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1話

相変わらず、ほのぼの日常系です。あらすじ通りにクビになるまでちょっと掛かりますけどよろしくお願いします。

ブンッ。


 ゴブリンの振り回す棍棒をバックステップで躱し、カロンタンは手にしたショートソードで襲い掛かろうと一歩踏み出した。が、躊躇った一瞬でゴブリンは立て直すと、空振りした棍棒をもう一度振り回した。攻撃どころじゃないカロンタンは慌てて木の盾でその棍棒をいなし、漸くショートソードでゴブリンを斬りつける事に成功した。



『ギギッ!』

「どうだ!」



 カロンタンが苦労して斬りつけた一撃も、致命傷にはとてもならない。せめて、足や、利き腕に当たっていれば動きが遅くなったり、棍棒での攻撃がなくなったりするのであるが、残念ながら背中を少し傷付けた程度で終わってしまっている。よし、などとカロンタンがカッコつけている間にゴブリンは下から棍棒をかちあげる。




「わわっ!」

『ギギッ!!』



 思わず盾を出し、体への直撃はさけたもののその衝撃で手が痺れてしまい、カロンタンは盾を取り落としてしまった。ゴブリンの方も思わぬ衝撃だった様子で手首を痛そうに押さえている。さすがにチャンスと思ったのか、カロンタンは今度こそ、とショートソードでゴブリンを袈裟斬りに…出来ずに、肩口まで剣を食い込ませただけに留まった。



「く、くそう、おあっ!」

『ギッ、』



 苦悶の表情を浮かべるゴブリンの体を蹴飛ばし、何とか剣を外したカロンタンは追い打ちをかけ、ようやくトドメを刺すことに成功すると、追加の敵が周りに居ない事を確認して溜め息を一つ吐いた。



「一番雑魚な相手に5年経っても苦戦するんだもんな…。」



 カロンタンは倒したゴブリンがキラキラと光って消え、その後に幾ばくかの硬貨と小瓶に入ったうっすらと赤みを帯びた液体…ポーションがあるのを確認すると、それらを回収した。



◇◇◇◇◇



 暖かい春の陽気を受け、カロンタンは開けた草原の中にある小高い丘で居眠りをし始めた。この場所は結界のようなものが張られていてゴブリンなどのモンスターが近寄れないことから、この近辺を狩場とするときにカロンタンが決まって夜営する場所である。こういった情報は時間やお金に直結する事もあって、カロンタンは偶然見つけたこの場所の事を昔一緒に組んだグループメンバーくらいにしか教えていなかったが、その教えたメンバー達はとっくにこの狩場を卒業していてこの場所を使うこともない為、この場所を使うのはカロンタンくらいのものであった。


 カロンタンは幼い頃から冒険者に憧れ、親の手伝い(農作業)がない時には同じ村の少年達と獣などを狩ったりする遊びや、棒を振り回して剣術らしき物を訓練する遊びをして育った。冒険者登録の可能となる十二歳の時、同じ村の同い年三人組で家出をし冒険者登録をして冒険者を始めたのである。

 その同い年の三人組は当初はグループを組んで一緒に獣を狩ったり、ゴブリンを狩ったりと和気藹々と細々と稼いでいたのだが、その内のカロンタンを除く二人がドンドン強くなり、ゴブリンでは物足りなくなってしまった。それまでも多少足手まといの感はあったもののカロンタンの事を二人は見捨てる事が出来ず、二年程の間はカロンタンがもっと強くなるだろうと待っていてくれたのだが、試しにとオークやオーガを狩りに行った際にカロンタンが全く対応出来なかったのに対して二人はオーガすら一蹴してしまうという結果になった事から、居たたまれなくなったカロンタンがグループから抜けることを提案したのだった。流石にいつまでも強くなれないカロンタンに痺れは切らしていたものの、小さな時からずっと仲が良かったこともあって二人もすぐには頷かなかったものの、ゴブリンだけならなんとか倒せる所を見せる事によって、一人でも何とか食っていくことだけは出来るから先に進んでくれとカロンタンは二人を説得したのであった。

 幾許かの装備やお金を余分に二人に分けてもらったカロンタンはいつかは強くなれると信じて二年間ゴブリンを地道に狩り続けたのだが、手元に残ったのはそれなりのお金と、いつまで経っても強くなれない貧弱な体だけであった。友人達は順調に腕を上げている様子で、たまに通り掛かると必ずカロンタンの元に寄っては土産話を語ってくれた。…友人達の活躍に比べ、自分の弱さっぷりには忸怩たる思いがないではなかったが、昔と変わらず関係を保ってくれようとする友人達の気持ちはとても嬉しく思うカロンタンであった。


 夢ながらこの先どうしようか、奴隷でも買って一緒に戦って貰おうか、などとウトウトしながら考えていたカロンタンの視界に、丸々と太った大きな兎が一匹映り込んだ。まだこちらを警戒しておらず、何か見つけたのだろうか蹲っている。流石にゴブリンとは違い、小型の獣であればカロンタンでも比較的楽に狩れるということもあって、カロンタンは唯一攻撃に使える魔法であるが一日にほんの数回しか使えない氷粒の魔法を兎に対して発動した。



「やったか?」



 氷粒の魔法はビー玉程の大きさの氷の粒をたった一つ作るだけの魔法であるが、利点として生成する場所を指定出来るのである。集中する必要があることと、動き回っている相手に対しては発動までの間に位置がずれてしまうなどの欠点があることから戦闘中に使うのは中々難しいのであるが、充分な時間がある場合にはかなりのアドバンテージとなる。何せ、心臓や脳をクリティカルに狙えればそれだけで倒せるのだ。ただ、あまり大きい対象にとってはそれだけで即死には至らないということもあって(無論、当たりどころがよければ時間をおけばそれだけで倒れることもあるが)、動かない小動物などへの先制攻撃くらいにしかカロンタンは使い道を見出せていなかった。無論、本来の氷を生成する、という意味では夏場にお世話になることは多々あったのだが。



「よしよし、当たりどころもいい。上手く処理をすれば、今日の飯代はこれ一匹で十分賄えるな。」



 兎一匹と侮ること無かれ。


 丁寧に処理をした皮と肉はいい値段で売れるのだ。最近では兎の血も食材として売れることをカロンタンが知ったこともあって、ポーションの空き瓶に血を入れて保存するようにもしていたのである。しかもカロンタンは『アイテムボックス』というレアスキルを所持しているために、手に入れた素材を劣化させたり腐らせたりすることもなく売りに出すことが出来ることもあって、皮職人や食材卸の商人などには重宝がられていたのである。ただ『アイテムボックス』というスキルはレアスキルではあるものの、似たような効果を持つ鞄が高価ではあるものの手に入れることが可能であるため、レアスキルとはいえどちらかといえばハズレ扱いされるのが常であった。


 既に数匹のゴブリンを狩って充分な硬貨とアイテムを得ていたことに加え、この兎を狩れたことでカロンタンは一度街へと帰ることを決めた。いくらアイテムボックスに大量に荷物を詰め込めるとはいえ、戦闘を行うことは体力を消耗することであり、しかもギリギリの戦いが多いカロンタンにとっては気力もかなり消耗することなのである。見通しの良い所を通って獣やモンスターに会わないように街まで移動すると、カロンタンはゴブリンの討伐依頼の報告にギルドへと向かったのであった。



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