指輪
その後しばらくは大騒ぎだった、というか、今も町ではお祭り騒ぎである。
そして私は今、自室の窓の下に来ている。
私の耳には足音が響き、それが何とも心地よかった。
空を見上げると、綺麗な満月が浮かんでいた。
私がこんなところに来たのは、探し物があったからである。
その探し物は、月明かりのおかげで意外に早く見つかった。それは、指輪だ。
その指輪を空に掲げ、考える。
この先私はどうなるのだろうか、と。
私が彼らに仲間にしてくれと言ったら、国民は皆喜んでくれていたが、私は人を殺しすぎてしまった。それが消える事はないだろう。
私は、私が改心したのだからそれですべてが許されるなんて事を言うつもりはない。
それでも、少しでも償うために生きていこうと思った。
そして、国民と私との間で信実を築いていきたいと、そう思った。
まずはこの指輪から始めよう。
そう決意して、私は歩きだした。
その四日後、ディオニスは革命によって命を落とした。
ディオニスの死に顔は、まるでメロスがセリヌンティウスに殴られた時のような顔だったそうだ。
それからの事についてはあまり言う事が出来ないが、一つだけ、言える事がある。
今、ディオニスの墓前には、たくさんの花がある。
end