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第6話 地雷というのはどこにあるかわからないものです

 

「すげぇよアイツ、あんなん鳥が豚肉買いに行ってるようなモンだぞ」


「ライ、よくわからない例えを使うのやめ〜」


「……」


「ビビはよくわからないモン食うのやめろよ。なんだよその紫色の物体……」


「え〜、ヴェ#*アだよ〜。美味しいよ〜」


「さすがに表記不可能な文字を使うのはやめようぜ? オレでもドン引きだ。ナニャもそう思うだろ?」


「……なんでも、いい」


 他の五人から少し離れた場所で固まっている三人組の彼らは、気だるそうな緑の少年、謎の物体を食している淡い紫の少女、そしてビビッドなイエローの少女(?)で構成されていた。

 翼の生えた幼女よりは明らか上の年齢に見えるが、トーヤの目からは同年代の少年少女に見える。

 だが、『スキル』持ちを見た目で判断することほど不毛なことはない、とトーヤは身を以て知っているため、油断はしない。

 仲睦まじく談笑している(ように見える)その様子を見るに、どうやら彼らは傍観を決め込んでいるらしかった。

 そして、彼らを含め8人の“集約戦争代理人ウォー・ケーン”と対峙しても、ククリは臆さない。


「わたしは御薬袋みない ククリ! ぜひククリちゃんって呼んで!」


 あっけらかんとしたその立ち姿。

 あまりに自然体で佇む闖入者に、奇人変人揃いの“集約戦争代理人ウォー・ケーン”ですら固まっていた。


「……なぁガレア。まさかたァ思うが、あのチンチクリンが燼滅級アルバじゃねェよな?」


「まさしく彼女ですよ。ククリ=チャンです。えぇ、そのはずなのですが……」


「これの、どこが燼滅級アルバだってんだ? 頭のヤバさ燼滅級アルバだッてか?」


 言いながら、絶対に五歩以上あった距離をリキは()()()()()()()、無造作にククリの頭を鷲掴わしづかむ。


「うぇっ」


 頭一つ分以上の差がある二人の体格差は、まるで大人と子供だ。



「(ククリ……!)」


 ただされるがままのククリを見ても、トーヤは動くことができない。


 自分が行っても、何もできることはない。

 状況を悪化させるだけだ。

 だが、そうしてただ見ているだけ、というのをトーヤは良しとしなかった。


 誰にも悟られないよう『スキル』を発動し、血液をククリに伸ばそうとして、止まった。

 息が止まった。


 目元を覆うアイマスクからは、ハッキリと視線を感じ取ることはできない。

 できない、はずなのに。


 ガレアはこちらを見ていた。


 はっきりと気づいてしまった。


 否、気づかされた。


「は……、」


 冷たい汗が背筋を伝う。

 まるで、余計なことをするなと無言で咎められているようだった。


 何秒間、そうしていたか定かではない。

 己が硬直していたことに気づいたトーヤが、ようやく『スキル』の発動を中止すると、ガレアは何事もなかったかのようにリキとククリの対峙に視線を戻した。

 遅れてトーヤも視線を移した先では、ククリが顔面を鷲掴まれながら詰問されていた。


「だからァ、お前の目的はなンだってんだよ! 問答無用でブチ殺さすクソ丁寧に質問してんだからさっさと答えろやァッッ!」


「……!」


「もうちょい聞きかたってもんがあるでしょーに……」


 青みがかった髪の女性が顔に手をやりながらため息をつく。

 チンピラか何かと見紛うガラの悪さに、他の“集約戦争代理人ウォー・ケーン”は呆れる様子すらない。

 どうやらいつものことらしい。

 そして、ククリは顔の半分以上を手で覆われているため答えるどころか息ができていない。

 ククリが動かなくなっていることに気づいたガレアが声をかける。


「リキさんリキさん。ククリ=チャンが死んじゃいますよ」


「あァ? あ、やべ」


 パッと手を離すと、ククリがドサリと落ちる。


 だが、一向に立ち上がる気配がない。


 息を潜めているトーヤを含め、その場にいる者が静止する。


「……まさか死ンだか?」


「いやぁ、そんなまさ――――」


 そんなまさか、とガレアが言うより一瞬早く、ククリの身体を光が包む。

 光がククリを包んだのは一瞬で、弾けると同時にガバリと起き上がる。

 そして、リキを見上げながら言った。


「この国の一番えらい人って誰ですか!」


「なンッなんだお前は!!」


 あまりにも常道が通用しないククリに、リキは困惑しながら矢継ぎ早に言葉を繰り出す。


「会話のテンポ考えろよ!? ()()()()()()()()()()()()()!」


「え――――」


 ククリが初めて表情を変えた、その瞬間、

 複数の人影が動いていた。


「ククリっっ!!」


 トーヤが血の紗幕しゃまくと共に、ククリ目がけて飛び降りた。

 間に合えと、ただそれだけを願いながら。



 爆風、土煙、そして、静寂。

 そして何度目かの轟音を立てながら、裁判所が崩れ落ちる。


 土煙の中から、真紅の半球が姿を表す。

 そして、真紅の半球は溶けるように消えていき、中からトーヤとククリが出てきた。

 トーヤが作り出した血の紗幕が、血籠ちごもりのまゆにその姿を変えて、二人を爆発から守ったのだ。

 結果からして、トーヤは間に合った。


「ほわ……。ありがと、トーヤ」


「な、なんとか間に合ってよかった。けど」


 だが、間に合ったはずなのに、その表情はひどく暗い。


「……けど、どうしたの?」


 ククリに問われ、トーヤは悲痛な表情を浮かべながら、答える。


「ククリの『スキル』がばれた」


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