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第42話 戦闘の目的

 ブカバルグ近郊の空で、シーゼルの孤軍奮闘は続いていた。


「シーゼル! 何匹倒し・・・いや、何匹逃した? 街の状況はどうなっている! 被害はどの程度出た?」


 声色に滲み出る焦りの中で、大和はシーゼルを巧みに操り、噛み付こうと首を伸ばしてきた攻撃をすり抜けるように躱すと、その首にフローゼントサーベルを叩き込み、その首を斬り落とす。

 既に何度目かになる大和の問いに、シーゼルは律義に応えていた。


『現時点で飛竜種の討伐数24いえ、25匹。通過を許した数は17匹。その内、ブカバルグ防衛MSS隊により迎撃されたのが7匹、現在交戦中が6匹、迎撃範囲に向かっている飛竜種が3匹、防衛MSS隊が突破され街に入り込んだのが1匹になります』


 飛竜種の残数58匹の内21匹程が、シーゼルと戦闘中で、37匹が散り散りに距離を取り迂回しつつ町へ向かっている。


「くそ! くそ! 街への被害は!」


 己の非力さ、不甲斐なさが恨めしい。

 もっと巧くやれるつもりでいたが、理想は遥か遠く、圧倒的な速度で遠退いていく。だがそれでも、理想を追うことをやめるわけにはいかない。例え到達することが不可能だとしても、その終着点を見定め進まなければならないと思う。

 大和は歯を食いしばり、機体を旋回させると、迫りくる飛竜種の横っ面に蹴りを入れ、その反動で体勢を変え別の飛竜種を斬りつけるが、飛竜種も蛇の様に身をねじり、鱗の表面を焦がしただけで大和の攻撃を躱す。


『詳細は不明ですが、幾つかの家屋が倒壊している様子です』


 大和は街に侵入した1匹を討つために、この場の飛竜種を捨て置こうかと思案するが、それは実質的に大和がさらに21匹の飛竜種を引き連れて行くことになる。シーゼル一機で抑えきれない数を引きつれてしまえば、結果的に街への被害は拡大する。つまり合理的に考えれば、このまま21匹と戦い続けることが被害を最小限に抑える事になる。

 大事の前の小事と、今の街の被害を斬り捨てられるほど、大和は大人ではなかった。

 ただ逸る心が、感情的にさせ吠えさせる。


「でもそれは言い訳だろうがぁ!」


 吠えながら乱戦中の飛竜種の攻撃を躱し、飛び去ろうとする個体にフローゼントガンを向け発砲。胴体中央に命中するが、一番鱗の厚い部分に中ったらしく、致命傷には届かず、飛竜種は僅かに高度を落としたが、攻撃された事実を無視して街を目指していた。

 もう一発当てられれば、確実に討伐できたと思うが、シーゼルを取り囲む飛竜種がそれだけの時間をくれない。仲間を庇おうという本能か、純粋にシーゼルの隙を見つけて攻撃してきただけかは分からないが、結果として生き延びさせてしまった。


――火力が足りない!


 飛竜種の数を効果的に減らせない原因はこれに尽きる。

 その分かり切った欠点を何とかしようと思考を巡らせる。

 フローゼントサーベルもフローゼントガンも二個ずつ装備されているが、両手で使うメリットはあまりない。

 サーベル二刀流では、瞬間的に供給できる最大出力が変わらない以上、数を倍にすれば、威力は半分になるので意味がない。

 ガン二丁拳銃では若干の発射タイミングをずらせば効果的であろうが、生来右利きである大和は左手だけで命中させる自信がなく、飛竜種に接敵された時の対処法にも困る。

 その他の武装に付いても、フローゼントレイピアは刺突に特化したサーベルと言えば聞こえがいいかもしれないが、システム的にはサーベルの下位互換的な武装である。斬撃がメインで刺突もできるサーベルと、刺突がメインでおまけで斬撃ができるレイピアと言った所だ。

