のように歪むのを、錯覚では無いのだろうなと伺えて。

 ニッカはうへぁ、と嫌な声を上げた。


来ちゃった☆

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