表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

第6話 破滅の予感


 王城で王様がマールの安否を心配しているころ。アルマティア王国の最果て、魔の森に隣接するザハル辺境伯家では、“優雅なお茶会”が開催されていた。


 広間のテラスには、高価な茶器と菓子が整えられている。だがその場に座る二人の顔立ちが醸し出す空気は、優雅さよりも不快な傲慢さのほうが勝っていた。



「ねぇプリシラ、今日はなんて気持ちのいい日なのかしら。あの忌々(いまいま)しい小娘がいなくなってから、家の空気がだいぶ澄んだと思わない?」


 ヴァネッサ夫人が、わざとらしいため息をつきながら紅茶を啜る。


「ほんとよお母さま! だってあの子、見ているだけで鬱陶しかったもの!」


 プリシラは自分のドレスの裾をひらひらさせながら、鼻で笑った。



 そんなお茶会の空気を、突然の荒々しい足音が切り裂いた。


「ご、報告!! た、大変です奥様!!」


 駆け込んできた騎士の顔は蒼白だった。

 だがヴァネッサとプリシラは、眉をひそめて不快げに彼を睨む。


「……今はお茶の時間よ。無礼にもほどがあるわね」

「そうよ、女主人の前に出るなら礼儀を覚えなさいよ」


 しかし騎士はそれどころではなかった。震える声を無理に整え、報告を吐き出す。


「魔の森の監視塔が──蛇神ヒュドラの襲撃により、壊滅いたしました!」

「……は?」

「当主ザハル様は……現在、生死不明です!!」


 広間に凍りついた沈黙が落ちる──べきだった。本来なら、そうあるべきだった。


 だが。


「えっ……じゃあ……」


 プリシラの瞳がきらりと輝く。


「わ、私たちが正式にこの家の主に……!?」

「やったわねプリシラ!!」


 二人揃って立ち上がり、満面の笑みで手を取り合う。騎士は言葉を失い、口をぱくぱくさせるしかなかった。


(こ、こんな状況で喜ぶなど……正気なのか……?)


 その異様な光景は、むしろ滑稽ですらあった。



 彼女たちは知らない。

 いなくなった“あの子”が、今や国境を越えた大騒動の中心にいることを。


 そして、己に迫りくる破滅の影にも――。



拙作をお読みいただき、本当にありがとうございます。

皆さまからの応援が、日々筆を取る力になっています。

もしお気に召しましたら、★評価などいただけましたら嬉しく、今後の創作の励みになります。

これからも少しでも楽しんでいただける物語を紡いでいければと思っております。

心より感謝をこめて──今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