 スタグリップは搭載数こそ多いものの、その使い方がよく分からない。シーゼルが運用できない規格の武装に取り付けて、運用可能にする後付け式の取っ手であるらしい。これは他に武装が存在しない事には意味をなさない装備だろう。

 サッシュアンカーは全身八カ所に搭載された、射出式の錨であり、機体を大地に固定したり、機体を牽引させたりするのに使う装備のようだ。敵に打ち込めばチェーンデスマッチのような状況も作り出せるが、一対一の決戦ならともかく、多対一の現状の火力不足を補えるような装備ではない。

 結局のところシーゼルの動力炉の炉心に魔力を注ぐことが出来ずに、出力不足になっている事が問題なのだ。


「――シーゼル! 魔力を注げれば! サーベルやガンの出力を、上げられるって理解で、間違ってないんだな?!」

『その通りです』


 炉心からのエネルギー供給量が増えると、MPコンバータによる変換量も増える。それによりフィルドリアの出力が上昇し、基本的に同じ理論で刀身を形成している出力が向上し、刀身内部に充填されている重金属粒子の温度も密度も上げられる。


「俺の魔力・・・俺に魔力があるなら、シーゼルの方でそれを強制的に、徴収できないか?」


 本人には存在自体知らなかったものだ、その使い方が分からないので、使い方が分かるものが勝手に持って行って使っていいということだ。


『MSSは炉心に魔力を注がれて初めて・・・緊急回避!』


 飛竜種に囲まれ、動きが阻害されつつあった時にシーゼルからの警告が飛ぶ。大和は咄嗟にフットペダルを踏み込み、機体を真上へ持ち上げる。視界の中でこちらを向き滞空している飛竜種を二体捕えた。


――何を・・・?


 と言う疑問が脳裏をよぎった瞬間、飛竜種の口から炎隗が吐き出される。急上昇を始めたシーゼルは、間一髪で、爪先を焦がすほどのタイミングでそれを避ける。


――ぐっ! 火球? ドラゴンブレスってやつか?


 火球を吐いた飛竜種は、俯瞰して見れば隙だらけで、フローゼントガンで真上から撃ち下ろすと、回避行動を取ることもできず撃ち抜かれて、重力に引かれて地表に向かって落ちて行く。


――なるほど。奥の手っていうか、文字通り最大火力の攻撃ってことか!


 動き回っている段階では使ってこなかったということは、吐き出す動作が出来ないか、風圧のせいで思ったように飛ばないんだなと理解する。だが対地攻撃されたら、被害は甚大になる。


「・・・でも、ただの火がMSSに効くのか?」


 普通、鉄は千五百度ほどの熱で融解するので、熱量だけで破壊しようと思えばそれ以上の熱を捻出する必要がある。その為にフローゼントサーベルも一万度を超えているのではなかろうか。そんな中で、飛竜種とはいえ飽くまで生物が吐ける“火”がどれほど有効だというのか。


『飛竜種の火息は粘着性の高い竜油と呼ばれる燃料に着火して吐き出すものです。機体表面に付着すれば数百度の温度とは言え加熱され続けることに成ります。また、竜油の特性が問題で、装甲を伝い機体の内部に入り込むこともあります。この危険性について異を唱えるのであれば、まず大和が五百度の火の海で泳いでみてください』

「無茶を言ってくれるが理解した!」


 装甲板には効かなくても、機体の内部構造には火に弱い部品も存在する。もっとも脆弱な部品は搭乗者ということになるのであろうが、それ以外にも燃やされてしまうと致命的になる部品も存在するのであろう。


――そもそも、フローゼントサーベルだって基幹部が高温になれば壊れるしかないんだもんな。


 機体の動きが止まらないように注意しなければと思い、ジーゼルの動きを抑え込むような形で立ち塞がった飛竜種に、構わず体当たりをかける。その際にサーベルを突き立て飛竜種に重傷を負わせたシーゼルを、その背後からまた別の飛竜種が火息で狙う。だが大和はそれを読んで、サーベルを突き立てた飛竜種を、掴んだまま巴投げの要領で、両者の位置を入れ替え火息の狙いを定める盾にすると、もう一度、腹に蹴りを入れるようにして跳躍し距離を取る。

