31話
冒険者ギルドの男衆達に礼を言って別れると、カロンタン達三人は家へと戻って来ていた。キリアがフェイにスッキリするぬるめのお茶を淹れてあげると、フェイはようやく人心地ついた様子で大きなため息を吐いた。ゆっくりとした空気が流れる中、そういえばとカロンタンは以前にキリアのスキルを鑑定した時のことを思い出し、条件を満たしているかもしれないとキリアの鑑定を始めた。
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キリア・エーテルダム 27歳 女(奴隷)
アヴェンジャー
レベル 56
体力 6440/6440
魔力 1650/1650
体力回復量 3000/時
魔力回復量 800/時
ナノボットの守り
筋力 186
頑健 192
器用 126
敏捷 98
知力 65
ネクロマンシー(レジェンダリー)1/200
短槍術 (コモン) 170/200
盾術 (コモン) 45/200
インパクト(レア) 115/200
アヴェンジャー:対象者の運命を悪方向に劇的に変えた人物に対して完全な復讐を果たした場合に得られる称号。対象者が復讐に値するかしないかや、相手がその対象かどうかを認識しているか否かは問題とならない。全ての能力に+20。
ナノボットの守り:傷等の治りが劇的に早くなる。また、体力と魔力の回復量もそれに伴い増加する。
ネクロマンシー:骨からサーバントを作り出し、使役する事が出来る。熟練度が上がると使役できるサーバントの数が増える。また、強力なサーバントの生成も可能となる。骨は一片でもあればサーバントを生成することが可能であり、元の骨片に戻す事も可能である。魔力+1000。ネクロマンシー使用時、知力+50。
短槍術:短槍を使った戦闘技術。単槍を使用すると筋力、敏捷、器用に+5。スキルがあることで自然に戦い方を想像して戦うことが可能になる。
盾術:盾を使った戦闘技術。盾を使用すると筋力、敏捷に+5、スキルがあることで自然に戦い方を想像して戦うことが可能になる。
インパクト:武器や体の動きに爆発を纏わせる事が出来る。本人及びその装備には影響は及ばない。熟練度が上がるにつれて武器の延長上や打撃の延長上に爆発を飛ばすことが出来るようになる。
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「キリア、自分のスキル構成って覚えてる?」
「ん?ああ。短槍術に盾術、インパクトだろう?インパクトは中々いいんだぞ。攻めにも守りにも使えるし…。」
「えっと、今日、因縁の相手を手に掛けた事で、何やら称号とかスキルとか増えてるみたいで。」
「…カロ、スキルっていうのはそんなものなのか?」
「もしかして、私にも演技のスキルとか…」
「…増えてないね。残念。」
ちぇーっ、と可愛く口を尖らせるフェイの頭をカロンタンは撫でると、何が増えたんだ?と首を傾げるキリアに兎の骨を渡した。
「…骨、かい?まだ乾いても無いみたいだが。」
「うん、兎の骨だね。僕が前に狩って、店に卸していた物の残りだよ。」
「これがどうしたんだい?」
キリアもそうだが、フェイも首を傾げて骨を見つめている。スキルを持っていても特に何も浮かんだりはしないのだろうか。そう思ったカロンタンはネタばらしというのもおかしな話だが、スキルのことを話すことにした。
「キリアがね、新しく取得したスキルはね、ネクロマンシーなんだよね。骨からサーバントを作ったり、元の骨に戻したり出来るんだって。」
「…ああ、なるほど。こう、か?『クリエイト・サーバント』」
カロンタンから聞いた単語ですぐに思い浮かぶ事があったのか、キリアは兎の骨から小さなスケルトンを作り出した。兎の骨から作られているはずだが、骨格的には人間で背の高さは子供程度であった。その虚ろな眼窩には赤い光が灯っているが、肉片などはこびりついておらず臭いも全くしない。カタカタっと顎を鳴らすと、くりんっとキリアの方を振り返った。
「自分と同じ色だな!」
「急に出てきたのでびっくりしました…。あ、キリアさんの髪の色と、この子の目の色が同じですね。…なんか生々しくなくてかわいいです。」
「…オドロオドロしくないね、ちょっとびっくり。魔力は…百も減って無いか。」
「今迄魔法なんか使った事がなかったから、中々…嬉しいものだね。」
口の端に笑みを浮かべているキリアはスケルトンの頭を撫でてやると、骨に戻した。今は特に用があるわけではないし、クレインが帰って来た時にスケルトンが家に居たら驚くかもしれない、というキリアの心配りであった。
「練習した方が何体も作ったり、強いスケルトンを作れるようになるみたいだよ。」
「槍と一緒で、鍛錬が必要というわけだな!」
「…なんかいいですねえ、私も何か…。」
クレインも取得はしていないもののレジェンダリーに該当するスキルがあり、キリアもそもそも戦闘に特化しているとはいえまた新たなスキル…しかもあまり聞いた事のないスキルを身につけたことで、フェイの劣等感を刺激してしまったようであった。カロンタンは新たに何かフェイが覚えていないか、覚える可能性が出てはきていないか鑑定をしたものの、その結果は芳しくないものであった。カロンタンはあえてそれには触れずに刺激しない事にした。そもそもフェイがいるところで新しいスキルの事を話してしまったのがカロンタンの落ち度であるし、話題を逸らすのもカロンタンの仕事であろう。
「ところで、ヴァリスにアズがチョーカーを作ったって言ってたよ。雨風を軽減してくれるみたいで、かなり旅が楽になるって。」
「…そうなんですか?ヴァリスも女の子ですからね、かわいいデザインならいいんですけど。」
「ヴァリスは大きいが、可愛いよな。うむ。」
劣等感を刺激してしまったらしい、と気が付いた様子のキリアも追随して三人はヴァリスの話を暫くしたのち、部屋に籠って技工士ロボットなどの組立をしていたアズを引っ張り出すとチョーカーを受け取り、実際にヴァリスの元へと持っていくことにした。ヴァリスは朝一度起きていたものの昼近くなった今はまた寝ていたらしく、藁の上に座り込んでいた。
「ヴァリス、いいものを持ってきたよ。」
フェイがアズから受け取っていたチョーカーをヴァリスの首に巻き、カロンタンがせっせとブラッシングをしてあげるとよっぽど嬉しかったのだろう、ヴァリスは嬉しそうな鳴き声を上げながらフェイとカロンタンに顔を寄せた。可愛いもの好きのキリアも頭を撫でてやっているが、まだまだ匂いを覚えている途中、といった感じでヴァリスは手の匂いを嗅いだりしているだけの様子であった。




