15 甘味
今日は朝から西の森に来ている。
バルドにお昼ご飯は必要ないと伝えてから来た。
なぜって? 今日は天気がいいからピクニックに来たのだ。
塩と胡椒は持ってきた。食材もアイテムボックスに入れてある。
しばらく散策して、いい感じにひらけた場所を見つけた。お腹もすいてきたしお昼ご飯の準備をしようかな。
まずは枯れ木を拾って来ようと思ったけど、一度腰を下ろしてしまうと立つのが面倒になっちゃった。
座ったまま近くの木から枝を落として、手元に引き寄せ、まとめて乾燥させる。
この工程全て【全魔法】でできてしまう。【全魔法】便利すぎるよ。。
乾燥させた木の枝を並べ、これまた魔法で着火する。
一瞬でボッと勢いよく燃え上がり、ちょっと待つと火が安定してきた。
「キャンプを思い出すな―。」
大学生の頃1度だけ、陽キャたちに誘われてキャンプに行ったのだ。
浮かれた僕はキャンプのやり方を猛勉強して、めっちゃ高いお肉なんかを用意していった。しかしいざ集合してみると、車を持ってる運転手が欲しかっただけらしく、送り迎えだけを頼まれた。
やむなく僕は、少し離れた誰もいない場所に移動して、勉強したことを活かして一人でキャンプを堪能したのだった。
あの高かったお肉はなぜかびしょびしょで塩味が濃くておいしくなかったなー。なんでだろう。。
昔を思い出すのはやめよう、なんか涙が出てきたよ。。
そんなことを考えながらも、手は動かしている。
その辺の大きめの石を切断してできたプレートを、火の上のちょうどいい高さに固定する。
これでホットプレートの完成だ!
あとは好きなものを焼いていくバーベキュースタイルだ。
僕はまずオーク肉を塩と胡椒で味付けして焼いていき、端の方に野菜も並べる。
いい感じに焼けてきたな。いただきます。
うますぎる。こんなにおいしいお肉を使って、大自然の中で優雅にバーベキューだなんて最高だな。これだけでも異世界に来たかいがあるってもんだ。
そして今日はとっておきの肉があるのだ。
そう、あのオークキングのお肉だ。事前に下処理は終わらせているからあとは焼くだけである。
肉を焼き石にのせた瞬間、様々な食材の香りをぎゅっと濃縮したかのような刺激的な香りが僕を包み込む。
これはまるで、おっとり癒し系やツンデレ系など、様々なタイプの美女と同時にラッキースケベにあったかのような不思議な感覚。もちろんそんなおいしい状況味わったことないけど。
とにかく最高に幸せだ。
気付けば足元によだれの海ができていた。いざ実食。
「いただきまーす」
う、うまい!!! もう、僕の貧相なボキャブラリでは言い表せないくらいにうまいよ! これぞキング! まさに豚肉界の王たる存在! 出会えたことに感謝だ!
僕は夢中になってオークキングのお肉をお腹いっぱいになるまで堪能した。やめられない。とまらない。この中毒性はもう一種の麻薬だよ。
バーベキューを満喫し、食後のお茶を飲んでいると、ふと視線を感じて振り返る。
誰もいない。
気のせいかな? でも確かに感じたんだけどなー。
あれ、待てよ? こんなとこに木なんてあったかな?
モゾッ
いま木が動いたように見えた。
疲れてるのかな? いくらチートな僕でも疲れることはあるよなー。
モゾモゾモゾッ
やっぱり動いた! 気のせいじゃないぞ! しかもこちらに近づいてきている。
わかったぞ! これがトレントだな! あとで探すつもりだったしちょうどいいや!
「ふふふ、この日のために書斎の本をあさって、お前のことは知り尽くしているのだよ!」
「覚悟!!」
僕は火の玉をたくさん浮かせ、トレントを囲った。
トレントは身動きできなくなり、汗をかいている。
トレントは熱に弱く、危機を感じるとこのように体内の水分を放出するのだ。
そしてこの汗に見えるものこそ僕が欲しかったものだ!
実はこれトレントの樹液で、とっても甘くて、めったにとれない高級品なのだ。
普通の人にはただの木とトレントを見分けるのは難しいもんね。
でも僕にはマップと鑑定の合わせ技があるから楽勝だよ。
さっそく採取して少しなめてみた。
「これは…メープルシロップだ!」
前世だと樹液を濃縮してつくるって聞いたけども、これはそのままで十分に濃厚な味わいだ。
素晴らしい。今日はトレント狩りだー!!
この世界では甘味はとっても貴重で、貴族や王族でも贅沢できないものなんだよ。
少しくらい、はしゃいだっていいじゃないか。
この日僕は森中のトレントからカツアゲしまくった。もちろん樹液をね。
討伐はしていない。だって倒したら今後取れなくなるだろ? 今後、彼らには定期的に上納してもらわなきゃいけないんだから!
帰り道はトレントたちが僕から逃げているように見えたけど気のせいだよね?
読んでいただきありがとうございます。
また次回もお楽しみに!