 天地が逆転した状態で、火息の方に押し出された飛竜種が、同士討ちで火息をまともに喰らい、一瞬で火達磨になる。羽根の被膜が燃え出し、呼吸もままならない様子でもがきながら落ちて行く。

 火息を背後から食らい、頭から地面に落ちて行く飛竜種を哀れに思い、素早く頭を振ってその感情――同情を捨て去る。同情すれば迷いが生じ呵責を産む、自身の気の迷いから窮地を招くわけにはいかない。

 意識して強く息を吐き出すと、気分を仕切り直した。


「・・・それで?」


 と、大和は強引に話の軌道を修正し、シーゼルもそれに迷うことなく従う。


『MSSは炉心に魔力を注がれて初めて稼働する鎧のようなもので・・・』


 シーゼルの返答は言い訳であると感じ取った。シーゼルは自分のことを鎧と称したが、大和の目線では無人で動いている鎧にしか見えないことを既にやっている。


「なら何故、俺に、相互フィードバックを、勝手に繋げた? あれは本来、搭乗者の意志で、繋げられる物じゃ、ないのか?」


 相互フィードバックシステムの恩恵が、如実に分かる。大和のイメージする微妙なベクトル操作が、シーゼルの手足を通してほぼ完璧に再現され、飛竜種の攻撃をいなし、逸らし、躱して、カウンターを食わらせる。

 あの時、初めてシーゼルを目にしたとき、その視線が交わっただけで相互フィードバックが強制的に繋げられた。つまりシーゼルの“意志”によってある程度のシステムは稼働させられるはずなのだ。


『それは悪魔に魂を差し出すに等しい行為です』


 シーゼルは大和の質問に答えず、倫理を振りかざしはぐらかそうとした。つまり、言外に“彷徨う鎧”である事を認めたということだ。たしかにシーゼルの口にする倫理は正しいかもしれない。だが、今更だ。すでにその倫理を破っているのだ、破ったから大和が乗っているのだ。生きるか死ぬか、死なせるか死に損なうかの瀬戸際で、そんな建前で煙に巻かれる訳にはいかない。

 機械に全てを差し出すことは、愚かな行為なのだろう。血も涙もない存在に、破壊を生み出すだけの兵器に、その全てを差し出すことは、確かにそうかもしれない。だが、


「俺は、必要な分だけ、使っていいって、言っただけだ。それに・・・お前は悪魔じゃないだろう!」


 例え魔力を吸い尽くされて死ぬことになっても、このまま無意味に被害を拡大させることは、死ぬことよりも辛い。

 打てる手を拱いて“あの時本気を出していれば”などと後悔するわけにはいかない。


「だから、戦闘終了後まで、意識を保てる程度に、加減してくれ」

『吸い尽くしてはいけませんか?』

「・・・当たり前だ。お前を悪魔に、するわけには、いかない」

『了解しました。では搭乗者、影崎大和の保有魔力を必要量徴収させていただきます』


 ゾクリと背筋に悪寒が走る。掃除機のホースで直接自分の肌等を吸うような感覚が、全身を一気に包む。痛みはないし実際に肉が引っ張られている訳ではないが。全身の毛穴から血を抜き取られているような感覚、とでも言った方が良いのか、なるほど生きた心地はしないし、命そのものを吸い出されているような感覚すらある。


――なるほど、これが魔力の流れか・・・。


 大和はシーゼルに、自身の魔力を利用させることで、その力そのものの感覚を掴む。


『出力上限レベル1を解除します。フィルドリアが戦闘出力での運用が可能、ショックロア起動・・・成功、出力を安定させるため上限レベルを3に設定します』


 大和の脳に直接シーゼルのステータスのようなものが流れ込み、強制的に理解させていく。フィルドリアには出力上限レベルがありレベル1で取り敢えず動かせるだけの状態で、装備の稼働チェックなどを行う。レベル2は巡航で必要とされる出力、レベル3は戦闘時に必要とされる出力となる。つまり、ようやくシーゼルは本来の戦闘を行うことが可能になった。

