7 お風呂 前編
今回は父のアルフレッド視点です。
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アルフレッド視点
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おかしい。
次男のオルトはどこかおかしい。
うすうす感じてはいたが、昨日の剣術の稽古で確信した。
寝返りやハイハイし始めるのが少し早かったり、歩けるようになるのも上の子2人より早かった。
だが、これはただ成長が早いだけだと納得していた。
まだ生後数週間のときからこちらの言葉を理解しているかのような動きが多かったが、きっと気のせいだろう。
抱っこは女性しか受け付けず、男がしようものなら暴れまわったり、授乳の際やけにニヤニヤしていたり、乳離れさせようとすると大暴れして、ぼくを睨んでいるように見えたのも気のせいであったと信じたい。
だが、昨日の剣術は明らかにおかしい!
3才の子供が初日で中級までをマスターするなどありえない。たぶんこの勢いなら上級もあっという間にマスターしてしまうだろう。普通は、基礎と初級を覚えるのに2年、そこから中級になるのに3年、上級はさらにそこから5年で、その後も一生修行だと言われるくらいに剣の道は果てしないのだ。そのはずなのだ。。
優秀なライルでも2年でようやく中級が終わったところだというのに。
そしてその後もおかしいところは多々見られた。
一度休憩を挟んだものの、全然疲れが見えないのだ。
2年間稽古を真面目にこなしてきた、優秀なライルでも汗だくで倒れこんでいるのに。おかしい。。
晩御飯の時間が近づいてきたため、終わりにしようと言うと、突然慌てだし、大根役者でももっとうまくやれるだろう、というくらいの演技力で、疲れたアピールをしつつ、こちらをチラチラ見てきた。
そしてぼくは聞き逃さなかった。
小声で「もう終わり? しかたない、後で一人で練習してみるかー」
あれにはさすがに頬が引きつってしまった。もしかして一般の成人男性よりも体力があるんじゃないか? いや、さすがにそれはないか。。
そして食後になるとオルトがいなかったため、稽古場を覗くと、明るい光の下で剣を振る姿があった。とても力強く、それでいて無駄のないきれいな動きだ。
なんだあの達人のような動きは!? 中級までしか教えてないのだが。。あれなら同年代では相手にならないな。いや、もしかすると大人に混じっても負けないかもしれない。
そしてそこに光の魔道具なんてなかったはずだ。。
いろいろとおかしいところがありすぎて、頭が混乱してきた。
…ほんとに、うちの子だよね?
いや、これはスキルの恩恵かもしれない。そうに違いない。生まれながらにスキルを持つ子は少ないが、レイラとライルも持っていたのだ。この子なら珍しいスキルを複数持っていてもおかしくない。5才での儀式が楽しみだな。
そして今朝、執務室で仕事をしているとオルトがやってきた。
「父さん、井戸の近くにお風呂をつくってもいい?」
昨日のこともあり、一瞬身構えたが考えすぎだろう。
たんなる子どもの遊びだ。いつものように子どもたちでおままごとでもしているのだろう。
「あぁ、かまわないよ。後片付けはしっかりするんだよ?」
「ありがとう!!」
なんとも子供らしい可愛い笑顔じゃないか。少しでも疑ってしまった自分が恥ずかしい。
仕事がひと段落して昼ご飯を食べに食堂に行くと、オルトだけがまだそろっていなかった。
ルイーナもレイラもライルも、誰も朝からオルトを見ていないと言う。
てっきり兄弟で遊んでいると思っていたのだが。。
居場所に心当たりのあるぼくは屋敷のすぐそばにある井戸へと向かう。
ん? 井戸の横には見慣れない建物があった。
木材でできており、村人たちの家よりも少し大きいくらいの、シンプルながらもなかなか立派な建物だ。
昨日まではなかったはずだ。どういうことだ?執事のセバスからも何も聞いていない。
嫌な予感がした。
ま、まさか!!
読んでいただきありがとうございます。
誤字報告助かってます。ありがとうございます。




