閑話 第7王女 シャノン 後編
「そうさ、アタイたちは盗賊さ。この国にもアタイたちと懇意にしてくれるお貴族様がいてねー。よくこうして1人で出歩く女を攫って売ってるのさ。あんた顔はいいから高く買ってくれるだろうな。クックック」
これから起こることを考えると涙が溢れだしました。
ですがこうしてはいられません。
助けを呼べば誰かが気付いてくれるかもしれません。
私は精一杯声を張り上げました。
「助けて!! 誰か! 助けてください!!」
「叫んでも無駄さ。こんな危険な森の中をうろつく奴なんていないよ。アタイたちみたいに魔物除けの魔道具を持ってれば別だがね」
魔物除けの魔道具はとても高価なはずです。
裏でつながっている貴族が与えたのでしょう。
許せません。
「さて、売っちまう前に身ぐるみ剥いでお…」
ガサガサ。
「こんにちはー。さっき悲鳴が聞こえたんだけど、なんかあった?」
茂みの向こうから1人の青年が出てきました。
格好からして冒険者のようです。
「助けて! この人た… ムグッ、ンー! ンンー!!」
「いやいや、なにもなかったよ、魔物討伐中に仲間のこいつがちょっと依頼をしくじったから叱ってただけさ。気にしないでくれ」
「ふーん、仲間ねえ。1人だけそんな格好でねえ、ふーん」
「ンンーー!!!」
「で、本当は? どんな関係?」
「・・・くっ。こうなったらあんたの口を封じるしかないようだね。恨まないでくれよ? 恨むんならこんなところに来ちまったお前さんの運の悪さを恨むんだね。お前! 全員でかかるよ!」
盗賊たちが青年に向かって一斉にとびかかります。
「「「「アババババ」」」」
私には何が起こったかわかりませんでした。
盗賊たちが襲い掛かった瞬間、突如苦しみだして倒れたのです。
そしてあっというまに縛り上げられました。
「君、大丈夫かな?」
「は、はい」
「怖かったでしょ。立てる?」
「ちょっと捻挫してしまいまして。。」
「そうか、なら見せてごらん。痛いの痛いの、飛んでいけー!これでよっし」
「え? 回復魔法? 無詠唱?」
「え? い、いや、そんなんじゃないよ? ただのおまじないさ! ハハ!」
「いや、今のは絶対魔法で…」
「ちょっと失礼するよ。よっと」
両手をひざ下と背中に当てて抱きかかえられました。
どうしたんでしょう。
なんだか顔が熱くなって少し鼓動が速くなった気がします。
「まだ痛むだろうから、こうして連れて行ってあげるよ」
「あ、ありがとうございます」
「君、王都から来たのかな?」
「はい。もしよければ、この盗賊たちを運ぶのを手伝っていただけませんか? お礼はします!」
「ああ、盗賊だったのか。お小遣い稼ぎにもってこいだもんね。いいよ。行こうか」
お小遣い稼ぎ? 言ってる意味は分かりませんでしたが、手伝っていただけるようです。
彼らには取引している貴族の名前を教えていただかなければなりません。
どうやって運ぶのだろうと思っていると、盗賊たちが浮き始めました。
これはまさか、昔話に出てくる浮遊魔法?
「あ。。・・・これもおまじないさ! じゃ、いくよ。危ないから口は閉じててね」
「は、はい」
どうやら魔法のことは内緒にしたいようですから詮索はしないことにします。
そう言うとものすごいスピードで森の中を走り抜け、あっという間に門の前に到着してしまいました。
彼はいったい何者?
勇者様?
その後門兵に事情を説明し、お礼を言おうと振り返ると、縛られた盗賊だけおいて、彼はもういなくなっていました。
あれは夢だったのでしょうか。
まるでおとぎ話のようなひと時でした。
彼のお名前だけでも聞いておくべきでした。
また、いつかお会いできるでしょうか・・。
その後は盗賊たちが白状し、裏で取引していた貴族もわかり、当然その家は取り潰し。
こっそり屋敷に隠されていた奴隷たちは解放されました。
なんとも濃い1日でした。
私はこの日以来彼のことが忘れられませんでした。
毎日彼のことを思い出しては、また会えないだろうかと考える日々が続きました。
そんな折に参加した、新しい騎士団創設のお披露目式。
なんと彼がそこにいました。滅龍騎士団団長として。
ドキドキしました。そして確信いたしました。
これはもう運命だと。
彼こそ私の勇者様だと。
すぐさま父上に相談いたしました。
その後はとんとん拍子で話が進んで、オルティス様と婚約出来ました。
もう嬉しくってついつい、殿方の前ではしゃいでしまいましたわ。
ああ、私は幸せです。
他のお嫁さん方との仲も良好で、最近はいいこと尽くめです。
彼の正妻に相応しい淑女になるために、これまで以上にお勉強を頑張らなくてはなりませんわ!
読んでいただきありがとうございます。
次話もお楽しみに!




