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8 お風呂 後編

 嫌な予感がしたぼくは、慌てて建物に近寄り、入り口を見つけてノックする。

 コンコンッ


「はーい、どうぞー」


 オルトの呑気な声が聞こえてくる。


 ガチャッ

 ドアを開けると、棚があるだけの簡素な部屋があり、何故かオルトの服が脱ぎ捨てられていた。

 オルトはいない。

 どういうことだ? 周りを見渡すと、奥に扉がもう一つあった。

 ここで今朝のやり取りを思い出す。


「父さん、井戸の近くにお風呂をつくってもいい?」


「あぁ、かまわないよ。後片付けはしっかりするんだよ?」


 まさかね。そんなまさかね。。

 ふうっと息を吐いて落ち着き、ドアノブに手を掛ける。


 ガチャッ


 ・・・・・・・・・。


 目の前にはありえない光景が広がっていた。

 王都でも見たことないような、立派なお風呂でオルトが気持ちよさそうにくつろいでいる。



「オ、オルト? こ、こ、これはどういうことだい?」


「やあ、父さん! 父さんもおいでよ!気持ちいいよー」


「いや、このお風呂はどうしたのかな? 昨日までなかったよね?」


「ん? つくったよ?」


「だれが?」


「僕が」


「まさか全部ひとりで?」


「そうだよ?」


「どうやって?」


「魔法でちょちょいと」


「じょ、冗談だよね?」


「冗談じゃないよ? 朝に許可とったじゃん。まさか忘れちゃったのー?」


 ・・・・・・・・・。


「なっ、な、なんだってーー!?!?」


 ぼくは顎が外れ、腰が抜けてしまった。

 3才の息子が、王族でも入れないような立派なお風呂を作り上げてしまった。

 なんだこれは、意味が分からない。なにが起きているんだ?


 夢か? そうか夢だな? はっはっは。なかなかユーモアのある夢だな。

 こんなことが現実にあるわけがない。

 ほほをつねってみる。

 …痛い。

 もう一度つねる。

 やっぱり痛い。


 …どうやら現実だったようだ。

 オルトは呑気にくつろいでいる。ちょっとイラっとしたがすぐに気持ちを抑える。

 息子は悪くない。きちんと許可をとったうえでやったことだ。そしてその許可を出したのは私なのだ。まさかこんなものができるとは思わなかったが。。


 例え極スキル所持者でもこんなもの1人で作れるわけがないのだが。。


 駄目だ、どう考えてもおかしいが、可愛い息子の言うことだ。信じよう。ここはもう、うちの息子は天才なのだと思い込むしかない。

 そう、まるで自身に暗示をかけるように。オルトは天才。オルトは天才なんだ。

 でなければぼくの頭はどうにかなってしまいそうだ。


 ぼくはそこで考えることをやめた。


 ***********************************************

 オルト視点

 ***********************************************

 父のアルフレッドが変な顔して座り込んだかと思えば、百面相を始めた。

 どうしたんだ? まあいいや、この久々のお風呂を堪能しよう。


 んー、我ながら、なんとも素晴らしい腕をしている。

 シンプルながらも細部に匠の技がおりこまれた極上の癒し空間。

 ここに来れば日頃の悩みなどすべて吹き飛んでしまうだろう。

 前世の高級旅館の温泉にも引けを取らぬ出来栄えだ。


 木材や石材は近くの森で【全魔法】を使えば、伐採から乾燥、成形、なんでもできて簡単に手に入った。

 あとは無限に入るアイテムボックスに収納して運ぶだけの簡単なお仕事だ。

 チート最高だな。


 ただお湯だけは【全魔法】によってだした、ただのお湯のため温泉には劣ってしまう。

 それでもお風呂にはいれるだけで幸せである。


 あー、極楽。



 あ、いつもの父さんに戻ったみたいだ。


「すごいなあ、こんな立派なお風呂をつくるなんてオルトは天才だね! でもそろそろお昼ご飯の時間だから食堂に行くよ?」


 ほめられてしまった。よせやい、照れるじゃないか。


 その日の夜は家族みんながお風呂を堪能して喜んでくれた。

 つくったかいがあったぜ!


 その後、料理長やメイドたち使用人組にも入ってもらうと、

 お風呂上りに僕の部屋に来て


「「オルティス様、一生お仕えいたします!!」」


 と声をそろえ、土下座してきた。

 みんなどうしたんだろう。慣れないお風呂でのぼせちゃったかな?


読んでいただきありがとうございます。

次話もお楽しみに。

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