 この間も飛竜種の攻撃を巧みに躱すことは怠らない。

 シーゼルの中心から、甲高い回転音のようなものが聞こえる。それは一瞬で可聴域を超え、大和の血流に作用しているような錯覚を促す。

 手にしたフローゼントサーベルが、今まではエネルギーの放出が、日本刀の様に反った刀身を形取っていたものから、発行する半透明の物質の様に安定した形になるだけでなく、刃渡りも刃幅も一回り以上長く厚くなる。


『フローゼントサーベル、ウェイト1で使用可能です』

「いや、もうほとんど変わらんだろう? ウェイトは0に設定してくれ!」

『了解。ウェイト0にします・・・火息攻撃来ます』


 一瞬、回避を促さない報告に疑問を浮かべたが、それは直ぐに氷解した。

 火息はシーゼルの前方の空間で、透明な卵の殻にでも阻まれたように、球面に沿って竜油を押し留める。戦闘出力で展開されたフィルドリアが――分かりやすく言えばバリアーが、火息の進行を阻み機体を守る。

 そして、回避行動を取っていては得られない、反撃の隙を見出していた。

 サーベルにガン、レザー機銃を駆使して、大きな隙を作りだした飛竜種を一瞬で五匹程葬る。

 そして、視界の先でブカバルグの街へと向かう飛竜種を追い、


『ショックロアの威力行使を推奨します』


 と言うシーゼルのアナウンスが出ると同時に、迷わずそれを使用した。

 シーゼルの頬の部分にある六角形の装置が淡い燐光を放つと、街へ向かって飛ぶ二十体ほどの飛竜種が潰れた。まるで飛んでいる蚊を叩き潰した時みたいに、見えない手が飛竜種を叩き潰す。一瞬だけ二次元の存在に成ったような、容赦のない潰れ方をして、その後三次元に復帰すると内側から破裂するかのように血を吹き出して落ちて行った。

 想像を遥かに超えたえげつない攻撃に、使用した大和自身が一番驚く。

 ショックロア。衝撃波咆、もしくは空間圧搾咆と呼ばれる至龍族が狩猟する際に使用する吐息。ショックロア自体は叩き潰す機能しか持たないが、その後の圧搾された空間の復元力により爆発的に復帰することで、その場にある物質をことごとく破壊するのだ。

 余りの威力に怖気が走る。だが、これで難を逃れた飛竜種も大きく回避行動に入ったので、街への到着が数秒先延ばしされる。


「・・・うっ!?」


 大和は強い吐き気と眩暈を感じる。その理由は克明だった。初めての本格的なMSSによる空中戦に加え、魔力と言ういまいち実感の湧かない生体エネルギーとでも言うべきものの消費による体力の限界だ。シーゼルに安全マージンを設けての魔力の使用を許可したはずなのだが、予想よりも消費が激しい。最後に使ったショックロアが不味かったのだろうか?

 一瞬だけ、視界が闇に呑まれるが、歯を食いしばり無理矢理光を欲する。

 まずい、まだ飛竜種は何体か残っている。

 まずい、まだ意識を失う訳にはいかない。

 だが、身体は言うことを聞いてくれない。


――くそ! まずい! まずい! 動けよ! 俺ぇ・・・。


 意識が飛び、シーゼル自体がグラッとバランスを失ったように、高度を下げた。その衝撃で再び意識を取り戻すが、輪をかけて顔色が悪くなった。身体も重い、操縦桿を握る腕が鉛になったようだ。

