~異世界転移は白雪姫と~
薄暗い部屋、棚の上に並ぶフィギュア、コーラのペットボトル。
典型的なヒキニートの部屋である。
この部屋唯一の光源であるパソコンのディスプレイには、今や世界最大規模のユーザーを抱えるオンラインゲーム。
豪華絢爛な装備を纏い、大型の火竜の前に倒れふす有象無象と、
初期装備で火竜に対峙する2人のユーザー。
白雪:今日もヒキニートですか?
チャット画面には白雪、という人物との会話が表示されていた。
「お前もだろーが…」
2人のユーザーのうち男性アバターを操っているのは、
この部屋の主、司時臣。
sin:お前こそ、こんなことしてていいのかよ。
sinは彼のアバター名である。
白雪:いいのです。私はちゃんと仕事も終わらせてきましたから。
sin:仕事だぁ?お前昨日も俺と1日討伐したろ?いつ仕事なんかしたんだよ。
そんな雑談をしながらも、火竜のHPは目に見えて削れてゆく。
トリスタン:すげーよなぁ…火竜を倒すのは攻略ギルド2、3個は連れてかなきゃ行けないはずなのに…
アーサー:しかもあの2人、初期装備だぞ…意味わかんねぇ…
倒れた有象無象はルームから退出もせず、ただ彼らの戦闘を眺めていた。
彼らはこのゲームのトップ2。
倒せぬ敵はおらず、チーターすらも屠る。
最強の名を欲しいままにするプレイヤーなのである。
これは、そんな2人が巻き込まれる事になる、
ある事件の物語である。