 身体と精神がバラバラになり意思が伝わらない。


――まずい、こんな程度で・・・。


 唇を噛み意識を保とうとするが、顎すら動いてくれない。

 そこへ・・・、


『高熱源体、音速の4倍の速度で来ます。3・・・2・・・1、着弾』


 無数の鉄杭が飛翔し、ことごとくが飛竜種に突き刺さり爆発する。


『オープンチャンネルにより通信が入っています。繋げます』


 大和の返答を待たず通信が繋がる、一瞬の雑音と遅延の後、男たちの声が届いた。


『・・・よぉ英雄さんよ。おまっとさん、帝国軍第一航空群105航空戦闘隊だ、よくここまで被害を留めてくれた、感謝する。後は任せてもらおう!』

『・・・英雄と肩を並べられ感激の至り・・・』

『気に入ったぜ! 後で妹とやっていい』

『ちょっと! 下品な上に失礼ですよ中尉。それに相手は女性ですよ』

『・・・そうか、じゃ代わりに俺で良ければ・・・』

『撃ち落すぞこらぁ!』


 突然の騒がしい通信に大和は目を白黒させる。105航空攻撃隊と名乗った面々は牽下したミサイルの全てを撃ち尽くすと、そのまま速度を緩めずに戦域を突っ切り、離脱していく。

 見回せばまだ十匹以上もの飛竜は無傷で残っており、ミサイルの直撃を受けても死んでいないものも居た。

 帝国軍の反撃が始まったが、不十分だ。

 今一度意識をしっかりとさせ、もう一度戦わなければと力を入れようとするが、まだ体の反応が鈍い。


『・・・あーーーくっそっ! 一番槍を105の連中に取られた!! 104航空戦闘隊参上』

『また世話になった、後で一杯驕らせてくれ』


 直後に違う隊が攻撃を仕掛ける。帝国空軍による波状攻撃が容赦なく開始されたのだ。


『帝国軍の到着です。我々の戦闘目的は達成されました』


 そうだった。戦闘目的は飛竜種を全滅させることじゃなくて、街に被害を出させない事。

 だが、帝国軍人たちの謝辞を聞き、自分の行為が無駄にならなかったと悟る。

 僅かに、気力が回復する。

 大和の介入により、飛竜種の進行速度が乱れ、街への到達が遅れ、僅かに間に合わないはずの航空隊の参戦を間に合わせた。

 シーゼルは自由落下を続け、大和も放心する。気を抜けば疲労から深い眠りに陥りそうな予感があった。

 だが、まだだ。

 街への被害がなかったわけじゃない。忘れかけていた怒りが湧き上がると、その熱量に任せ体を動かした。


「後一体だけやらなきゃ気が済まない!」


 フローゼントガンを収納し、右手でサーベルを構えるとシーゼルを疾駆させる。

 狙うは、一匹だけ街に侵攻した個体。


――あれは殺す!


 まさに猛禽の如き鋭さで高空から、我が物顔で地を這う獲物を狙う。

 そして、火を噴き街を蹂躙するその背中に、足から着地するように飛び蹴りを食らわせる。激しい轟音と共に、街が揺れ、飛竜種の背骨を踏み砕く。それで絶命できなかった飛竜種は苦しさの余りもがくが、即座に頭蓋をサーベルによって貫かれた。それは慈悲の一撃などではなく、悪あがきをさせないための只の止めだった。

 今まで抑えていた動悸が激しくなり、心の片隅で蝕み続けていた罪悪感が、達成感により塗りつぶされる。

 そして達成感に酔う暇もなく空を見上げる。

 帝国軍の航空戦闘隊の攻撃により、飛竜種は無残にも袋叩きにあい、一匹一匹とその数を減らしている。加勢するべきかと思うが、下手に飛び出して戦場を混乱させることもどうかと躊躇う。


――いや、今はそれよりも。


 視線を落とせば、飛竜種の火息により燃えている建造物がそこかしこにある。もしかしたら逃げ遅れた人もいるかもしれない。


「・・・シーゼル。辺り・・・に、生存者が・・・いないか調べ・・・られるか?」


 頭がくらくらする。睡魔が襲い掛かってきていた。

 大和はどうにかシーゼルが転倒しない様に膝を着かせると、そのまま意識を失った。


2016/09/13 誤字修正。

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